帰京編8話:古巣の横浜営業所へ
横浜営業所へ、北島は懐かしい思い出で出社した。しかし、そこでは所長交代の
雑務に追われて事務の君島さん吉山さんが忙しそうに働いていた。昼休みに事務の
君島さんと吉山君さんを食事に誘い内情を聞くことにした。すると横浜営業所は
最近、転勤者が増えて、若手が多くなり、世話が大変だと言った。
実績は、以前の優秀なベテラン営業マンが抜けた穴が大きく今回も本社の大阪から
優秀な所長が応援として来たそうだ。しかし実際に会ってみたが切れ者という
感じがしないと言うのだ。大阪弁丸出し、こてこての大阪人という感じで彼女たち
も戸惑っていた。呼ぶ時の口調も偉そうで好感が持てる感じではない様だ。
むしろ彼女たちは北島に何とかして下さいと言うのだった。
わかったと北島は言い、できるだけ所員のパイプ役をかって出る事にしようと
答え彼女たちは胸をなで下ろした様子で笑みがこぼれた。夕方になり営業の男性達が
帰ってきた。最初に大阪から転勤になった安田新所長と今泉所長が帰ってきて、
北島は今泉所長と挨拶をかわし、続いて安田新所長に、これから宜しくと挨拶した。
安田新所長は北島君の、かつての人脈で応援頼むよと言ってきた。
大型取引先の業績が徐々に落ち始めて歯止めがかかってない状態だと言うのだ。
今泉所長から今晩早速、北島さんの歓迎会を近くの中華料理屋で開くと言われた。
夜七時過ぎには全員帰ってきた。それぞれの営業マンに挨拶をした。
古株の佐藤係長が北島先輩よく帰ってきてくれました。
いろいろ助けて下さいねと言うのだった。その他の石島係長、ベテランの伊東君、
中堅の山下君、池田君、新人の鮫島君、西田君にも挨拶した。今泉所長は、東京支店
の他の営業所にいたので北島はよく知らない営業マンだった。
昨年、横浜営業所から厚木営業所が独立したので、そちらの方に顔見知りの
ベテラン営業マンが移動した。七時過ぎから北島の歓迎会が開かれ最初に北島が
挨拶し母が病気で古巣の横浜営業所に戻ってきたと話し今後、営業所のパイプ役
として必要とあれば同行訪問するし、できる限りの協力は惜しまないと話した。
その言葉に是非お願いしますと所員の声が上がった。
安田新所長は意外に謙虚に阪以外は知らないので、また、いろいろ、頼んまっせ、北島はんと肩をたたくのだった。その仕草には関東人の北島としては、
いさいさか抵抗があった。人を馬鹿にしてるというか、なれなれしいというか、
とにかく好印象と言う訳には行かなかった。北島は心の中で本社とパイプがあり、
そのコネで横浜営業所に来たくせに「おい若造、横浜は市場はデカい、しかし、
それだけ競争が激しい、よく覚えておけと、心の中つぶやいた」次第に宴もたけ
なわになり歌が始まった。彼らも酒が入り、いろんな話が飛び交うようになった。
そして安田新所長の歌が始まった。歌は、なんと「浪速恋いしぐれ」こてこて
大阪の、ど演歌だった。北島は横浜で、お医者さんとの接待で歌われたらと思うと背筋が凍る思いがした。この話は一刻も早く安田新所長に話さなければ営業上支障きたす事は誰の目から見て明らかだった。やがて歓迎会もお開きとなった。安田新所長が、もう一軒行こうと言うのだが完全に酩酊状態で今晩は飲み過ぎだから帰りましょうとタクシーにのせた。北島が帰ろうとすると今泉所長が、ちょっと話したい事が
あるからと誘われた。今泉所長は北島の二年下の後輩で横浜営業所のかつての凄腕
営業マンが他の営業所の所長になったり、転勤したり、厚木営業所のサポート係
になったりして、くじ運良く横浜営業所の所長になれた男だった。二次会で今泉所長が開口一番、北島さん、とんだ時に横浜に戻ってきたねと言うのだ。
最近の横浜営業所は業績が落ち始め、これから低迷の時代になるよと言った。
本社の連中が横浜営業所の昔の栄光で大丈夫と、たかをくくっているが現在、北島さん達、優秀な諸先輩が築き上げた頑丈な城が崩れ落ち様としているんです。
できの悪い新人や素行の悪いベテラン営業マンとかメンバーの質は現在最悪です。 加えて、あの脳天気な安田新所長でしょ北島さん本当に大変ですよ。
北島さん今日の安田新所長の話や行動をみれば良くわかるでしょ。
特に、安田新所長はプライドが高く人の言う事は聞きませんからね、
大阪で成功したという自信が大きすぎて、とにかく扱いにくいから注意して下さいねと言った。今泉所長が実は東京に戻れて、ほっとしていますよと言うのだ。
これは北島さんの事を思って言うのですが身体を壊さないで下さいよ。
馬鹿真面目に営業所員につき合ってたら身体がいくつあっても足りませんと言っていた。最後に解決策は、できの悪い営業の若手の育成しかないと言うのだ。
中堅は自分の保身のことばかりで動いていますから十分に気をつけて下さいという始末で、お先真っ暗という感じの北島だった。
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