営業編2話:地元の営業所へ赴任

 出社初日、営業所に着き配属の挨拶をした。

 横浜営業所は大野所長と桜井課長と小川係長と木島先輩がおられ

営業マンは新人の北島を入れて五人体制。

 北島の担当は横浜の中心部の中小型病院と開業医の合計二十件だった。

 そして小川係長に呼ばれて当営業所では週三回(月、水、金)の

 早朝勉強会を木島先輩と北島で行う様にと指示された。

 時間は朝八時から九時半迄の九十分。早速、明後日から開始となった。

あらかじめ勉強する資料とスケジュール担当者の振り分けを決めた。

 カリキュラムを小川係長が決め勉強会の進行を木島先輩と北島で

交互にやる事になった。

 横浜営業所は売上伸び率で、常に全国ベスト五に入る営業所であり、

特に小川係長は、その指導の厳しさで有名だった。

 自宅から営業所まで電車とバスで六~七十分位で六時半過ぎに家を出ないと

間に合わない。

 水曜日に六時半に家を出て八時前に営業所に着きコーヒーメーカーをセット

して先輩方を待っていた。

 八時には、先輩方も出社してきて勉強会を始めた。

 北島が担当のページを読み終えて最初の勉強会は終了した。

 突然、その時、当社製品に使えるPRポイントは何か、また、どの製品に

活用できる情報なのかと小川係長が北島に質問してきた。

 不意をつかれて、あわてて、この文献が会社の製品のPRに活用できると

曖昧に言うと北島君、事前に勉強してこなかったのかと怒られた。

 この業界は競争が激しくて当社製品の優位性を短時間に要領良く

説明できなれば競争には勝てないんだぞと活を入れられた。

 目を白黒してわかりました、次回から事前に、もっと勉強して

まとめてきますと謝った。

 これから病院で、活動すればわかるが、この業界は弱肉強食であり当社の様な

中堅企業は大手企業をくっていかねば、やっていけないんだ。

 この事を肝に銘じて活動する様にとハッパをかけられた。

 勉強会は、これとは別に営業所で土曜日一回が義務づけられていた。 

 更に小川係長がもう一回、土曜に営業所独自の勉強会を企画していた。

 なんて厳しい営業所に来てしまったんだろうと内心ついてないなと

思う北島だった。

毎日、朝早くから、夜は七時半に帰社し、その日の営業日報を書いて

上司との面接して家に着くのは夜十時過ぎの日が多かった。

 確かに労働時間が増えて、大変な毎日だった。

 また今年は当社主力製品の強力なライバル品が大手製薬企業から発売されて

当社主力製品の売り上げの減少が危惧されていた。

 しかし横浜営業所では他営業所が大きな影響を受けてるにもかかわらず、発売

当初こそ売上が下がったが毎月挽回してきて最終的には対前年プラスで終了した。

 これ結果に社長が驚いて全国で唯一、主力製品の売上プラス特別賞

として横浜営業所の全員、女子社員2名を含めて7名を4泊6日の

ハワイ旅行に会社費用で招待してくれたのだった。

 もちろん当社、初のことだったが新人の北島は特に感激した。

 そしてホノルルで、夜、営業所全員で祝賀会を所長のポケットマネーで

開いた時は、まさに至福の時だった。

 来年も仕事に頑張ると所員、全員が誓いあった。

 ちなみに、その時、聞いた話によると、この年の臨時ボーナスは営業所長が

350万円、課長が250万円、長が200万円と破格の報酬だった様だ。

 ちなみに他の営業所長で200万越えたのは2人程度だったそうだ。

 臨時ボーナスとは、標利益を超えた年、その利益を社員に還元するという

会社の方針で、利益を越えた分を9月末に、超過金額の総額の20%を

全営業所一律に支給し、残りの80%を利益増加量と増加率を加味して

営業所別に配分金額を算出して支給する。

 そのため素晴らしい数字をたたき出した営業所には多くの臨時ボーナスが

出るという仕組みになっている。

 更に横浜営業所の売上高、伸び率全国一、ダブル受賞と絶好調で、

この年の横浜営業所の所員の年収は、とんでもない数字になった。

 そう言う意味で新人の北島は宝くじにでも当たった様なラッキーな

臨時ボーナスをもらった。

 具体的には一年足らずで臨時ボーナス100万円と報奨金50万円、

合計150万円を9月末に手にした。

 まさに、これは北島にとって学校を卒業して数年間の苦労が

報われた瞬間だったのだ。

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