第2話階級制度

俺はスレイブに連れられるまま、人通りの多い街中を抜け、薄暗い路地へと入っていった。


「おい、スレイブどこに行くんだ?俺からカツアゲしようとしても生憎一銭も出てこねーぞ。」


「それは困ったなあ」


「図星か?」


「そんなわけねーだろ。いい店を教えてやる。黙ってついてこい。」


そう言ってスレイブはひたすらに歩みを進めた。そして、どんどん建物の陰で暗くなっていき、スレイブは立ちどまった。その建物は、ツルのようなもので覆われ薄気味悪かったが、携帯を持っていたらインスタ映えする光景であった。


「ここは?」


「ケールの酒場だ!知る人ぞ知る隠れ家だ。」


そういって、スレイブはその酒場のドアを開けたのであった。


「おいケール!ビール一つとジュース適当に頼む。」


入って早々、我が家の家のようにスレイブはふるまいだした。東京にこんな人はめったに見たことがない。自由だ…。俺はそう思いながらゆっくりと店内へと入っていった。


「またスレイブかい?昼間っから酒なんて飲んじゃって。そこの黒髪のかわいらし子は?」


ケールは黄色い髪で、エプロンを身に着け、小太りであるがとても優しそうな元気なおばちゃんであった。

店内は木で作られていてとても温かみのある内装であった。そして、カウンターがあり、奥には様々なお酒が並べられていた。店内には他にテーブル席もありそこには何人か人々が腰を掛けていた。


「こいつ、珍し顔してるだろ!たまたま空港で会ったんだ。龍真っていうんだ、記憶がないらしく、一銭もない、おまけに腹が減っているわけだ。」


「そうなの、りゅーまちゃんでいいかしら?」


「お構いなく。」


俺は、子の人がいい人であるのは間違いないのだが、ぐいぐい来るところが苦手であった。


「家は分かるの?」


俺はこの質問に困った。ないと言ったらこれまでどんなふうに暮らしてきたのか疑われる。でも、見栄を張ったところで、よくよく困るだけなのは間違いない。


「家分からないです。」


と俺は不自然な笑みを浮かべた。


「あら、そうなのね。家が決まるまで私の家にいても良いわよ」


と言われた。本当に人が良すぎるだろこの人・・・。俺は東京での常識を覆された。まずこんなことを言っても、みんな信じないだろ!


「そういうわけにも・・・」


「私の家が嫌なの?」


「そういうわけではないですけど。初対面なので・・・。」


そういうとケールは満面の笑みを浮かべ、


「ほんと礼儀正しいわ!息子にしたいくらい。」


と喜んだ。俺はこの人には勝てそうにないことを悟った。

そして腹をくくった。


「お願いします・・・。」


「決定ね!おなかすいているんだっけ?料理作ったらお部屋のお掃除をしなくちゃ!」


と張り切っていた。嵐のような人だと俺は感じた。ケールに俺は圧倒されすぎてスレイブのことをすっかり忘れていた。

スレイブは俺のことを面白そうに見ていた。


「何か?」


「いやなんでもねーぞ。」


スレイブはクスクスと笑っていった。気に食わん、実に気に食わん。俺が突如不機嫌な顔をすると、


「ごめんな、龍真」


スレイブはそういったが俺は無視をした。

そして、俺とスレイブは席に着いた。座ってまもなくスレイブは口を開いた。


「ところで、お前魔力ランクは何だ?分かるか?」


俺はあのくそ天使が魔力ランクSにしておくねとか言っていたので思いだした。


「Sだ・・・。」


そういった瞬間スレイブは飛び跳ねた。

俺の言葉を聞き、ただ茫然としていた。俺はスレイブの目の前で手を上下してみたが、スレイブは固まっていた。


「おま、嘘だろ・・・。Sなんか言ったらこの浮遊島にいる8人の魔女と同等のレベルだぞ。」


「おお、なんかすごいな!」


俺は、ここで初めて、あの天使に感謝をした。俺の異世界安息ライフが実現する!!?


俺は胸を弾ませ話を聞いていた。


「ランクはF~SSまであってな、SSは聞いたことはないことを考えると、お前ほんとやべーぞ。」


スレイブは異常に興奮していた。

俺もその話はここぞとばかり珍しく聞いていた。


「その制度について詳しく教えてくれねーか。」


「もちろんいいぞ。まあこの世界はランクで職業が違う。SSはのぞくとして。


S 魔導士 国王護衛部隊 特殊部隊幹部 魔帝

A 魔導士 治安維持部隊

B 魔導士 地上調査隊

Ç 魔導士下っ端 サービス業

Ⅾ 二次産業

E 一次産業

F 奴隷だ

そんな感じにランクに応じてついていい職業や役割が決まっている。」


「奴隷がいるのか?」


「ああ」


俺は、この世界の光と影が見えた気がした。

そして、そんな話をしているとケールが食べ物を運んできたのであった。


「りゅうまちゃん、腕によりをかけて作ったわ。」


そういってとんでもない量の飯が運ばれてきた。おい、こんなに食えるかと俺は身震いした。メニューはパエリヤのようなご飯に、赤いトマトスープみたいな汁物、ステーキ、野菜炒めに、デザートであった。


「ケール、こいつランクSらしいぞ。」


「噓―――――!」


ケールはとんでもない声をあげた。そして、ケールは俺の顔を真剣に見て、


「そのことをあまり他言しないこと。今は知られたら厄介だからね。隠して生活するの。今はね・・・。」


と言った。俺は理由は何か分からなかったが、この世界を知る人の意見を尊重し、守ることにした。


まだ分からないことは多いが、寝る場所を得られたのは非常に大きかった。

そして、食事を口いっぱいに頬張った。

非常においしかった・・・。


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