雪国転勤編話10:PTA総会で司会を務める。
降ってわいた様な、話が舞い込んできた。今年は娘の通う小学校のPTA
会長選挙だ。今年は北島の娘の通っている小学校のPTA会を選出する年なのだ。
この地域は地元の人が多く大きな敷地の家が多い。昔からの商売人とか近くの
工場の取締役とか豪農の人が多い。
しかし高齢者が多く彼らの子供達は、便利な松本駅前のマンションに移り
住んでるケースが多く毎年PTA会長の選出に苦労している様だった。
そして地区会長が六十才以下のいる家をくまなく訪問して回るのだった。
朝早く電話が鳴り地区会長が訪問したいのだが、あいてる日を知らせてくれと
言われ、今週日曜と言った。北島家も娘二人が通っていたので訪ねてきた。
正直に営業で県内を飛び回っているので忙しくてPTA会長はできないと答えた。
その二週間後また町会長が別の役員さん二人を連れてやってきた。
高齢者と商売人が多くサラリーマンが少ないので協力して欲しいというのだった。
小学校の娘がお父さん何やってると先生に聞かれ、薬の営業マンをして、近い
うちに営業所を作りたいみたいだと言ったそうだ。それで営業マンをやっている
ことが知れた様だった。
その話のうまいところを生かしてぜひともPTA会長をやってくれとの言うのだ。
北島が忙しくて出られない時は、どうするのか聞くと優秀な副会長として農家の
奥さんで看護婦をしてる人をお願いしてるから、どうしても北島さんが出られない
時には替わりに彼女に出てもらうと言うのだ。北島が県外のよそものなので、
まずいでしょと言うと、かえって、しがらみがないから良いんですよと言ってきた。
とにかく女房と相談してから答えると一週間考えさせてくれと言った。
しかし何か、断る大きな理由が見つからず、やむなく承知せざるを得なくなった。
期日の一週間後、地区会長がPTA副会長候補の好子さんを連れてやってきた。
コーヒーと紅茶を出して話し合いをした。断りの話をしていた時に好子さんが
コーヒーが好きな様でこれサイフォン出入れてるのとか議題と全く関係ない事を
言うのでサイフォンは味がうすくなるので濃くでるドリップを使ってると言うと、
おいしいわねと言っていた。だんだん話が本論からはずれて行くのをまずいと
思いながらも、ついつい、のせられてしまった。
紅茶は変わった味ですねと言うので、これは「アールグレイ」ですと答えた。
紅茶ってダージリンって思ってたわと、どおりで、知らない味がするのねと
笑っていた。でも、おいしいわねと喜んでくれた。次に話は変わり家を見せてと
言われた。一階は畳部屋が十畳一部屋だけで、ほか全部フローリングなのねと
言ってきた。もし良かったら他も見せてと興味ありげに言うので女房に案内させて
地区会長と話を進めた。しかし二階の洋室四部屋、一階大きな風呂で歓声が
あがったりして話をする様な気分ではなくなった。
最終的に北島が会合に出席できない時は、あらかじめ言っておけば副会長が代わりに出ると言う事で次期PTA会長を承諾。その後も好子さんは完全に住宅展示場
見学みたいにシャンデリアや吹き抜けで歓声をあげていた。でも業務用の
大型ファンヒータ三台と普通のファンヒーター二台では冬場の灯油代が大変ねとか、
こたつは、ないのかとか全く関係のない話に終始していた。一階の二重サッシを
見てすごいけど重くて手が痛くなりそうと全く余計なお世話だ。
だた彼女は家の見学会にきたみたいに、はしゃいでいるのを見て微笑ましかった。
好子さんが最後に医療関係の営業さんって、みんな、やりてなんだから
PTA会長だって、簡単にこなせるわよと意味ありげに、ほほえんでいた。
五月下旬、小学校のPTA総会が開かれたシナリオ通りの進行とお話をして
無事やり終えた。校長、教頭からは指示された事を必要があれば各地区に出向いて
小学校の父母に指示を徹底させて下さいとい言われた。副会長の好子さんからは
半年後の十月に松本市のPTA総会がありますので、それが一番大切な行事です。
松本のPTA総会でも、お決まりの事を話せば良いだけです。決して出過ぎた
真似はしないで行きましょうねと副会長から念を押された。
何か子どもが人質になってる様な気がして少し腹が立ってきた。
その年の秋に、松本市のPTA総会が行われることになっていて、
これが、一番の行事である。松本市PTA総会について書く。
今年の秋、周りの山々が紅葉に染まる頃、郊外のY小学校で松本市のPTA総会
が行われた。各学校のPTA会長、副会長、市のPTA役員、総勢六十人程。
まず分科会に別れ、それぞれ討論形式で議題について話し合った。
北島の振り分けられた教室を三人のPTA会長が分担した。
北島のグループは飯田さん(下越歯科大出身の歯医者さん)、下島さん
(不動産屋の社長)と北島の3人で。担当決めが、はじまり最初に下島さんが書記
をしますと言い、飯田さんが僕は話し下手なので庶務全班をやりますという言った。
下島さんが北島さんは、話がうまそうだから司会と議事進行をして下さいと
言った。話し合いで決めると言うより、もう既にシナリオは、できていた様だ。
特に北島は司会をするのに抵抗はなかったので了解した。
北島がわかりましたと言うと二人は良かったと笑っていた、司会って難しい
だよね頼むねと飯田さんが言った。後の雑用は全部やるから指示して下さいと
言ってくれた。そこで会議で意見を述べる人の所へマイクを持っていく事や必要な備品を用意する事などをお願いした。必要資料、用具を集め確認した後、分科会が
始まり、まず会議の進行役の紹介から始まって司会の挨拶を終え会議が始まった。
議題が決まっていたので、それに沿って話し始め最初は交通安全指導の
方法と問題点など意見出て、それを書記の下島さんが書いていった。
中には父母同士のいがみ合いなど関係ない話もあったので、やんわりと個人間で
話し合って下さいと、しりぞけた。
次に教師に対する意見(好き嫌いとか、化粧とか、言い方かきついとか子どもが
泣いて帰ってきたとか・・)ほとんど、たわいのない事ばかりで、
その都度、適当に処理した。終わりの方で転勤者からの意見として小学校が閉鎖的
で考えが古く現代の流れについて行けてないと言う過激な意見も出てきた。
内心その通りと思ったが、そんな事は、おくびにも出さず個人的に思う事が
あれば、やはり各々の先生と調整する事が肝心ではないかと煙に巻いた。
予定の九十分の時間で終了できた。北島は、うまくできたと内心思った。
提出資料を作成し本部に提出して無事終了した。その晩に打ち上げで飯田さんと
下島さんと北島と、その地区の女性副会長3人の合計六人で下島さんの行きつけの
スナックへくり出した。まずは皆で乾杯、飯田さんが北島にうまい司会で滞りなく
進行できて良かったと言ってくれた。下島さんも変な意見もかなりあったが、
うまく交わしてくれて上手な司会だったよとほめられた。うちの副会長の
好子さんが、うちの会長は、できる営業マンですからねと冗談をとばすと
他の地区の副会長の女性達が、良い男だし羨ましいわと笑っていた。
そして下島さんが口火を切って懐メロの歌謡曲を歌い始めた。ムードのある曲で
歌い込んでる感じがあり上手だった。続いて飯田さんが意外にもビートルズが
好きな様でレットイットビーを歌い出した。
そして北島が、サイモンとガーファンクルを歌うと飯田さんに受けていた。
副会長さんからは日本の曲が聴きたいと言われた。そこで、がらっと変わって、
ジュリーの「勝手にしやがれ」を北島が歌うと嘘みたいに彼女たちがのってきた。
そうすると彼女たちがキャンディーズ、ピンクレディーを歌いだした。
北島もジュリーの「時の過ぎゆくままに」など邦楽を歌った。
この人たちは堅い人た達だと思っていたが羽目が外れると、
のりがいいのに驚かされた。好子さんが木綿のハンカチーフを歌った。
そこで北島もフォーク「我がよき友よ」を歌った。その後、好子さんが
「横須賀ストーリー」を色っぽく歌ったのには非常に驚いた。
日頃、几帳面そうで神経質そうなのだが今晩は大いに楽しんだ。
十二時近くに、お開きとなった。男性二千円、女性千円でOKと、
下島さんが言っていた。
まさか領収書を経費で落とすんじゃないのと黄色い声がとんだ。
領収書もらってないし第一経費で落とすなら全部おごるよと笑っていた。
その後タクシーで、好子さんと相乗りして帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます