第109話 修行・修練・習得 -09

    ◆



「何をしているんだか……」


 フランシスカは呆れ声を空に投げる。先程、小学校の前で見つけた男子高校生2人の姿を思い出しての反応であった。他の生徒達には気が付かれていなかったようだが、普段から戦いに身を置いている彼女には怪しい雰囲気を醸し出す人物なんて目を瞑っていても察することが出来る。

 もっとも、その雰囲気を醸し出していたのは拓斗の方ではあったが。

 セバスチャンはあれ程にも怪しい行動をしているのに、一切その気配を立っている。どのようにしているかは不明だが、彼の訓練の賜物だとはいえよう。

 しかしながらフランシスカにはセバスチャンがどこにいるのかは察知できた。それはもう感覚というよりも、セバスチャンの行動原理を読み取っている、と言った方が正しいだろう。

 故に彼女は理解していた。

 セバスチャンがどうしてあのような行動をしていたのかというものも。


「……まあ、分かるけれども、何をしているんだが、とは言いたくなるわよね。女の子の足を見て先を予測する訓練だなんて」


 小さく口に出してみたものの、その行動はやはり異様だ。セバスチャンが自身の足に並々ならぬ執着心を持っているからこそそのやり方の有用性には理解――はしていないが分からされている。フランシスカですら自分が出来るとは思っていない。

 そんなモノを、ただの少年に見えるあの高校生――木藤拓斗が出来るとは到底思えない。


「案外セバスチャンもひどいことをするのね」


 教えると言いながら実際には不可能なことを押し付ける。

 優しいようで鬼畜な所業である。


「さて、どこまで耐えられるのかしら」


 ふふ、と口元を緩める。

 その言葉は、先に見えている彼女にも掛けた言葉だった。

 同じ『スピリ』の少女。

 高校生で、かなりスタイルのよい美少女。


「……羨ましがってなんかいないんだから……」


 少しだけ声を低くしてランドセルを肩ひもを掴みながら肘を内側に寄せてみた。

 ちょっとしか寄らない。


「……厳しくしようかしら」


 あまりにも理不尽な理由を携えながら、フランシスカは彼女――剣崎遥の前まで小走りで向かった。

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