ミノタウロス降臨
「神話の化け物だか知らねぇが。斬っちまえば同じことだ……手早く片付けさせて貰うぜ!」
ミノタウロスに対して魔力の光弾を撃ちつける。人間が食らえば一堪りもない魔力の込められた強力な攻撃。
しかしミノタウロスは攻撃の気配を敏感に感じとると放った攻撃を巨大な盾によって防いでしまう。
「デカイ図体の癖に良く動きやがる。こりゃ予想以上に時間が掛かりそうだ」
他の兵たちが勝てなかったのも分かる。コイツらの身体能力は人間どころか魔族の中でもトップクラスだ。
こんなのとまともに戦うには熟練された技量や魔力、身体能力が必要になってくる。
「くっ……しかし予想以上だ。今しがた腹部に槍を刺したんだが、コイツら痛がる様子をまるで見せやしない。死体の身体を使っているせいで痛みを感じないんだろうね」
ミノタウロスの動きは素早く力強い。しかしそれでも俺たち悪魔族と比較すると身体能力という点では遥かに劣る。
それでも苦戦を強いられているのは死体ゆえの無尽蔵な体力と傷を受けたとしてもビクともしない点だろう。
特にさっきからアスモデウスは色んなところに槍を刺しているが敵にダメージを与えているとは思えない。
それはアイナも同様、彼女も先程から攻撃を避けては攻撃を仕掛けているのだが、まったく効いた様子はなかった。
「このままじゃ体力を無駄に消耗するだけだ。こう何か弱点とかはねぇのか?」
「そうだね……。確かに彼らの姿形こそミノタウロスではあるが所詮はそれを真似た只の死体の組み合わせに過ぎない。となればその死体を動かしている動力源のようなものがあるはずだ。それさえ破壊すれば恐らくはーー」
なるほどだからさっきから色んな箇所に槍で攻撃していたというわけか。
「……それでその動力源ってのは何処にある?」
「それが分かれば苦労はしない……が、恐らくは人間と同じ心臓部分にあると見ていいだろうね。先程からずっと心臓を狙っては居たんだがそこになると防御が固くなる」
「なるほどな。弱点さえ分かれば後はこっちのもんだ。アイナも聞いていたな?」
「はい! 心臓……胸の辺りですね」
「ま、待ってくれ。まだ確証は……」
「確証なんざ心臓を破壊してから確かめりゃ良いんだよ。俺はアスモデウスを信頼してるからな。ってことで一気に決めさせてもらう!」
このミノタウロスを動かしている動力源ーー心臓を狙いを絞り刀を構える。
アスモデウスの言うとおりならミノタウロスは心臓を狙おうとしても防御をして返されてしまうらしい……それなら。
「うおぉぉぉおおぉおッ!」
俺は勢いよく刀を振るう。ミノタウロスは心臓を狙うものだと思い盾を使って攻撃を防ごうとするがーーそれこそが俺の狙いだった。
「グアァァアアァァアッ」
響き渡るはミノタウロスの怒号。刀はミノタウロス心臓ではなくその巨大な腕を斬り落としていた。
普通は腕一本取られれば少しは痛がったり怯んだりするものだがミノタウロスは只、怒り狂い片方の手で斧を振り回すだけだ。
とはいえ、これでミノタウロスを守る盾がなくなった。後は急所を狙うだけ!
デタラメに振り回す斧など避けることは容易い。俺は敵の攻撃を避け懐へと忍び寄る。
もはやそこは必殺の間合い。俺は渾身の力を振り絞りミノタウロスの胸に刃を通した。
「グォォオォォォオオォォオオッ!!」
巨大な雄叫びを上げてミノタウロスはまるで糸の切れた人形のようにバタリとその場で倒れる。
アスモデウスの推測通り、相手の動力源となる核は心臓の位置にあったのだ。
「さて私もルーシーのやり方を真似てみるか」
アスモデウスもミノタウロスの攻撃を避けて足元に槍を貫く。いくら痛みを感じなくとも足を怪我すればその体重を支えることは難しい。
貫かれた右足からバランスを崩したように倒れるミノタウロス。
それでも両手を使って身体を守ろうとしているが、こうなった以上決着はついたも同然。
白髪の悪魔はミノタウロスの攻撃を軽く避けると槍を使って心臓を穿った。
「さて……後はアイナの番か」
アイナも弱点は既に分かっている。しかし俺と同じように腕を斬ろうにも足を狙おうにも相手の身体能力の方が上なのか上手いこと防がれてしまう。
ここはやっぱり俺が戦うべきか、そう思い剣を握ったその瞬間だった。
「私だって!」
ミノタウロスの攻撃がかする。ミノタウロスの力強い攻撃は例え少し当たっただけでもかなりの痛みがあるはず。
しかしそれでもなお、彼女は怯むことなくミノタウロスに挑み……そしてーー
「グォォオォォォオオッ!」
ミノタウロスの胸に刃が突き刺さる。身体能力では大きく劣るものの、彼女の勝ちたいという気持ちが勝機を生み出したのだ。
「驚いた……なかなかやるじゃねえか」
アスモデウスの言う通りアイナは大きく成長している。それをこの戦いを通して実感するのだった。
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