プロローグ2 色を繰る

 音に色があるのだと気付いたのはいつだろうか。はっきりとはわからない。いつの間にか、世界が彩り豊かに見えていた。


 一つ一つの音が持つ色はそれぞれ違う。指紋に同じものが一つもないように、全く同じ色はこの世界に存在しない。色にも個性がある。


 だから私はたくさんの色を其処彼処そこかしこから引っ張り出して並べたり混ぜたりするのに夢中になった。自分の中で納得のいく色合いになった時には、いつの間にか綺麗な一枚の絵が出来上がっていた。


 音楽とは、音を紡ぐものだと親に小さい頃教わった。でも、私の中で音楽は色を繰るものだ。そうすれば自然と私の音楽が出来上がっていく。それから得られる快感をきっと私以外の人は味わうことはできないだろう。


 これは、私だけの大切な宝物だ。


 だけど何か足りない。その何かとは、美しさなのか、面白さなのか、はたまた麗しさなのか。

 私にははっきりとわからない。


 でもあえて例えるとするなら、それは白色なのかもしれない。


 「無」という意味での白ではなく、「汚れのない」という意味での白。それがあれば私の描く絵はさらに輝きを増すだろう。


 あまりにも表現がモヤモヤとしているけれど、それだけは確信している。


 そういえば、今までいくつもの色を選んできたけれど、白色は使ったことがなかった。だがそれは私が持っているパレットの上に白色がなかったからだろう。私はそれをまだ手に入れることができていないのだ。


 だったら私のやるべきことは決まっている。その白を私のものにしてしまえばいいのだ。


 そしてその白にも世界があるのなら、そこで紡がれる音たちはさぞ繊細で流麗なのだろう。


 弦という筆とヴァイオリンというパレットを持つ私の手は、今日も止まることを知らない。

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たとえその白にも世界があるのなら 古田翔舞 @orito1530

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