第11話 予定外

 ゲンは贈り物を届けて、私達の反応を確認したらお店を出て行こうとしてた。

 三人で一瞬アイコンタクト――よし!


「待って! 今はお昼だし、一緒に……どうかな?」

「え?でも、三人でやる事があるんだろう?俺がいると邪魔しちゃうから、さっさといなくなった方がいいだろ?」

「「「 一緒に! 食べよ!! 」」」

「お、おう……。そこまで言うなら」


 こんな機会は滅多にないからね! 逃す手はない!!

 

――――――


 各々の食事を注文し終えると、三人の視線が交錯。誰が話を振るかで牽制し合っている。ぐぬぬっ……例えこの二人が相手でも、ここは退けない!

 ちなみに、座席は時計回りにカリナ、ラン、ゲン、私の四人で机を囲ってる。

 どの間に座るか考えている間にランちゃんが自分の左隣に席を用意してた。い、いつの間に……。

 カリナが悔しそうな顔を浮かべてたけど、ゲンが正面に座るとすぐに取り繕ったのもなかなかに早業だった。澄まし顔だけど、右手はずっっっとゲンからもらったネックレスに触れてるのは私もランちゃんも気付いてるからね?……えへへ。


「――――」

「痛っ! ラン、俺が何をした!?」

「――浮気者」

「なんで!?」


 あっ、二人でイチャイチャしてるぅ。いいなー。

 私もあんな風に気軽に触れ合えたらなー。


「コホン! 兄妹で何をしているのかしら?ここは公共の場よ?そういった行為は慎むべきじゃないかしら?」

「――嫉妬?」


 あっ、ランちゃんが分かりにくいけど少し口角を上げた。

 カリナに対して優位に立ってるから余裕があるみたい。これ見よがしに腕に抱きついてるし。さっき色々言われたことへの意趣返しかな?

 カリナはその姿に憎々し気な視線を送ってる。なんだろう……こう言ってはなんだけど、負け犬感が漂ってる気がするんだよね。


「ラン。折角仲良くなれた大事な友達なんだ、大切にしないと駄目だぞ。カリナ。ランも友達と一緒で珍しくはしゃいでいるんだ、多少の事は大目にみてあげてくれないか?リルファは二人の仲裁で大変だろうけど、根気強く付き合ってあげて欲しい」


 ………ううーん?ゲンが二人の保護者みたいになっちゃってるなぁ。

 二人も睨み合いを止めてゲンを視線で射抜いてる。

 心なしか、ランちゃんは「子供扱いするな!」って訴えてるように見える。拗ねてるようにも見えるから、照れ隠しかな?

 

「あはは……二人とも良い子だよ。ゲンが思ってるよりもしっかりしてるし。ランちゃんはちょっと抜けてるとこもあるけど。それでも、言いたいことははっきり口にするし、こうと決めたらやり遂げる強さもあるよ」

「――……ふふん」

「カリナは逆に、普段は冷静でしっかり者って印象を持たれるけど、話してると意外と乙女な面だったり、弱気な面もあって。だから、ゲンも接する時はもう少し優しく接してあげてね?幼馴染とはいえ繊細なんだから」

「まあ……なに。ありがとう」

「そうなのか。これからは二人と接する時は気を付けるよ」


 ランちゃんもカリナも、照れて俯いちゃってる! 乙女だな~。

 あれ?二人がこっちを見て……


「「リルファも!」」

「わ、私!?」

「――相談したら真剣に考えてくれる」

「そうね。誰よりも真剣だったし、私達に気を遣ってくれたりもしたわ」

「そ、そうかな?」

「――でも、自分のことは後回し」

「ええ。私達のことに気を配ってばかりで、自分のことは後回しにしたり、今も一歩引いた位置から私達の背中を押してくれたわ」


 二人も私のことを見てくれてるんだー!

 えへへ……嬉しいなぁ。


「でも、私達は対等よ。これからはもっと自分の事を考えて、自分をもっと出しなさい」

「――戦友だけど、ライバル」

「二人とも……」


 剣の腕では全然歯が立たないけど、二人は対等な存在として見てくれてるんだ。

 き、気恥ずかしいけど、誇らしいな。これが友情なんだね!


「えっと……とりあえず、料理がきたから食べようか」

「あっ、一人でやらせちゃってごめんね。食べよっか!」


――――――


 結局、食後のティータイムまで一緒に居てしまったな。

 申し訳ないって思うけど、外でのランのリラックスした姿が見れてよかった。


「ただいま」

「おう! ゆっくり出来たようだな」

「うん。良い気分転換になったよ。――そうだ。今日はラン、帰りが遅くなりそうだったよ」

「おん?会ったのか?」

「ああ、リルファとカリナと一緒にカフェにいて、昼食は同席させてもらった」

「……修羅場じゃねえか」

「ランにも気の置けない友人が出来たみたいで嬉しかったよ。ただ、時折カリナと衝突するのは見ていてちょっと不安を覚えたな。リルファが心労で倒れないといいんだけど」

「……これはリルファ嬢が一歩リードか?」

「伯父さん、何か言ったか?」

「いや、なんでもねえよ」


 伯父さんに白けた目で見られたけど、俺が何かやらかしたのか?報告したくらいで、何もしてないと思うのだが………


「ま、気分転換出来たならいいさ。明日からまた頑張れよ!」


 それだけ言うと伯父さんは仕事場に戻って行った。

 ………やっぱり気になる。なんで白けた目を向けられたんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る