Extra2
年上の女の子に。①
私はかわいい。
なんて自惚れはしないけど、けして悪くない容姿をしていると思う。少なからず男受けはいい。
増川美枝、20歳。
この春から横浜の大学に通いだした、ピチピチの1年生。
といっても浪人しているので、皆より一つ学年上の年齢な上に、4月の初めが誕生日なものでもうお酒を飲める年齢になっている。
でも、年上感を出すと同級生と距離を感じてしまうので、できるだけ浪人していることは隠している。
「美枝ちゃん、うちのサークル来ない?」
「今度、里美の誕生日パーティーやるんだけど、美枝も来なよ~」
愛想もよく、褒め上手のため、皆から好かれる女の子だ。飲み会、イベントに誘われることも頻繁にある。
でも、だ。
「すみません、授業の課題が忙しくて」
「あー、先約が入っちゃって……」
「ヨガの予約がありまして~」
言い訳するのも疲れてきている。
大学生は飲み会が多く、正直飽きてきている、というか疲れた。
20歳であることを隠しているので、お酒は飲まず、皆の話を楽しそうに聞くのはけっこう苦痛。それもずっとニコニコしていなきゃならないのだ。
人を、サークルを、グループを取捨選択していくべきだろう。わかってはいるが、どのサークルにも名前は属している状況で、簡単に外れられない。というかどうやって辞めまーすと言うのだろう。いちいち宣言が必要なの?今後の大学生活に影響でそうで嫌である。
大人なのに、子供な飲み会である。何か知らないけど、盛り上がってウェーイ。そういう文化を否定するつもりはないけれど、どこか私は同級生たちを下に見てしまっている。
年齢か、自惚れか。
盛り上がるのは恋愛の話である。当然、私にも話が振られるのだが、
「よく恋愛ってわからないですねー」
ととぼける。いや、実際わからないのだけれども。
「まじ、俺と恋しちゃう?」
「立候補しようかな」
あははと愛想笑いを返し、冗談として受け流す。
どうも同年代の人たちに対し、子供っぽさを感じる。
私が勝手に一線を引いてしまっている。
大人な飲み会、そして大人な恋に憧れているの、私は。ロマンチックに出会いたい。衝撃的な出来事を味わいたい。チャラチャラした感じで人と付き合うことはしたくない。
なんてドラマや漫画みたいな理想を追い、実際の現実に嫌気が差す。
「じゃあ、美枝合コン参加ね」
なのに、そういう場に参加する羽目になる。
私、承諾したつもりないんですけど?
「わー、かっこいい人ばかりですね。増川美枝、大学1年生でーす。今日は宜しくお願いしますー」
乗り気ではなかった。でも来たからには楽しくしないといけない、私のポリシー。結果、疲れるのは私なんだけれども。
合コンには何度か参加したことある。どれもチャラい人ばかりで、テンションに合わせるのが辛かったことしか覚えていない。
それに比べると目の前の男の人たちは幾分真面目そうに見える。一人は黒縁眼鏡の男、もう二人は染めているが、大学デビューしたてという印象で、根はチャラく見えない。
悪くはないと思う。けど、ぐっとは来ない。
いや、それよりだ。
私の他の女子二人のレベルが高い。
一人は、みみすみなぎさ?というらしい。一目みて、思わず振り返ってしまう可愛さ。何処かのアイドルと言われても信じてしまう。しかし、性格は明るくはなく、おどおどしていて、逆にそれが可愛らしさを際立たせる。これを計算でやっているのだとしたら、この子強い。幸いにも表情と、一緒に来ている女の子の様子から素の性格なのだろうと推察できる。こんなに可愛いのならもっと堂々とすればいいのに、と軽く嫉妬。
もう一人の女の子の、榎田希依はスラっとしていて、凛とした表情が画になる子だ。ぱっと見はクールな印象を与えるが、顔に感情が駄々洩れであり、見ていて面白い。演技を覚えれば、ぜひ舞台に立たせたい子だ。絶対人気が出る、受ける人にはかなり受ける輝きがある。
二人とも素材がいい。特に髪をいじったり、服装に気合が入っていたりするわけでないのに、その素材の良さだけで、努力して可愛さを着飾っている私を凌駕している。
何でそんな子達が合コンに?と思うが、乗り気じゃない様子を見ていると無理やり連れてこられたのだろう。男だったら絶対お近づきになりたい二人だ。呼びたい気持ちは理解できる。
私は、かわいい。
なんて心のどこかで自惚れているのだけど、本当の可愛さの前では霞んでしまう。ならば、私は愛想よくして、この場を楽しくすることで、彼女達を上回る。
上回ってどうする?
皆によく見られたいのが私だから。
それで、何を手にするの?
空気を読むのが私のいい所だから。
でもそれって、自分を出せないってことだよね?
会話の内容に相槌を打ちながらも、どんどん自己嫌悪に陥る。
そして、さらに私の気分は落ちる事件が起きる。
「あれあれ皆さん、グラスが空ですね。ボタン押しますね」
皆のグラスが空になったので、すかさず気の利く私は注文を促す。
「お二人は何にします?」
「私はコーラで。凪沙は?」
「ウーロン茶」
「わかりました。店員さん、コーラとウーロンでお願いします」
一つの失敗をしでかし、悔いることになる。
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