たとえその白にも世界があるのなら

古田翔舞

プロローグ1 ヒーロー

 子供の頃から僕はヒーローに憧れていた。


 みんなの味方で、優しくて。世界を滅ぼそうと現れる悪魔をカッコ良くやっつけて。

 そんな尊敬の眼差しを受ける存在になりたいと本気で思っていた。


 父親は努力すれば何にだってなれると良く言い聞かせてくれていた。だから自分も正義の味方に、あの画面の中に出てくるヒーローになれるんだと信じていた。


 でも、現実には世界を救ってくれるヒーローなんて存在しなかった。それと同時に、自分自身も正義の味方になんかにはなれないと思い知らされた。

 なんて世界はちっぽけでつまらないんだろうと、子供ながらに失望した。


 そのことを父親に話すと、小さい子供の小さくて可愛いお話だと片付けてしまうのではなく、真剣な眼差しで僕のことを褒めてくれた。


 そして、お前はもう立派な父さんのヒーローだよと抱きしめながら言ってくれた。


 それだけで僕は全てがどうでもよくなった。今までこんなにヒーローだの正義の味方だのと考えてきたのが馬鹿らしく思えた。


 だって、もう既にヒーローは目の前に存在していたのだから。しかも二人も。


 父親と、そして自分自身と。

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