帰京編9話 安田新所長のとの話

 翌日、安田新所長が辛そうな顔をして出社してきた。不機嫌そうで事務の

女性に、お茶と横柄な言い方をした。そして来週の土曜日に係長以上の幹部会を開くと突然言い出した。あまりに突然で、皆驚いた。テーマは何ですかと佐藤係長が聞くと、それを今泉所長と北島課長と今日中に決めると言うのだ。

 北島は安田新所長の強引さには、あっけにとられた。

 十時からテーマの検討会をするから営業マンは早めに営業活動に出るようにと

言った。そして運営会議が始まり安田新所長が司会を決めようというので,

それを聞いて、お二人しか情報を持ってないのだから北島が司会をすると言った。

 安田新所長がお願いできますかと言うので了解した。まず営業所の現在の問題点を書き出して、それぞれの課題に対しての対策を決めると言う事にしたいと思いますが良いですかと北島が言ったところ、今泉所長が、それしかないでしょうと言った。

 今泉所長の考える問題点を言ってもらい、それを書き出す様にした。

 現在三係制であるが、役割分担が曖昧である事、指導体制が生きていない事。

 新人同行が少なすぎて指導が弱い事。係長としての方針ができてない事。

 営業マンの学術知識不足。営業の仕方の指導ができてない事。安田新所長が、

そりゃあかんわと言うのだった。

 これには北島は笑いそうななるので、じっとこらえるのに苦労した。

 問題点が出たところで、改善策を出して下さいと北島が言うと、今泉所長が、

これについては地方で活躍された北島さんに、伺いたいと言い出したのだった。

 それに対して北島が営業マンと同行もまだしてないので何も言えませんと答えた。

 まー確かにねと今泉が困った様に言った。それに対して安田新所長が勉強会の

時間を今の二倍にして勉強したら、いいんとちゃうと言った。

 また方針が曖昧なら係長にしっかりせいとハッパをかけて方針を出させたら

いいんじゃないですかと言うのだった。これには今泉所長が今までもやってきたが

この二~三年、中堅ベテランの移動が多くて確実に戦力が落ちてます。笛吹けども

踊らずなんですよと言った。それに対して安田新所長が、それならスーパー営業マン

の北島課長に全員と同行訪問してもらったらどうでっしゃろと言った。

 あまり無茶言うので北島が忍者の分身の術でもしろというのですかと笑いながら

言った。今泉所長が冗談ごとでなくて本当に良い方法を考えて下さいと厳しい口調で

言った。次に安田新所長が今泉所長こそ今迄の事を一番知ってるのだから名案を出して下さいという始末だった。これに対して今泉所長が安田新所長こそ、これから横浜営業所を運営していくのだから妙案を考えてと水掛け論になってしまった。

 安田所長が幾多の困難を乗り越えた北島課長にむしろ実戦的な案を聞きたいと

言ってきた。とにかく同行したら意見も出るかも知れないが、今日、初めてであり

無責任なことは言いたくないと強く言った。これには皆、沈黙した。

 今泉所長が安田新所長の意見を聞かせて欲しいとせまった。

 泣かぬなら、泣かせてみよう、ホトトギスが私の方針ですと言った。

 つまり係長に係の営業方針を出させる事です。学術知識不足は勉強会の時間を

増やして知識を詰め込んでいくのが良いのではないかと言い出した。

 今泉所長が、やらせるという高圧的な指導には現代の若者は反発こそすれ賛同は

得られないですよと言った。北島も、その意見に賛同し最終的には所員が、どうしたら、うまく動き出すかによって営業実績があがるのであって、尻をたたくだけで、

うまくいったためしはないと付け加えた。

 北島が意を決して、もう一時間も議論して全然、進んでない。

 そして係長の意見も情報も全くない会議自体が無意味ではないかと言い

今泉所長も北島さんの言う通りだと言った。会議は事前にちゃんと資料を作成して

議論してこそ意味があるので思いつきで会議をしようというのは無茶だと今泉所長

が、ちょっと厳しい表情での言い放った。

 北島も、その通りだと思うので会議は終わりましょうといったのだった。

 困った安田新所長は怒ったようで横浜は凶方位なのか思った通りにいかないと

ぼやいてた。そこで北島は安田新所長に今晩、係長が帰ってきたら一人づつ話して

みて係長の方針でも聞き出してみますと言った。これには安田新所長は表情をかえて、たのんまっさ北島さん、あんただけが頼りなんやさかい頼んまっせと言った。

そこで横浜では、こてこての大阪弁や大阪弁は基本的に嫌われますから大阪弁で

しゃべるのは、やめたほうが良いと、きっぱりと言った。それに対して、安田新所長

は、わかりましたさかい、大阪弁やめまっさーと言った。

 これには聞いていた事務の女性達からも笑い声が聞こえるのだった。翌日、今泉所長が、北島さんの担当病院を考えておきましたの見て下さいと言われた。

 担当してた病院、開業医が多く担当病院で実績と上げると言うよりも若手の育成と係長のレベルアップに力点を置きたいから負荷のかからないようにしておきましたと言った。今週は係長と面談して彼らの方針を決める様に指導して下さいといわれた。

 若手、新人の同行は、その後で結構ですと言われ、まず佐藤係長と面談して夕方、

時間取れる日を聞いた。今晩でも大丈夫と言われ社外で話を聞く事にした。

 続いて石島係長とは、その翌日に面談する事になった。十一時に営業に出かけ、

以前、訪問していた、大口取引先の開業医さんに挨拶に行った。十数年ぶりの訪問に、川口院長が喜んでくれたが。しかし担当者の池田君について、まだ未熟だと

言っていた。その後、石川病院ここは仲の良かった吉田院長も退職して知ってる先生はいない。また、病院は別の場所に移り新築して以前の二倍の病床数の大型病院に

なっていた。関連する科の先生方に新任の挨拶をした。夕方から吉山病院を訪問した

が、こちらも以前世話になった山田先生も退職されていた。ここでも担当する科の

先生に新任の挨拶をして回った。

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