助けて②

「だからなカズ、俺は運営側が絶対的に悪いとは言わない、だがここまでメンテを続けられると運営に文句を言いたくなるんだよ、わかるか?」


「お、おう…なんか色々大変なんだな」


 つい最近配信されたアプリがメンテナンス状態である事に文句をタラタラ流すヤマ。

 僕はそのアプリを入れてないから分からないが配信直後から問題が発生したらしく、二日たった今もメンテナンス状態が続いているらしい。

 部室で昼飯を食べながらそんな話をしていると、コンコンと、戸を叩く音が鳴った。


「どうぞー」


「し、失礼、します」


 恐れ恐れ入ってくるのは要 朱里という女の子。


「大丈夫だよ、この部室僕達二人しかいないから」


「あ、そうなんですね、それを早く言って欲しかったのです」


 なぜ彼女がこの部室に来たのかというと、話を聞くためだ。

 僕は彼女の涙を二回見た。そんな子をほっておけることは出来ないだろう、だから話を聞く。たとえ何も出来ないとしても苦しみを共有するだけで少しは楽になるがしれないから。

 そんな真剣な話をしようとする中、一人空気の読めない奴が第一に発言した。


「へ、ひみはちはいふからへひへたほ?(で、君たちはいつから出来てたの?)」


「おいヤマ、食べながら言うなよ何言ってるのか分からないよ……それと僕達はそうゆんじゃないってば」


 口をモゴモゴさせながらヤマはありもしないことを喋る。

 一方の朱里さんといえば一度も会話をした事の無いヤマが居て焦っていた。


「あ、あのあの、わた、たわしたちは、あっ、その……それは置いておくとしてあなたは誰なのですか?」


 焦りすぎて『私達』を『たわしたち』と言ってしまい、ヤマに爆笑される。

 朱里さんは顔を真っ赤にしてこちらに涙目で訴えかけてくる。「この人は本当に大丈夫なのですか?」と。


「朱里さん、問題ないですよ。この人は見た目に大してかなり頭のいい人ですし、優しいですから」


「まてカズ、見た目に大してってどーゆー事だよ、さらっとひどい事言ったぞお前」


 その言葉を無視して僕はヤマに自己紹介をさせた。


「クソっ、覚えてろよカズ……っと、俺の名前は大和 來夢。宜しくな♪」


「改めて、僕は羽嶋 和哉。宜しくね」


「はい、私は要 朱里です宜しくです」


 全員の紹介が終わったので、早速本題に入ろうとした……のだが。


「大和さんもやってるんですか!ファミファン!」


「おお!朱里ちゃんもやってんだ!どこまで行った!?」


「第5章のエルフの森周辺ですよ、あそこのエルフの雫がなかなかドロップしなくて詰まってるんですよ……」


「お!同じじゃん!確かにエルフの雫はなかなかドロップしないよな~」


 話は大きくずれ現在大人気の『ファミリーファンタジー』通称『ファミファン』と呼ばれるテレビゲームの話題になっていた。

 昔からゲームが好きだったヤマは予約して初日からプレイしていたらしい。

 それに同様朱里さんも発売初日から進めているらしくヤマとほぼ同じくらい進んでいるらしい。

 一方の僕といえば、ふたりの話に付いていくことが出来ず、ひとり虚しく本を読んでいた。

 本を読むのは楽しいことなのだが流石にそろそろ話を始めないと昼休みがおわ……

 きーんこーんかーんこーん……


「あ、予鈴なっちゃったじゃん……」


 予鈴

「はふ~、まさか学校でファミファンの話が出来ると思いませんでしたよ~」


「そうだな~カズなんて本ばっかで全くゲームやんいんだモーン」


「む、ゲームくらい僕もやるぞ」


「へぇ、なにを?」


「チェス、オセロ、ポーカー」


「……」


「……」


 どうゆう事だろう?僕がなんのゲームをやっているか言った瞬間彼らから表情が消えたぞ?

 僕は何か変なこと言ったか?


「よし、教室行くか」


「そうですね、」


「おい待て聞いておいてそれはないだろう」


「……(^ω^)」


「……( ◜ω◝ )」


 片方は笑顔、もう片方は同情の目と……なぜ僕はこんな目を向けられているのだろう…。

 ただ朱里さんの相談を乗りに来ただけなのに…どうしてだろう今僕は相談に乗って欲しいと思ってる。

 そんな僕の気持ちを関係なしに「いやーファミファン楽しいよねー」「そうですねー」と言った感じに教室へ向かっていった。


 結局その日、朱里さんから悩みを聞くことは出来なかった。

 しかしながら今回、一つ分かった事がある。

 それは……


「私、大和さんと友達になれたんですかね?」


「なれたんじゃないかな」


 ヤマと朱里さんが、友達になれたという事だ。

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