帰京編6話:理想のDB完成と北島の業績表彰

 ある日、医局の廊下で突然、吉川先生から悪いんだけれど、ちょっと大至急、

運んでもらいたいものがあるから部屋まで来てと言われた。

何やら手術道具の部品の様なものだ。ここから六十キロはなれた長野県の派遣病院

で必要になり長野を以前担当していた北島君に頼みたいと言った。もちろん了解して届ける事にした。一時間程度で、その病院の医師に間違いなく届けた。

 相手先の病院でも待ってた様で大歓迎された。吉川先生が笑いながら、また、

宜しくと言った。春が過ぎ、夏が駆け足でやってきた。翌週、山梨の甲斐医科大学を訪問した時ついに夏の医局の納涼バーベキューに参加を許されてた。以前、参加した時の北島の体力と料理の手際の良さが、特に女性達の評判になったようだ。

 また力仕事ある時には頼むよと言ってきた。また体育会系のあいさつで答えた。

 今年の夏も、中信大学メディカルパソコンクラブの研修会へ若手の先生を連れて

いって欲しいと吉川先生からの要請を受けて中信大学の久光先生に連絡した所、

快諾をもらった。今年は甲斐大学の小清水先生と上川先生と北島が手術症例のデータ

をデータベースⅢで、メインのデータベースを作り、その中で手術例を写真入りで

ファイルメーカーに、手術部位別に小さなデータベースに分けて作成した。

 ようやく理想的な形のデータベースが完成した。

 それを甲斐大学病院の小清水先生と上川先生が発表する事にした。

もちろん北島が監修して今までにないタイプのデータベースが完成した。

 今年も北島のスペースギアで諏訪の温泉旅館に午前十一時に着き両館で

昼食を取りながら、中信大学の久光先生のグループと再会した。

 食事後、会場設営を終えて午後二時過ぎから研修会が始まった。最初に甲斐大学のデータベースⅢでメインデータベースにして手術所見を手術部位別に、ファイル

メーカーで写真を入れた初めて医療用データベースシステムを発表した。

 小清水先生が、脊椎、股関節の手術、上川先生が膝、肩、手肘関節の手術写真を

入れたのデータベースをそれぞれ発表した。これには久光先生から驚嘆の声が上がり、これが整形外科のデータベースの完成形かも知れないとの評価を受けた。

 データベース、サンプルとして、中信大学や、その関連病院の医師、四国から来た先生方も欲しいと言われ、かなりの数を、せっせっせとコピーする事になった。

 更に四国の先生からの、いくつかの追加して欲しい点などの意見も出て改良する

様にしたいと小清水先生が答えていた。北島がデータベースを甲斐大学の若手の先生に教えたのだが、彼らのセンスが良いのか、どういうデータベースが欲しいのか

具体的になり、すぐに、このシステムができた。

 そしてこのシステムの一番良い点は応用が簡単にできる点にある。希望すれば

写真データも

増やせるし項目も増やせる、応用性に富んだデータベースだ。これには久光先生から今後整形外科での、モデルになるデータベースになるだろうと好評価だった。

 北島は今回の件で若い人の応用力、センス、着眼点の良さには驚かされた。

 たった一年で完成できたのは驚嘆に値するくらいすごい事なのだ。

 中信大学でデータベース作りを模索して約十年こんな形で最終完成形が

できるとは、想像もできなかっった。

 その他の発表もあったが今回の研修では、この甲斐大学のデータベースの事で、

持ちきりだった。その後、これが整形外科の医療用データベースの原型になるはずだと言った。その晩の懇親会で久光先生が北島君、遂に完成形のデータベースシステムができたねと肩をたたいて喜んだ。

 今までの中信大学メディカルパソコンクラブの活動が、あったからこそ、

できたシステムデあり、その価値の高さは全国に誇れると,お互いに喜びあった。

 翌日は午前中に観光をして午後から甲斐大学のつくったデータベースシステムに

対する改良の依頼や応用して欲しい点などを多く出し合って終了した。

 帰りの車の中で小清水先生が、このデータベースは、今までにないものなのですかと不思議がっていた。しかしデータベースⅢとファイルメーカーを両方利用して小分けしたデータベースにして画像を取り込むという応用というのは、そんなに簡単にはできるもんじゃないんだよと北島は彼らに話した。その後、甲斐大学に戻って

吉川先生に話したところ喜んでくれ今回の完成してデータベースシステムは、

中信大学メディカルパソコンクラブと甲斐大学の両者で作成したと言う事にしたい

と言うと、もちろん、それでいいよとの返答が帰って来た。

 そして、その完成までの話を中信大学メディカルパソコンクラブの代表の久光先生

が日本整形外科学会で発表する了解を得たのだ。翌日、中信大学の久光先生、

電話連絡した。その年の日本整形外科学会で、この演題が,何と学会賞をもらった

との報告が入り夢心地の北島だった。

 そして作成者の名前の中にジャパン製薬、北島治と書き入れてくれた。北島は、

この仕事を始めて大きな勲章をもらったような気がして最高の気分だった。そして

この年は甲斐大学も派遣先の病院実績も過去最高となり順風満帆で年を終えた。

 今年は甲斐大学もだけでなく派遣病院での売上も順調に伸びてきて単月で念願の

売上占有率が市場民力度を超える事ができ多摩営業所が伸び率全国一位をになった。これは北島にとって感無量の出来事だった。個人の実績も伸び率、全国トップと

なって個人と団体のダブル受賞となった。

 多摩での三年目の臨時ボーナスは二百五十万円、特別報奨金百万円通常ボーナス

が百八十万円、給料が六百三十万円、出張+外勤手当が百万円、

合計一千五百六十万円となり過去最高の給料をもらった。

 ジャパン製薬に入社して、まさに絶頂期をむかえた瞬間だった。

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