第10話魔導士の策略

大通りの両側からは、魔獣の大群が攻めてきた。俺とエルゼとルイは四面楚歌であった。この状況ではルイも戦うざるを得ない、それが気がかりであった。いくら戦闘力が高いと言っても、子供であることは間違いない。


「ルイ、戦えるか?」


俺がそう問うと、少し考える素振りを見せ、口を開いた。


「分からないけど、やってみます。」


すると、ルイの目は青く光、目つきが変わった。そして体にも変化が見られた。急に爪は長く伸び、鋭くなった。殺気丸出しの、先ほどのルイからは考えられない変貌に俺は身震いした。


「これが、ルイの力・・・。」


エルゼは俺たちの顔を見て、


「行くわよ!」


と合図を送った。エルゼは右側から襲ってくる魔獣の討伐、俺とルイは左担当であった。ルイは分け目も振らず魔獣の群れに突っ込んだ。ルイは目で追えないほど速く、次々と敵を蹴りや、長い爪で切り刻み、倒していった。


魔獣を倒しているルイは無表情で、れいてつな目をしていた。


「よく、あんな戦えるな。俺は足がすくんで動かねーのによ。」


エルゼは魔法で一気に敵を薙ぎ払う。俺だけ足手まといじゃねーか。俺は半笑いを浮かべ、その場を見ていた。そして、息を落ち着かせ、魔獣に向かって走り出した。


俺は、目をつぶりこの一帯の魔力の数を確認した。


「ざっと、二百か・・・。めんどくさいな。」


俺は、空中に巨大な魔方陣を作り出し、魔法のイメージを頭で思い浮かべた。


「闇属性魔法 極黒の矢」


魔獣の頭上からは無数の黒い矢が降り注いだ。魔獣は無残に貫かれ、その場にひれ伏した。魔獣は一匹残らず息絶えた。

ルイの姿はもとに戻り、いつものルイに戻った。ルイは、自分についた返り血を丁寧にふき取っていた。


ちょうど俺らが倒し終わるころに、エルゼは魔獣を倒し終わっていた。


「終わったか…。」


俺は、そう呟きホッとすると、エルザに叩かれた。


「そういう、変なフラグ立てることを言わないで。」


俺はすまんすまん、と言って頭を下げ、周りを見渡した。しかし、敵が現れることはなかった。


「これからどうするんだ?」


「もちろん王宮に行くわ。でも、二手に別れましょう。私とルイ、あなたでね。」


「ちょっと待て、俺が1人かよ。それはないだろ!

魔道士成り立て、例えると生まれたての子鹿が、猛獣がたくさんいる大草原に放たれるのと同じだぞ。」


「それは面白い表現ね。」


「俺の話を聞いてるのか?」


俺は流石に無責任な言い方をするエルゼがどうも気に食わなかった。


「俺がどう行動しても、文句は言うなよ。」


俺はそう言って、エルゼ達の元から離れた。

しかし、エルゼは動揺する様子もなく、俺を眺めて居た。


「なにを考えてやがる?」


俺はエルゼの奇怪な行動の真意を読み取ろうとしたが、全く分からなかった。

エルゼ達と離れたものは良いものの、何をするか迷って居た。

この国にもう平穏は無い。かと言って、どこかの国に逃げようとしても、飛行船は今無い。


結局戦えってことかよ…。それではエルゼの思惑通りの感じがして、どうも気に食わなかった。


俺はそこで、ケールの元へ行くことにした。あそこなら、まだ魔獣に見つかって無いだろ。


俺は、スレイブの足取りを思い出し、暗い小道を抜け、ツルで覆われている酒場へとついた。


「ごめん下さ〜い」


俺はそう言い、ドアを開けた。そこには、恐れきっている住民が大勢いた。


「お、お前は何だ?」


「魔道士の者だ。」


「俺たちを襲いにきたのか!」


住民にそう言われ、酒瓶や皿など多くのものを投げつけられた。


そこである1人の人間が大声をあげた、


「お前ら!やめな!ここは私の店だぞ。」


その声は、懐かしいケールの声だった。俺と目が合うと、頷いたようにこっちを見た。

周りの住民達の目は殺気だっていた。しかし、国民を守るためにいる魔道士がなぜ住民から嫌われているのか訳が分からなかった。


「あら、もう会うことは無いと思っていたけれど、久しぶりだわね。龍真ちゃん。」


「お久しぶりですね。」


「あの、女の子2人は?」


「生憎、ハブられました。まあ、ボッチの俺ですから、そんなことには慣れてますよ。」


「まあ、哀れね。」


前のケールとは別人であった。これが人の本質なのか。俺は不可解でたまらなかった。しかし、俺は強気の姿勢を崩さなかった。


「魔道士になったのね。ここに何のよう?私達を殺しに来たの?」


「いえ、そんなつもりは。逆です、救いに来ました。哀れなヒーローが。」


俺はケールに皮肉を交えながらそう言った。

ケールは少し考え込み、口を開いた。


「あんた達一旦この子を信じましょ!」


「でも、あいつが良い奴だと証明出来たわけではありません。」


「じゃあ、あいつが悪であったらここにいる私たちは皆殺しよ。なんてたって、あの子はSランク魔道士なのだから。」


そうケールは言うと、周りの住民は怯え始め、口を閉じた。俺は嫌われるのは慣れっこだが、こう怯えられると応えるものがあった。


「じゃあ、要件は何?」


「この国の魔道士がしたことを教えてくれ。」


「分かったわ。手短に話しましょう。この場所がいつバレてもおかしく無いのだから。」


「その時は守りましょう。」


「期待してるわ。」


ケールはそう言い、ゆっくりと椅子に腰をかけた。


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