第2話 威光
人は天使と違って、永遠に生きるようには出来ていない。いつかは老いて、死んでしまう。
始祖アダムは、930歳で亡くなった。その子、我が一族の祖セツも、912歳で亡くなった。人は健康な一生をとげても、千年を生きることは出来ない様だ。
さらに今は、争いが絶えない時代だ。100年すら生きられない者も、沢山いる。元をたどれば、最初の死者、アダムの二男であるアベルも、兄カインに殺され、すぐに命が尽きたのだ。彼らの多くは、子を残すこともなかった。
そんな中にあって、俺は恵まれているのかも知れない。戦士として戦いに身を投じてきたにも関わらず、ここまで生きてこれたのだ。そう考えると、エラの言うように、今日は大切な誕生日だ。
「ありがとう。大事にするよ」
俺はエラにそう答える。
「どういたしまして。主と
エラは両手を合わせ、祈ってくれた。神と、
体が、暖かい信仰の光に包まれるのがわかった。きっとエラも、同じものを感じているのだろう。願わくばこの光が、いつまでも人と共にあり、夜の一族を遠ざけんことを。人々を、護らんことを。
しばらくそうしていると、あたりが暗くなってきた。俺とエラは共に目を開け、西の空を見た。分厚い雲を突き抜けて、強烈な赤い光が目に入る。神の光である、太陽の現視だ。調度、祈りを捧げていたから、いつもよりくっきりと見えていた。
あの美しい光が、我々を見護り、育んでくれている。夜の一族を焼き滅ぼし、そして信仰ある者には、いつでもあの雲を抜けて、姿を現してくれるのだ。
俺とエラは、そのままどちらからともなく、手を取り合った。
もうすぐ夜になる。太陽は沈み、神は、地の悪魔達を焼き
「……行こうか、エラ」
「ええ」
そうして俺達は今日も向かう。戦場へ。夜の一族との、戦いの地へ。
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