第2話 同室
診断されたものは仕方ない。入院予定は約二週間。完全に治療するのは難しいので、緩和させるのを目的とすることを医者から説明された。
自分はわりと早期発見だったらしいが、治療のために入院するのはあまりないことだと聞いた。
若いが故、これからの長い人生を考えても体に影響を残すことなく治療ができればという判断らしい。
今住んでいるアパートの諸々の事は叶多さんに任せることになり、自分は治療に専念することになる。
幸いに単位を落とすことなく過ごしてきたので講義も心配する事はない。休学は避けられそうだ。
あれよあれよと時間は過ぎ、入院の日となった。
その日はとても天気の良い日だった。照りつける日がきつく、途中でアイスを食べてしまった。
いけないと思いつつも、これで自分を甘やかすのは最後と言い聞かせてトリプルサイズで食べた。チョコレートに抹茶にオレンジシャーベット。味はぐちゃぐちゃ。
これは流石に自分でもやりすぎたと反省した。
ちょっと多めの荷物をもって、受付に行き、入院の旨を看護師さんに伝える。
「相宮真夏、さん?」
おそらくカルテであろうものと僕の顔を交互に見ては、だんだんと焦った表情になっていく。
「えっと、男性ですよね?」
「僕は男性です」
どこからどう見ても自分が女に見えるとは思えない。入院と聞いて髪は黒く染めたものの、少し高めの背をしている自分は決して女ではない。
「…すみません、こちらの手違いで_______」
「…え?」
_______ 女の子と同室なんです。
なんということだ。
はい、そうですか。
と易々と同意できるものでは無い。
いや、これはダメだ。何も無いとは思うがもし仮に何かあったら完全に僕が悪者になってしまう可能性が高い。
何もなかったら何もなかったで僕の心も痛いままだ。
「申し訳ありません。病室がどこもいっぱいでして…」
聞くところによると患者の数に病室が見合わないらしい。部屋が無いのだ。そこで僕の名前だけを見て女と勝手に判断し、ろくに話し合いもしないで病室を決めたんだと。
それじゃあ日をずらしたところで退院する人が出るまで待たないといけない。
どうしてこんなにもグダグダなんだ。
「あたしは構わんよ」
聞こえてきたのは小さいが凛とした声。
横を見ると、背の低い女の子が立っていた。
見るからに不健康そうで、やつれている。立って歩けるのが不思議なくらいに脚が細い。
「あ、えまちゃん…」
「他のとこが空くまで構わんよ。1人部屋みたいで寂しかったし。
大丈夫やよ」
エマ、と呼ばれた人はどうやら僕と同室の人らしい。
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