第4話 仲直り!?

昼休み。

俺の机の前に椅子を置いて、無言で弁当を食べる春斗。

昨日のポッキーゲーム事件で怒っている。

事件って言うほどでもないけど、昨日からさっきまでずっと考えていたが、春斗が何で怒っているのか全く分からない。

そんなに俺とやりたくなかったのかなぁ。

それはそれで、かなりグサッとくるけど。

もしかして、しつこすぎたか俺!?

やりたい、やりたいしつこすぎて、春斗の怒りが爆発したのか!?

そんなわけ……。

「あるよおぉぉぉ!」

俺は、頭を抱えて叫ぶ。

シーンと静まった教室に聞こえたのは、俺の愛する人の声。

「うるさい。周りに迷惑だ」

今日、初の春斗の声。

授業中も休み時間も寝てるのか分かんないけど、顔を伏せていたからみんな気を使って郁人に話しかけるのをやめてくれたんだ。

「ごめん」

「あぁ」

「ごめん」

「…おう」

「ごめん。俺が全て悪かったんだ春斗」

「…分かったって。迷惑だからこれ以上叫ぶ…」

「本当にすまなかったあぁぁぁ!」

ゴンッ。

俺は、土下座した。

思いっきり、頭を床につけたもんだから、ヒリヒリと痛む。

「聖人」

春斗の声が聞こえた次の瞬間。

俺の頬にひんやりとした柔らかい感触のものが触れた。

顔を上げると、それは春斗の手だった。

「もういいって。俺、うるさいのは嫌いだけど、そんくらいで怒らないって」

ん…?あれ。もしかして、俺がさっき叫んでその事で謝ってると思ってんのか?

いや、そんなわけないか。

「ほら。早く椅子に座れ」

俺は、とぼとぼと椅子に座り、弁当の中の卵焼きをひと口食べて、春斗を見た。

「何見てんだよ」

春斗は、あからさまに嫌な顔をする。

「昨日は、ごめん。それで、さっき謝ったんだ…」

まぁ、分かってるよな。そのくらい。

って思っていたが、

「あー!その事だったのか。だから、土下座までして、わざわざダサい自分をみんなに見せつけてたのか!」

春斗は、大げさに自分の手をポンッと叩いた。

「そんな言い方ないだろぉぉ!」

「ふ」

え…。今、笑った?一瞬でそんな分かんなかったけど、確かに春斗が笑った。

って事は怒ってない?

これって怒ってないよな!?

笑うほどだもんな!!

許してくてたんだな!!!

「許してくれて、サンキューな!」

やった!また、いつも通り春斗と喋れる!

俺は、喜びが顔にでてしまうくらい嬉しくて仕方なかったが…。

「…は?」

いきなり、春斗の表情が変わった。

「昨日のことに関しては、許すなんてひと言も言ってねぇぞ?」

ガーン。

こいつは、悪魔だぁぁぁぁぁぁ!

「てかさ、謝ってくれたのはいいけど、何で俺が怒ってたか分かってんの?」

「うん…。俺がポッキーゲームやろうってしつこかったから…」

「ちげーわ!」

「じゃあ、俺とやるのが嫌すぎて…」

「それも、違う!」

「はぁ」

春斗は、呆れたかのようにため息をつく。

「俺が怒ったからそうなったんだと思うけど、変な考えてして抱え込むな。お前はいつもそうだろ。変な捉え方して、1人で悩んで。それに…お前の事嫌いだったら今こうして話してない」

相変わらず無表情だ。

郁人の何言っても無表情な顔を見ると、いじめたくなる。

「じゃあ、俺の事好き?」

俺は、わざと甘えた声を出す。

そっと上目遣いで春斗を見ると…。

俺は、驚いた。

ついさっきまで無表情だったのに、白い春斗の顔は、薄ピンクからだんだん赤くなっていった。

「ねぇ、好きなの?ちゃんと聞きたい」

春斗は、黙った。

「ねぇ、春斗」

「…。トイレ!」

そう言って、赤くなった顔を手で覆うようにして教室を出ていった。

「あーあ。逃げやがったな」

でも、そう言う春斗も可愛いな。

俺は、弁当の続きを食べた。

少し経って。

ガラッ。

教室のドアが開き、春斗が戻って来たと思ったら、ものすごい勢いで机を挟んで俺の前に立ち、机の上に手をおいた。

「ど、どうしたの!?」

俺は、首を傾げる。

謎の沈黙。

どうすればいいんだ。

てか、何この沈黙!?

俺は、ちらっと春斗を見た。

すると、何故だか春斗は深呼吸をした。

「春…」

俺が喋り始めたと同時に春斗は言った。

「好きだ」

…。

「…え?」

「俺は、お前の事が好きだ」

そう言って、さっきの真っ赤な顔はどこにいったのか。

「あー、もう。弁当食べる時間、後少ししかねぇじゃん。ほら、早く聖人も食えよ」

そして、また無表情に戻り弁当を食べる。

その時、俺の頭の中は真っ白で。

春斗が自分から俺に好きって言った!?

それって、多分初じゃないか!?

え、夢?なわけないか。

じゃあ…現実…だよな…。

………。

「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

やっぱり、春斗はいじめるもんじゃなかった。

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