Chap1-6 第八方面本部攻防戦

女性刑事が氣恵を取り調べ室へ通す。


「お名前は?」

「斎藤氣恵。立川女子高の二年生…」


このやり取りをマジックミラー越しに見ていた岩田は「なんだって!!」と飲んでいたお茶を噴出した。ちょうどそこに或人からの電話が・・・


「おい、岩田。強襲班全滅したぞ!10匹ほど、そっちへ向かっている。

よほど存在を知られたのが許されないらしい。目撃者を殺すまでやめないつもりだわ。」


「それがな、或人。目撃者はお前の娘かもしれん…斎藤氣恵、17歳。そうだな!」

「なんだと!!そいつはまずい。ちょっと待て3分後に電話する」


それから1分待たずして或人から再着信が・・・


「岩田。今、取調室か?どこの部屋だ? もうお前のところに任せられる状況じゃない。俺らのチームをよこすから従ってくれ。」

「東館の2Fの北側だが、お前のチームっていったい何なんだ??」


そう言い終わるや否や取り調べ監視室の扉の手前が光りだした。

六角形の光が誘導灯よろしく大きなったり小さくなったりしながら点滅する。

その光の奥の方から「空間転送を開始します。二メートル以上離れてください。」

アナンスを三回繰り返すと六角形の光は1.5メートルほどの大きさになった。


その中から2メートルほどの犬顔の大男が現れる。

その後に続くのはありったけの銃器を抱えた60センチほどの小人が5人。


「主任!ついたぜ。オペレーションを開始する」

「お前が課長だな。悪いが、被害をこれ以上広げたくなかったら1Fにいる人間を全部避難させてくれ!コヨコヨ達は配置につけ!」

小人達はゴーグルを下げると浮かぶように移動して部屋から出て行った。


「しまった。端末忘れたぜ。すまないが、そのDell借りるぜ!」


唖然とした書記官のDellを取り上げると、犬顔の大男はSSDソケットに通信機と思われるものを差し込む。Dellの画面が10分割され、一階に分散した小人達の目線の映像がたち上がった。


「Dellで良かったぜ。俺の端末もDellなんだよ…

今AICの連中は、ほぼApple信者なもんでな」

「おっ、そうだった。自己紹介を忘れてたな、名刺は無いから口頭で許してくれよ。我々はAIC。Asteroid Belt Inner Consultantsの略だ。 

俺はそこの、戦術オペレーション担当、名前はバグスターだ。

ちなみに出身は、お前たちの呼び名で言うと小犬座プロキオンの惑星だ。

つまり異星人ってことな。」


「コヨ!来たぜ、分裂しろ!」

画面越しに小人たちが10人程度に分裂した小人達の映像が移ると正面玄関と東館南棟のガラスが割れた。

「打て!」


小人達の携帯した小さな銃から電光が走る。

「神経性電磁パルスガンだ!殺傷能力は無いが実弾より断然有効な兵器だぜ!」


大男は鼻歌交じりで画面を眺めている。正面玄関3匹、東館南棟2匹 東館北棟2匹、西館中央3匹が瞬く間に倒された。


「楽勝だな♪」と大男が言ったその時、西館の北、南側のガラスが割れ、そこから5匹づつ計10匹が西館1Fになだれ込んだ、背後を突かれた小人達の何人かが切り裂かれる。


「まずい!西館は廃棄だ。中央通路を使って撤退してくれ。

主任!ビルごと砲撃の許可をくれないか?」


Dellスピーカーより、「いいよ♪」の声が。


「おい!なんてこと言ってるんだ。」岩田が犬顔の大男を怒鳴りつける。


「大丈夫だよ。殺傷能力は無いって言ってるだろ!それにバリアを張るから・・・

ケイティ!東館のみ2F/3Fを空間プロテクト。

スターシップからビルごと半径100mに電磁パルスを打ち込んでくれ!」


「プロテクト完了!発射します。」

Dellから音声応答が帰って来るや否や、雷が落ちたような轟音と光に包まれた。


「コヨコヨ隊はウェイ人を捕捉! 即、単時空監獄へ転送してやりな。」

「はいよ、終わったな! そんじゃ俺は1階と外を見回ってから帰るわ・・・」


バグスターが部屋を出ていくと、再び或人から岩田へ着信が届いた。


「大丈夫だったか…始末書の筋書き作りは手伝うぜ。ところで娘の様子はどう?」


岩田はすっかり取調室を気にかけていなかったことを反省しつつ、背後のマジックミラーを振り返った、が、そこには誰もいなかった。

慌てて取調室に入るも、もぬけの殻だ。取り調べをしていた女性刑事もいない。


「或人・・・娘さんいなくなっちまった。取り調べをしていた刑事も消えた。」

「ひょっとして、女性刑事はホシに接触してないか?」

「あり得ると言えばあり得る。警邏隊惨殺現場に遭遇してるからな。」

「刺されたんだよ…毒を持っているんだ、奴らは。」

「刺されるとどうなるんだ。」

「催眠毒でな…注入した奴をラジコンみたいに操れる。そんな強烈なやつではないが、建物の外へ誘導するぐらいはできる。問題はどこへ誘導したかだ。」


「ちょっと待て、本部の警邏車両をGPSで調べてみる。」

岩田はタブレットを起動させて、のぞき込む 

「動いてるのがいるな…高松2丁目で停車した。確かお前の実家って大鳥神社のあたりだよな。」


「俺ん家だって!!

・・・いや、ギリギリ間に合うなら、まだ俺ん家の方が都合いいかもしれないな。」

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