第2話 暗闇を照らす光

俺が初めて春斗と出会ったのは、俺たちがまだ中学生の時だった。

今とはだいぶ別人で無口だった俺は、3年の不良グループに目をつけられ、パシられたり、理由もなく殴られたり、毎日生きるのが苦しくて俺は死を決断した。


放課後。

俺は屋上に行く階段を上り、ふらふらと屋上の淵に立つ。

俺は死を覚悟した。

覚悟したが…。

屋上から飛び降りようと、全体重を前にかけようとした時、屋上のドアが開く音がした。振り向くとそこにいたのは、不良グループだった。不良たちは、ニヤニヤと俺を見た。

そして、俺はまたいつものようにボコられた。

不良グループの中の1人が、俺の腹を蹴りながら、言った。

「逃げるような弱いお前が死ねるわけねーだろ」

そう言われて、俺は涙を流した。

不良たちが来なかったら、俺は本当に死ねてた?

死んでどうなるんだろう?

死んだって、良いことも何もないのに…。

俺は、血と涙を流しながら、必死で耐えた。

「やめろ」も何も言えず、ただただ痛さに耐えたんだ。そして不良たちは、

「お前は、我慢のプロだな」

と言い、屋上を出ていった。

しばらく、体が動かなくて仰向けになったままだった。

やっと手を動かせるようになった俺は、ポケットからカミソリの刃を出し、仰向けのまま自分の手首を切った。ぽたぽたと、手首から顔に血が落ちる。それでも、切り続けた。

カミソリをそこら辺に捨て、ジンジンと痛む腕をコンクリートの上に投げつけた。

ぼーっと、薄暗い空を見てると、ドアが開く音がして、俺は横目でドアを見た。

そこには、春斗が立っていた。

それが、俺が初めて春斗を見た時だった。

春斗は、何も言わず俺の横に座ると、俺の血塗れの腕を持ち、自分が着てるカーディガンの袖で血を拭き取った。

「…袖、汚れる」

そう言って、腕を自分の方に引いたが、春斗は無言のまま拭き続けた。だけど、拭いても拭いても、血は出続けた。

すると突然、春斗は自分の唇を俺の腕に近づけ、ぺろっと舐めた。

「何すんだよ!?」

俺は、力づくで腕を払い、上半身を起こした。そして、パニック状態になっている俺の唇に、春斗はキスをした。

「!?」

俺は、まばたきするのを忘れ、目まん丸く開いていた。すると、春斗は口を開いた。


「お前は、綺麗だ」


なぜだか分からないけど、俺は泣いた。

ガキのように、ギャンギャンなく俺を春斗はぎゅっと抱きしめた。

ずっと、ずっと。

夕日が消えるまで、俺らは抱き合っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る