第34話 五月と朝日

 気の毒にもポップコーンのかけらが多少髪に残っている五月ではあるが、気を取り直して朝日を次の目的地へとエスコートする。

 予定は買い物。そして、やってきたのは黒川が経営する高級男性服飾専門店。

 これはどういう事か? と深夜子たちがたずねてくる。


「なにい!? ドレスコードがあるだと?」

五月さっきー。会員制のレストランとか意味わかんないけど」

 まずは、買い物よりもディナーの準備であると説明するも、梅たちが騒ぎたてた。

「別に珍しいものではありませんわ。それにドレスコードといってもセミフォーマル――まあ、貴女方にはちゃんと貸衣装を依頼してますから、ご心配なく」

 二人に安心するように伝える。五月雨五月に抜かりはないのだ。


「はぁ……ま、飯食えりゃなんでもいいか」

「うん。あたしもご飯食べれれば別にいい」

「この後に及んでの判断基準が食べ物ですのっ!?」


 このバカアホコンビは……。

 そもそも直前までジャンクフードの食べ放題をされてましたわよね?

 五月はプルプルと震える指で、ずれた眼鏡の位置をなおしつつ心を落ち着かせる。


「あの……五月さん。じゃあ、お買物って?」


 そこに朝日が申し訳なさそうに質問を投げかけてきた。

 おっと、ひきつった顔を華麗に笑顔へと戻して話をせねば。朝日との予定は、買い物だけではないのだ。

 五月はにこやかに口を開く。


「ええ! 朝日様にもディナー用のお洋服などをわたくしがコーディネートいたしますわっ! それと――」

 もうウルフヘアーとも呼べない、伸び放題になっている朝日の髪へ視線を向ける。

「うっ……もしかして、散髪……かな?」

「もちろんですわ。おほほほほ」


 ご名答! そしてつい喜びが漏れてしまう。

 なんせ今日のデートプランで最も楽しみにしていたのが、この『朝日にオシャレをさせる』ことだ。

 自らの手で究極と呼べる宝石の原石を磨き、美しく輝くようにカットする行為。

 美少年を自分好みに着飾らせる。

 こんな女冥利に尽きるイベントが、果たしてこの世にあっただろうか? 想像するだけでゾクゾクが止まらない。


「朝日様を、あーして、こーして、むへへ……」

「さ、五月さん?」

「それから、あれとこれを――むきゃっ!?」

「五月! さっきから一人でニヤニヤしてんじゃねーよ!」


 妄想にひたっていたら、梅から物理的なツッコミを入れられた。

 これは失礼、五月は気を取り直す。そこに――。

 

「やあ、いらっしゃい。予定より少し早い到着かな?」


 背後から覚えのある声がした。

 ちょうど店長の黒川が、腕時計を確認しながらこちらへ歩いてきていた。


「ああ、黒川店長オーナー。ちょうどよいタイミングですわ。今日はよろしく――って、あれ?」

 ところが五月が挨拶をしようとするも、黒川はさらりと横を素通りしていく。……ん?

「やあ! やあやあ神崎君! んー、相変わらずの美貌だねー」

 しれっと朝日の手を握りしめ、満面の笑みを浮かべてご挨拶中の黒川。……ほう?

 ピキピキっと、こめかみに血管が浮き上がるのを五月は感じた。

「どうだい、私専属のモデルになる件は考えてくれたかな? 年間契約なら報酬は一億までならよゆ――はうっ? ぬわおおおっ!? おっ、おおお嬢? ちょっ、ヒールがっ、私の足っ、つま先にっ! かかとがぁーーっ!!」


 ハイヒールのかかとはとても痛い!


「あいっ、かわらずのご挨拶ですわねっ! 黒川店長! ……で、わたくしが事前にお願いした通りに進めていただけますかしら?」

「あっ……あああ、足に穴があくかと……もう。……あっ、こほん。も、もちろんさお嬢! スタイリストは待機済み。神崎君のコーディネートが決まったら、ヘアカットをしてから着付けをしよう。そこそこ時間はかかるだろうから、その間に君たちも着替えを済ますといい」

 

 一方の朝日。説明半分のまま、五月と黒川の話が進んでいくのがどうにも落ち着かない。


「あ、あの……五月さん。ところで、今日のディナーっていったい?」

「ああっ、朝日様! これは失礼しましたわ。ですが、お時間の都合もありますので……お洋服を選びなから説明しますわ。ささ、わたくしとこちらへ!」


 朝日がおずおずと聞いてみれば、試着ついでに説明の流れとなった。


 五月が言うには、ディナーを予約してあるレストランは、会員制最高級店が入り乱れる高層ビルの一店舗。国内で屈指の有名店とのこと。

 ジャンルは高級大陸西方風料理――朝日の感覚では、いわゆる高級フランス料理に思えた。

 そして、そのレストランにはドレスコードがあるため、着替えからヘアカットにメイクアップのフルコースになっている。と、五月は目をキラキラと輝かせながら力説。


 なんだか、まな板の上のコイになった気分の朝日であった。


 以降は、もはや五月の独壇場。

 次に連れていかれたのは、高級時計店。ショーケースに飾らている腕時計の値札には、ずらりと”0”が並んでいる。

 これ、自分の知ってる腕時計の価格じゃないんですけど? 朝日は声に出さずツッコミをいれた。


 続いて訪れたのは宝石店。もう嫌な予感しかしない。

 まあ、朝日様にとてもお似合いですわ! などと、ごきげんな五月がさらりと選んだネックレスの価格を見て気が遠くなる。

 さすがにこれは……と口に出しかけたら、五月が泣きそうになったので観念する。

 結果、腕時計とネックレスの二点で、一千万円を余裕で突破していた事実を、朝日は記憶から抹消することに決めた。


 そのあとは、黒川の店に戻ってヘアカットからメイクアップ。

 そこで、五月たちもディナーに備えて、ドレスへと着替えるために一旦別れる。

 先に服の着付けまで終わった朝日は、黒川につきそわれて店内の待合室へと戻ってきた。


 朝日は改めて、鏡で自分の姿を確認する。

 

 のび放題だった髪は、ショートマッシュウルフにカットされ、サイドに軽くツーブロックも入れてある。

 眉毛もきっちりと整えられ、さらには軽く化粧もほどこしてあった。

 監修した黒川は、元々文句なしの素材が、もはや別人レベルの仕上がっている。と言い残して昇天。


 それから五月肝いりのコーディネート。

 少し大胆に胸元をあけた水色のカッターシャツに、オフホワイトの薄手ジャケットとスラックス。もちろん、例の高級腕組とネックレスも装備。

 これは夏のさわやかアイドル系のイメージだね。とは、鼻血をたれ流しながら、サムズアップしている黒川の感想。


 当然その破壊力たるや凄まじく、メイクアップ現場のスタッフ壊滅は言わずもがな。

 一度は立ち直ったはずの黒川も、いまだ直視できないらしく、ずっと顔をそらしている。

 そんな朝日を見た深夜子ら三人。それぞれの反応はというと……。


◇◆◇


 まず、最初に着替えを終えて戻ってきたのは五月である。


 イブニングドレスは、光沢のあるワインレッドのワンショルダーマーメイドライン。

 胸元の露出は少ないが、深いスリットから見える脚が非常にセクシーな、五月の抜群なスタイルを活かしたチョイスだ。


「あ、五月さん。お帰りなさい」

「ああっ、朝日様お疲れ様でしたわっ! さあ、仕上がりの程を見せてくださいませっ! 五月はもう楽しみで楽しみでしかッ――」

 朝日を見た瞬間。

 五月は眼鏡のレンズが砕け散らんばかりの勢いで目を見開き、硬直した。


「………………」

 

 目を見開いたまま停止すること数秒。すると、五月がバッグからスマホを取りだして、どこかへ連絡を始めた。


「蘭子さん、五月ですわ! 特殊保護男性の登録を一件強制抹消しますわ。ええ、いくら使っても構いませんわ。お名前は神崎朝――」

「お、おい!? お嬢?」

「五月さん!?」

 突然、五月があまりにも不穏な電話をしはじめた。驚いた朝日が声をかけるも、関係なしに電話を続ける。

「え? 買収だけでは無理な部署がある? そうですわね…………では、何人かに不審死をとげていただけばよろしくなくて?」

「よろしくなぁーーーいっ!! お嬢っ、絶対に口にしてはいけないことのみを口にしてるぞぉ!?」

 あせる黒川が五月の肩を掴んで揺さぶった。

「さっ、五月さん! しっかり、しっかりしてください!」

「……あら、朝日様。うふふ、大丈夫ですわ、ご心配なく。朝日様は五月だけのものですの……決して、決して誰にも渡しはしませんわ……うふふ」

「ご心配しかないぞ、お嬢ーーーっ!」


 あっ、これ全部大丈夫じゃない。

 朝日は目からハイライトが消えている五月を、ひたすら宥めて続けるのだった。


 ――そんな五月が正気をとりもどした頃に、深夜子が戻ってきた。

 

 こちらはダークパープルのオフショルダースレンダーライン。文字通り、スレンダーな深夜子の体型を活かしたドレスだ。

 スリットはないが背中がV開きになっており、うしろ髪はまとめてシニヨンに結び、黒薔薇のモチーフがついたヘアネットで飾り付けしてある。


 深夜子の目力を意識してか、後ろ姿に力が入れてあり、これまた見事なセクシーファッションなのだが……。


「いいやっふおおっ! さあ、朝日君! あたしが余さず君の晴れ姿を記録しようではないかっ!」


 ダイナミックに部屋へと転がりこんできた深夜子が、ビシリとシャッターポーズを決める。

 恒例の一眼レフをのぞき込むその姿。せっかくの衣装も、セクシーさも、見事なまでに台無し。

 というか、よくドレス姿でそんな動きができますね。


「んん? …………あれ? 朝日君?」

「わあっ、深夜子さんのドレスも素敵だね!」

「ふぁっ!?」


 朝日の姿を認識した途端、深夜子の顔はだんだんと耳まで余すとこなく真っ赤になる。

 口からはあわあわと声にならない声を発し、カメラにかけた手は力なく下がってゆく。

 ドレス姿を褒めながら朝日が近寄ると、なぜか顔を背けて逃げるように身体の方向を変えた。


「え? 深夜子さん?」

「……どちら様でしょうか」

「はいっ!? いや、深夜子さん僕だよ。朝日だよ」

「……そんな名前の人知りません。……あと、あたしは深夜子とか言う人ではありません。……それと、あまりあたしを見ないでください」

「えええええ!?」


 何かが許容範囲を超えたらしく、コミュ障を発症した模様。


 ――そして、最後は着替えるにやたら時間を要した梅が、ぶつぶつと愚痴りながらやってきた。


「くそっ! なんで俺がこんなヒラヒラしたもん着なきゃなんねーんだよ!」

「「「!?」」」

「や、ややや大和さん……その姿は!? プフッ――」

「梅ちゃん!? ……ヤバ……そ、それ……くっ……ぶはぁっ!」


 梅、まさかのお姫様スタイル!!


 王道のジュエルネックプリンセスドレスで、カラーはこてこてのピンク。

 さらには、梅のショートヘアにウィッグと大きなリボンが追加され、正面からみると猫耳風に調整されている。

 可愛い系のメイクにも手抜かりはなく、スタイリストのこだわりが感じられる一品だ。


「うわあ、梅ちゃん。スッゴい可愛い! お姫様みたい!」


 これに朝日が目を輝かせた。腹筋をピクピクさせて悶絶する二人を差しおいて、梅のお姫様姿がどストライク。

 これは語尾に『~だニャン』がついても違和感がない!

 久々のお兄ちゃんモードに突入である。


「なにぃ!? ……え? へ? おっ、お前、朝日か? まて、近づくなって……の……いや、おまえほんとに、朝日……なのか……」

「猫耳リボンも可愛いー、えへへ。梅ちゃーん」


 おめかし姿の朝日に困惑する梅。対して朝日は、そんなの関係ねぇ! と梅に抱きついて、そのお姫様っぷりを堪能する。


「おいっ、こらっ、だから! 抱きしめるのは……やめろって……いつも言ってんだろ、おい、朝日……、あ……さひ……あっ……そ、その……もっと優しく抱きしめ……て」

「んなにぃ!? 梅ちゃんがデレた……だと!?」


 ――とまあ、朝日に慣れている三人ですら散々なこの結果を受け、いろんな意味で危険だと判断。

 朝日のメイクは落としてナチュラルに戻すことになった。

 それでも、充分な女性ホイホイだろうとの黒川の助言から、レストランまでの移動はハイヤーを手配。(朝日が)女性の目に触れないように移動を開始した。


◇◆◇


 さてさて、ここまでどうにも良いトコなしの五月。

 なんとしてもラストチャンスのディナーで、名誉挽回したいところである。

 この、高層ビルの三十階にあるレストランは夜景が売りであり、もちろん窓際の特等席を予約済み。

 店内の案内役は給仕長と、五月雨家のVIP待遇をフル活用。

 背後で庶民丸出し反応を見せている深夜子と梅が気にはなるが、今は朝日のエスコートに集中する。


「これは五月雨のお嬢様。ようこそおいでくださいました」

「ええ、給仕長メートル・ド・テルお久しぶりですわね。本日はよろしくお願いしますわ。あと、身辺警護の二人は別席に案内いただけるかしら」

「かしこまりました」


 予定通り、深夜子邪魔者たちは別席に送り込む。

 給仕長に案内に合わせて、流麗に朝日をエスコートして予約の席へとむかう。

 途中、朝日の姿を目にしたらしく、客席のあちらこちらでフォークやナイフが落ち、コップが倒れる音が響く。愉悦。

 

「ふわー、ほんとすごい。こんなとこで、本当にいいの五月さん?」

「もちろんですわ、朝日様」


 夜景に感動して歓声をあげる朝日。その姿に五月は心の中でガッツポーズ。

 さあ、ゆっくりとディナーを楽しもう。

 無論、料理は完全コース制。自分の高級食材知識をフル活用して、最高にクールなところを見せちゃう予定なのだ。


「本日は神崎様のような素敵な男性に、当店をご利用いただけましたことを誇りに思います。それでは、コースの説明は後ほど――」


 さすがは最高級レストランのフロア責任者。

 その風格を見せ、朝日に対してもまったく動じず。実にエレガントな対応。

 一礼してから、厨房へと戻りゆく給仕長に五月もご満悦。


「朝日様。本当は食前酒を、と言いたいところですが、そうも参りませんので、ノンアルコールで準備してありま――」

(ぶっぱああああっーー!!)

「「え!?」」

(きゃーーーっ!! 給仕長? は、鼻血が、鼻血がーーっ!)

「さ、五月さん……なんか、お店の奥が騒がしいみたいだけど?」

「おっ、おおおお落ち着いてくださいませ……まだ、まだあわてる時間ではございませんわっ!」


 残念。やはり、本日の朝日の破壊力は推して知るべしであった。


 でも、五月がんばる。

 とりあえずその場をしのいで、給仕主任シェフ・ド・ランによるコースメニューの説明を待つ。

 計画に変更はない。料理の話題で朝日の気を引くのだ。


「朝日様、こちらの総料理長シェフ・ド・キュイジーヌは国際西方料理コンクールで優勝経験もありますの。特に鴨肉を使った得意料理スペシャリテはとても評判がよろしいですのよ」

「へえ、鴨肉? うーん、僕なんかおそばでしか食べたことないや」

「まあまあ、朝日様ったら、ふふふ」


 よし順調。会話もはずんで一安心。

 五月は乾いた口を湿らすため、ノンアルコールのスパークリングワインを口にする。

 ちょうどそこに、後方からメニュー説明を受けているらしき深夜子たちの会話が聞こえてきた……。


「あん? 変なメシばっかだなおい。んじゃ俺、追加でカツ丼大盛りな!」

「ならば、あたしはチャーハンとギョーザ」

「ぶばっはあああああっ!?」


 スパークリングワインが鼻へ逆流した。

 あのバカアホコンビは――――っ!! 五月は猛ダッシュで席を飛びでる。


「おう、それとよ。大ジョッ――きではっ!?」

 深夜子たちのテーブルへ到着と同時に、梅の後頭部を全力ではたく。

「あっ、あっ、貴女方はここをどこだと思ってますのーーっ!?」


 五月があれこれと説教つき説明をして、しぶしぶと納得する二人であったが、時すでに遅し。


 すでに給仕ギャルソンたちからは珍獣扱い。

 本日、店内におけるカツ丼深夜子チャー定という不名誉な二つ名を獲得した瞬間である。


 ――結局、終始(周りが)落ち着かないディナーとなる。

 朝日が充分に楽しんでくれたとは思えず。帰り道、ハイヤーの中で一人どんよりと落ち込む五月であった。


◇◆◇


 帰宅後。

 なんだか、帰り際にこの世の終わりのようになっていた五月。

 それが気になってしかたない朝日は、就寝前に五月の部屋をおとずれる。


「………はい」


 ノックをすると、存在が消えてしまいそうなほど弱々しい五月の返事。これは重症だ。


「五月さん。いい?」

「あら……朝日様どうなされました? あっ、もしや何か今日のことでご不満でも……」

「えっ? いやいや違いますよ。五月さんが落ち込んでたから……その」

「まあ、朝日様に心配していただけるなんて、五月は幸せ者ですわ。うふふ……ふふ……ふ……はああぁ」


 限りなく棒読みな上に、最後はため息。うーん、なかなかにダメージが深そうな模様。

 ドアを開けても珍しく出迎えもなく、五月はテーブルに突っ伏したまま暗黒物質を生産中だ。


 これは、仕方ないか。朝日はそんな五月の背後にまわりんで――。


「今日はありがとうございました。たくさん気をつかって貰ってすごく嬉しかったですよ!」

 きゅっと、背後から両腕を首に絡みつけて抱きしめる。

「ふえ?」


 五月のうなじから、風呂あがりのよい香りがふわりと漂う。

 なかなかに照れくさいが、元気付けるためだ。

 朝日は、五月の耳元に唇が触れるか触れないかの距離で、感謝の気持ちを伝え――。

「おやすみなさい、五月さん」

 ――おやすみの挨拶を囁やいた。



「え? は? へ? あ、さひ……さま」

「あ、えと――そ、それじゃ!」


 やっぱり恥ずかしかった。混乱気味の五月をそのままに、朝日はそそくさと部屋を出る。


「あ」

「あああ」

「――――ああああああさひさまがああぁぁああっ!!」


 それから深夜まで、いや早朝まで、五月の部屋から歓喜の雄叫びと、愛の絶叫が響き続けることになった。


 

 ――もちろんご存知の通り。

「うるっせえぇぇぇーっ! てめえ、いつまで変な叫び声あげ続けてやがんだぁっ!? 今、何時だっつーの! ちくしょーめぇ!!」

 五月の部屋から、壁一枚隔てた隣りは梅の部屋である。

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