第20話 領主殺害事件の始まり
二度寝した東条が目を覚ますと、既に時刻はお昼時になっていた。
「おはようございます、東条さん」
「おはよう、ジャンヌ」
ジャンヌは窓から広場の様子を見つめていた。皆の笑い声が聞こえてくることから察するに、盗賊たちとの戦いは勝利に終わったようだ。
「戦いは終わったようだし、俺たちも様子を見に行くか」
「そうですね」
長老の家を後にした東条たちは、荷馬車を引いて、石畳の道を進む。広場に近づくと、領民たちが弩を手に抱えながら、満面の笑みを浮かべていた。
「あ、お客さん」
酒場にいた少女も満面の笑みを浮かべて、東条たちへと近づいてくる。
「戦闘は終わったようだな」
「はい。私たちの大勝利です!」
「盗賊たちは?」
「あそこに転がっていますよ」
盗賊たちの死体が広場に並べられていた。予想していた通り、ドンレミ村を襲った盗賊たちだった。ネズミ顔の盗賊は体中に矢が刺さり、ハリネズミのような姿に成り果てていた。他の盗賊も皆同じような死に方をしている。鎧も穴だらけで売り物にならなくなっていた。
「この死体はどうするんだ?」
「領主様に戦果の報告が終わったら、埋めるつもりです」
「ならあいつらの剣、貰ってもいいか?」
「誰の所有物でもありませんし、領主様はきっと捨てるべきだと仰るはずですから、お客さんが持って行っても良いと思いますよ」
「なら遠慮なく貰っていく」
東条は盗賊たちの剣を死体から奪い取っていく。彼らの所有していた剣は背丈ほどもある長物もあれば、果物ナイフのような短いものまであった。それらの剣をジャンヌと共に、荷馬車へと積んでいった。
「盗賊は九人なのに、剣の数が八本しかないな」
「戦いの途中で折れたのかもしれませんね」
「もしくは俺たちと同じような火事場泥棒かだな」
東条がそう冗談を零すと、ジャンヌはクスリと笑った。戦闘が終わった後だと云うのに、和やかな空気が流れていた。
「おいっ! みんなー」
そんな穏やかな空気は必死の形相で広場にやってきた男によって崩れ去る。彼はただ声を震わせながらこう口にした。
「領主様が殺されている!」
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