第7話こうきたか

 次の日、国語教室に原稿を持って訪れたが藤原はいない。同期と聞く、カステラを持って行けば赤点をなかったことにしてくれるという、カステラ好きのカステラ先生しかいない。

(先生はまだあそこで踊っているのかもしれない……)

 机の上に原稿を置いていく美弥子。



 彼女の「服装倒錯者」は「女性にフラれ、それでも彼女の気持ちを理解したい、彼女と同化したいと望んで、無意識にスカートを身につけ深夜徘徊していた。赤いタータンチェックのスカートは出会ったときに彼女が着ていたものだ。最後彼と彼女は……」



「こう来たか」

 冷える廊下で身を縮め、足踏みしながら藤原の言葉を待つ。

「ああ、入れよ。風が入ってくるだろ」

「どうでしたか、先生」

 藤原はとん、と原稿で机をたたいた。

「ああ、洗練された分、最初のインパクトはないが深い。スカートを抱いて恍惚にひたるのは良い描写だ」

「ラストが安易ではありませんでしたか?」

「よかったよ」

 藤原の一言に破顔する美弥子。

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