第139話 絶対不敗の決闘者 -06
「ガッ!?」
エーデルは度肝を抜かれた。
まさか避けるのでもなく、防御するのでもなく、攻撃をするのでもなく――しがみ付いてくるとは思いもしなかった。いや、正確には攻撃に近いのかもしれない。
拓斗はエーデルの下腹部を抱きかかえるように、どっしりと掴んだ。相当なスピードで向かっていたのだから衝撃は多少なりともあった。自身の意図しない攻撃故に、相手に反射がいったかどうかは分からない。
しかしながら、拓斗はガッチリとエーデルの胴を捉えて離さなかった。
ただ、彼はエーデルの突進を止めたわけではない。
拓斗の足は地についておらず、文字通り彼にしがみ付いた形であった。
本当にただ組みついた状態。
(そこから何をするんだ?)
当たった瞬間は攻撃にも近い衝撃があったものの、組みついただけでは相手にダメージなど与えられない。しがみ付くのに両手を使ってしまっていればそこから攻撃に転じるのも難しい。
彼はこの策を、咄嗟に攻撃を回避する為に使っただけなのか?
(――違う!)
エーデルは直感で否定する。
あんなのは咄嗟に出来る行動ではない。少なくともそのような技量はないとエーデルは見切っていた。
すなわち、彼は最初からこれを狙っていたのだ。
その目的の先は回避するだけではない。
だからといって彼が何かするわけではない。
(狙いは――こっちか!)
エーデルは拓斗には目をくれず、周囲に視線を向ける。
男は囮。
意表を突いたことをして視線を向けるのが役割。
その隙に先の2人の『スピリ』が攻撃を仕掛けてくる。
そう読み切った。
そしてその予測通り、彼は視線の先――真正面に一人の少女を捉えた。
蒼髪の少女――遥だった。
彼女は一直線にこちらに向かってくる。
「やはりな!」
自身の予測通りだったことにエーデルは口の端を吊り上げる。
パートナーを囮に使って攻撃を仕掛ける。
フランシスカとは異なるスタイルを持つ少女の行動を読み切った。
――と、彼は思いこんでいた。
しかし彼は気が付かなかった。
疑問に思うべきだったのだ。
どうして遥は、エーデルの視界に入ったのか、ということを。
攻撃を仕掛けるならば背後からが基本だ。
だが、彼は真正面にいる遥を捉えた。
そう、エーデルの背後ではなく――拓斗の背後から現れた彼女を。
何故彼女は真正面にいたのか?
その疑問に対する回答は、すぐさま提示された。
――ジャラジャラジャラ!
ギンッ!
「何だと!?」
エーデルが驚愕の声を上げる。
予想もしない所から、想像もしていないことが起きたからだ。
行動を起こしたのは――拓斗だった。
彼のコートが突然膨らんだかと思うと、そこからとあるものが放たれた。
それは鎖。
その飛び出した鎖が、エーデルの身体にぐるぐると巻き付いた。
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