第3話


 冷たい空気。周りはとても静かだ。

 唯一聞こえるのは鳥の鳴き声。

 目が開き周りを見ると辺りは木だらけ。

 多分ここは森の中なのだろう。

「これは転生に成功したのか?」

 俺は疑問を抱いていた。

 普通異世界に転生するとなれば勇者として召喚されたり、王国の宮殿内で召喚されたりするものだが。

 実はして別の場所に召喚されたとか。

 違うか。

 俺は召喚に成功したと思い込んだ。

「とりあえず森から抜けなきゃな」

 俺は森を抜けるべく真っ直ぐ歩き始めた。


 一方その頃の王都では......

 宮殿内で行われた勇者召喚が失敗してざわついていた。

「王様やはり強力な魔法陣が必要だったのでは?」

「そうかもしれんな」

 王様はとても険しい顔つきでいった。

 周りからは「失敗かー」とか「どーするんだよ」とかの非難の声ばかりが行き交っていた。

 王様はしばしの沈黙の後に......

「皆。もう1回やるぞよ。次の召喚は2時間後じゃ」

 王様は大きな声で宣言したのだった。

 みんなの顔つきは不安になっていた。


 俺こと樋崎慎ひいざきしんはあれから一時間近く歩いていた。

「ちっ、どんだけ歩けばいいんだよ。ニート状態のオタクにとってはたまったもんじゃない」

 慎は運動が全く出来ない。

 だが慎は不思議な事に気がついた。

 ニート状態でオタクの慎だが1時間ぶっ続けで歩いてものだった。

 俺は気にした様子もなく歩き始めた。


「あー全然出口が見えねーよ」

 俺はため息をつきながら言った。

 あれから30分経っても一向につく気配がなく慎は気に寄りかかり座っていた。

 今日を1日と言うべきかはわからないが疲れが溜まっていた。

 体の方ではなく精神のほうがだ。

 俺はついうとうとしてしまいそのままねむってしまった。


「......のー、......あのー」

(ん?何か聞こえる?誰の声だろう)

 うっすらと目を覚ますと俺の目の前には髪はとても長く色は金髪でとても可愛らしい女性がいた。

「ん......へぇ?!え?」

 眠気が覚め思考がしっかりしてくると俺はとても驚いた。

「あの大丈夫ですか?」

 彼女は心配した様子で優しかけてきた。

「あ、はい。大丈夫です」

「そーなんですか?でもなんでこんなところで寝てたんです?」

「いやちょっと精神的に疲れてしまって」

「そーなんですか。でもこの森に人は滅多に入らないですが珍しいですね」

「そーだったんですか」

 俺はオーシンと交わした約束を守るため適当な返事を返した。

 嘘混じりの事情を話し彼女について行くことになった。

 彼女の家はこの森の中にあるらしい。

 彼女後ろについて歩いていく。

 彼女の歩く姿はまるで女神でも見てるが如く癒されそして惹きつけられた。


 しばらく歩くと前に見えるのは木材でできた家だった。

 煙突があり煙が出ている。

「ここが私の家。一人で住んでるの」

 彼女は一人で住んでいることが恥ずかしかったのか頬を赤く染めていた。

「まぁとりあえず入って」

「あぁ」

 中に入ると外の見た目とは裏腹にとても広かった。

「おー!すげー広い!部屋もめっちゃある!」

 俺は子供みたいにはしゃいでいた。

「はい。この家は魔法によって見た目は小さいですけど中とても広いんですよ!」

 魔法か。日本では絶対に聞かない単語だ。

 この世界には魔法というものが存在するらしい。

「あの俺遠くの村から出てきたばっかでその村には魔法をあんまり使っていなかったもので」

「そーなんですか?!」

「はい。だから魔法の事はあんまり知らなくて。魔法も使えないし」

「なら私でよければ教えましょうか?」

「いいんですか?」

「はい!私でよければ!」

 俺は彼女に魔法を教えてもらうことになった。

「あ、そういえばまだ名前を名乗ってませんでしたね」

「あ、そういえばそうでしたね私も名乗ってませんでした」

「俺は樋崎慎」

「私はシリア・シャルロット」

「よろしくな」

「よろしくね」

 こうして俺は異世界に転生されて初めて人と出会った。

 そして俺は自分がどれだけ魔法が適正か、強いかを知る。

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