第9話惨劇のアルテミア

俺はルイが半魔族という事実を突きつけられたが、それが何を意味するかはさっぱり分からなかった。


「半魔族だから何か関係あるのか?」


「あるわよ・・・。半魔族の人間は魔力が全くと言ってない代償として驚異的な身体能力を持ち合わせている。」


「何が奴隷として差別されるまで卑しまれているんだ?」


「そう、それが肝なの・・・。℉ランクの人間は激しい感情の変動により理性が保てなくなり、魔獣化する・・・。」


「つまり、化け物になるのか?じゃあ、なぜこのような人種が生まれた?」


俺は、これが一番の疑問であった。ここまで卑しまれる存在であり、外見は人間とほぼ変わらない。どこにも違いはあるまい。


「そこが、分からない・・・。私も調べてみたんだけど、情報が制限されていて、分からないのが実情よ・・・。ここで私が言いたかったのは、自分たちの身の危険を脅かすあの子をこのまま連れていくのかってこと。この国なら、差別もなく保護できる。」


俺は、助けた理由が妹に似ているからという安直な理由であった。しかし、今思い返すと、ルイはこの世界を知らなさすぎる。籠の中の鳥だ・・・。いくら、この国があいつらを保護しようとも、戦闘に使うただのコマだっていう可能性もある。だから、俺はルイはほおっておけなかった。

厄介ごとには首を挟みたくない俺だが、自分が守り通すと決めたものは守り通す。それだけは変えたくない。


「お前の提案も一理ある。」


「じゃあ、それなら。」


「俺はルイを連れていくつもりだ。異論があれば俺はお前と組むのをやめる。宿代はお金が集まり次第返す。

それを、聞くとなぜか少し笑みを浮かべていた。そして、俺の目を見つめ口を開いた。


「実をいうと、少し試してたの。ルイちゃんの秘密を知って、自分を優先して考えるあなたは、見捨てるか見捨てないか・・・。」


俺はこれを聞いて、くだらないと思いながら、目を外にやった。


「じゃあ、大丈夫だわ。戻りましょう、アルテミアに・・・。」


「おう」


俺は気のない返事をし、お金を払い外へ出た。この国の国民は絶対何か抱えている。俺は、雰囲気の悪さからそう感じていたが、やはり国民の目も死んでいた。

俺には関係ないってことにはならなさそうだな。


俺たちは世話をして貰っていた警備兵から、ルイを引き取り飛行船の出発時間まで街を散策した。


「龍真さんっていつも何か考え事してるよね。」


いきなりルイに言われて戸惑ったが、俺は「そうか」と愛想笑いを浮かべ流した。

子供は良く人を見てる、俺はそう感じた。

そして、話を変えるべく、俺はエルゼに思いついたように質問した。


「魔導士は武器で戦わないのか?」


「もちろん戦うわよ。」


「でも、お前武器持ってないよな。」


「ああ、そんなの魔法で武器出して戦ってるの。無属性魔法 創成でね。

でも、この魔法巨大なものとか作れないからね。」


俺は試しに手に魔力を集中させ、作りたい剣を想像し、


「無属性魔法 創成」


と唱えた。その時、俺の手元には黒く光り輝く剣が現れた。


「あなたのその才能ほんとすごいわね。」


エルゼに半笑いされ、俺は手元にある、黒い剣を振った。振った瞬間空を切る音が鳴り響き、これは本物であるということを実感した。

この時俺は思わなかった。剣というもののあるべき姿を・・・。


俺たち一行は、飛行船に乗り、公国アルテミアに向かった。帰りの空は天気が悪く、雷も鳴り響いていた。ルイはそんなのお構いなしに寝息を立てていた。


そして、二時間程たち俺はアルテミアの地に降り立った。しかし、雰囲気がまるで違った。異様な寒気を覚える雰囲気、住民が見当たらないのも不自然だ。そして、俺たちは、大通りまで出ることにした。


そこには惨劇が広がっていた。魔族が人間を襲い、食らっているのである。地面には血や肉片が広がっていた。

俺はその光景を見て、嘔吐した。


「嘘だろ・・・。」


「なんで・・・?」


エルゼは困惑しきっていた。俺らの存在に気づくように、魔獣や、ゴブリンのような巨漢、へびのようなものが迫ってきた。


俺はこの現実を直視できず、目をそらした。


「目をそらさないで!死ぬわよ!」


さっきまで茫然としていたエルゼが急に俺に一括し俺は目の前の現実を少しづつの見込み、俺は深呼吸をした。


「魔導士なりたてのあなたにはきついかもしれないけど、任せたわよ。」


俺らを挟み込むかのように、大通りの真ん中にいる俺らを魔物が追い詰めた。


「なんだよ、この世界・・・」


俺はそう愚痴をこぼし、黒い剣を手に持った。

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