雪国転勤編12話:松本の家を売る話

 東京に転勤となれば松本の家を売っていかねばならないと女房と話し合った。

 女房から会社の友人一人が最近、宝くじか何か大きな賞金が入って

今の借家を引っ越して近くのアパートに住んでる娘夫婦と孫三人と同居する

大きな家を欲しがってると言う話を聞いた。

 そしてその友人は何回か北島家にも遊びに来ていた。

 そして、こんな立派な家いいねと言っていた。

 そこで、翌日、女房がその友達にもし北島の家を売るとしたら買う気あるのか

聞いたところ、もちろん買いたいと言ったそうだ。

 北島は、その話を聞いて北島家の売却の話を進める事にした。

 早速その友達を家に招待して、お話を聞く事にした。

 その週の日曜日に北島の奥さんが友人を連れてきて単刀直入に転勤になるので、

この家を売却するつもりだと切り出した。

 それを聞いて彼女は、やっと仲良くなれたのに別れるのは残念だと言い、

それで、おいくらで、お売りになるつもりなのですかと言ってきた。

 四千八百万円では、どうかと思っていますと答えた。

 欲しいと思ってはいるのですが彼女一人では交渉できないので親戚の人が銀行で

働いているから相談してみると言った。翌日の晩、電話が入り今週の日曜に親戚の銀行員と二人で相談に伺いたいと言うので了解した。その銀行員が家の中を拝見させて

から、お話すると言う事で良いですかと聞くので、もちろんとですと答えた。

 まず一階、次に二階、玄関周り庭と庭に建てた自転車の屋根付き駐輪場と物置と

一体になった大きめの倉庫、庭用の水道と外の電源、水道などを見せて回った。

 銀行員は、流石にSKSハウスの住宅だ。うまく造ってありますねと言っていた。

 大家族向きで彼女には、うってつけかもしれませんねと言った。

 築五年たってる割には、きれいですねと言われた。

 その後、珈琲を飲みながら実務的な話になった。

 銀行員の方から仲介業者を通すと売り手三%、買い手三%の売買手数料が

かかりますと言った。そこで誰か不動産業者を知りませんかと北島に言ってきた。

 市内に不動産屋を経営してる友人がいますとい言うと、その人に安く仲介して

もらう様に頼んで下さいと言われたので快く了解した。

 北島が四千八百万円で結構ですと言うと、もう少し安くしていただけません

かと言ってきた。なんとかOKしたいが北島の友人の不動産屋さんや女房と

相談して結論出したいからと伝えた。

 来週の日曜日までに結論出すと言う事で了解してもらった。

 その週の日曜日、女房の友人と親戚の銀行員がきて話し合った。

 北島は女房の友人に、つかぬ事をお伺いしますが、お手持ちのお金は

いかほどなんですかと聞いた。

 何故、そんなことを聞くのですかというので北島が売買の交渉すると言っても、

あまりかけ離れた値段は出せないので、あらかじめ知っておきたいと思ったん

ですと答えた。すると五千万円弱と言うのだった。

それなら交渉になりますと言った。そして北島が買い値は四千六百万円、その後、

駐車場と外構、庭の自転車の屋根付き駐輪場と物置と一体になった大きめの倉庫、

庭と駐車場の水道と電気の工事含めて五百万円で合計五千百万円と言った。

 銀行員が四千二百万円ではどうですかと言った。北島は四千五百万円以下は

厳しいと答え、実は大学病院のある先生が四千六百万円なら買っても良いと

いっているんですよと言った。次に女房の友人が間をとって四千四百万円にして

下さいませんかと言ってきた。そこで女房と相談するふりをして、ちょっと

待ってと言い、ひそひそ話をした。

 すると銀行員が四千四百万円でお願いしますと頭を下げたのだった。

 北島こう言うのに弱いので、わかりましたのと言った。

 女房の友人が良かったと言い、彼女が、やっと人並みの生活化できる子どもや

孫とも一緒に住める、夢の様だと喜んでくれた。思わず北島にも抱きつきそうに

なってきたので握手をして、その場をやりすごした。

 翌日の夜、PTAで知り合った市内の不動産屋の社長とあって事の顛末を話した。

 売買の件は了解したと。手数料は費用は、いらないから、北島さんのおごりで

仲間を呼んでスナックで飲んで歌って盛り上がりましょうと言った。

 その費用だけは払ってという条件で無料にすると言ってくれた。

 もちろん了解した。不動産屋さんが必要書類は、電話で連絡すると言った。

 その後家の売買の話をすると、あなたは、さすが営業マン、良い条件で

売りましたねと言い出した。今そんな高い家なんて、めったに売れませんよ。

 転勤族で家を持ったが売れなくて借家にして困っている人が実は多いんですよ。

 どんな良い家でも家賃は十から十二万円で、税金や維持管理費用は

持ち主負担でありローン返済が厳しいという話が多い様だ。

その点、北島さんは本当についてるね。彼は笑いながら四千万円で築六年の家を、

もしお客さんから売って欲しいと言われたら、まず無理と言いますね。

 せいぜい三千万円前半が売れる最高金額でしょうねと言っていた。

 三日後には必要書類が全てそろった。北島の友人の不動産屋、女房の友人と

親戚の銀行員が同席し北島と不動産屋の四人で売買契約の手続きをはじめた。

 最初に不動産屋さんが書類の説明をして、その条件で良いか売り主(北島)と

買い主(女房の友人)に最終確認をとってきた。

 両者が了解し、それぞれ、ハンコを押した。次に正式には数万円の印紙代が、

かかりますが無駄だから両者了解の上なら、片方は写し(売り主の分)

にするので、貼らなくても大丈夫だと言ったので了解した。

 そして無事、契約が成立した。振込先の銀行口座を教えて終了。

 彼女の親戚の人が転勤して住まいが決まったら北島さんの連絡先を必ず

伝えて下さいねと言われ、もちろんですと了解した。

 もし何かあったら困りますからと親戚の銀行員が笑って話した。

そして転勤も決まり家も売れて心配ごとをかかえずに、すっきりとした気持ちで

転勤できると喜んだ。早速、翌日、銀行から多額の入金があったと連絡があった。

これで家の売却の件は無事完了。松本赴任の八年目は毎年、伸び率10%以上で

長野県の売上がついに倍増した。いままで過去にない大記録だった。

 この記録を一番喜んでくれたのが入社時に大阪本社で面接した社長だった。

 なんと直接、松本営業所に電話をして北島に、おめでとうと言ってくれた。

 そして社長のポケットマネーで松本営業所の全員を4泊6日ハワイ旅行へ

招待すると言った。まさに今までの松本での営業活動が花開いた瞬間だった。

 新入の時、横浜で所長がポケットマネーでホノルルで祝賀会を開いたのを

思い出した。それと同じ事を北島は企画した。この時もホノルルのレストランで

祝賀会の時、事務の女の子も含め営業所全員で乾杯をして喜びを分かちあったのだ。

 こんな素晴らしい経験を二度もできて北島は運命という神様に祈らずには

いられなかった。この年、業績も認められ社内等級が一つあがり最年少で副部長

となった。更に、この年の臨時ボーナス二百万円、特別報奨金百万円と通常ボーナス百五十万円、給料六百万円、出張+外勤手当が百五十万円、合計一千二百万円となり全国の営業所長の最高額。長野に来て八年もちろん頑張って大学病院を中心に人脈や仲間作りをして中信大学メディカルパソコン研究会も立ち上げた。

 これら全て順調に動いたおかげで達成できた記録。所員には厳しい注文をつけた

時もあり、衝突もあったが、最終的には所員一丸となってなしえた記録だ。

 北島は多分この出来事をは一生の誇りとして決して忘れる事はないだろう。

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