第3話 デートからの…?

 デートですよ!デート!!

 こんなにあっさりと受けてくれるとは思っていなかったので、望外の結果です!

 リーダーには感謝しないとですね!!


「それで、どこに行くんだ?」

「アクセサリーを見に行こうかと。その……男性の目線からアドバイスを貰えたらなって思ってます。いいですか?」

「俺でいいなら構わない」

「っ! ありがとうございます! 早速行きましょう!! こっちです!」

 

 私はこの日知りました。

 恋の駆け引きとはこんなにも難しいのかと!



「これ、可愛いな~。どう思いますか?」

「可愛い意匠だが、もう少し重さがあった方がいいんじゃないか?戦っている時に外れたら大変だろう?」

「……実用性重視じゃなくてもいいのに」


 私のことを思っての発言だとは理解できますが、もう少し乙女心を分かって欲しいです。

   

「ん?何か言ったか?悪い、聞えなかった」

「何でもありませんよ~。次に行きましょうか?」

「さっきのは買わなくていいのか?」

「う~ん、ちょっと私の好みから外れてたから保留です」

「そうか。次は?」

「次もアクセサリーを見るつもりです。ダメですか?」

「今日は一日付き合うと約束したからな。問題ない」

「……私だけ意識してるのは不公平な気がするな」


 本人は単なる買い物程度の認識なのでしょうね。

 こ、恋人とまではいかなくても……もうちょっと、女性と行動を共にすることの意味を理解してほしいです。


「ん?」

「なんでもありません。さあさあ次に行きますよ。時間は有限ですからね」

「うん?まあそうだな。時間は大切だ」


 男性は鈍感というのは本当なんですね……


「こっちとこっち、どっちがいいですか?」

「左の指輪は補助魔法が練られているな。右のブレスレットの意匠は好みだが、ただの装飾でしかない。選ぶなら左だろう」

「………はぁ。わかりました、右にしますね。買って来るので外で待っていてください」

「え?俺は左の方が……」

「右の方が好みなので右にします、ね?」

「あ、ああ……好きな方を選んだらいい」

「ありがとうございます」


 実用性重視なのは分かりますが、もう少し、相手の意図を汲んでくれないものですかね?


「――それで、これからどうするんだ?」

「このあとは服を見ようかと。私服と戦闘衣装をそれぞれ二着くらいは買っておきたいので」

「俺は外で……」

「一緒に見て回りましょう、ね?」

「……わかった」


 先程の一件で分かっていますよ。

 意外と押しに弱いことは!


「これはどうですか?」

「いいと思うぞ」

「こっちはどう思いますか?」

「似合っているよ」

「この服、派手過ぎますか?」

「目立ちはするかな」

「これはちょっと露出が多いですかね?」

「これくらいなら許容範囲じゃないか?」

 

 服選びでは少し考えを改めたのか、こちらの意図に少し合わせたことを言ってくれました。そういえば、最後らへんは視線を外してたな~。

 次回はもっと恋人らしく振る舞えたらいいなぁ。


 でも、ふふっ……似合ってるって言ってもらえた!



「今日はありがとうございました。私の我儘を聞いてもらって」

「いや、良い息抜きになった。こっちこそ感謝している」

「………また、誘っていいですか?」

「ああ、予定が合えばいいぞ」


 おかしいな。デートの約束をしているはずなのに気付いてないのかな?

 とにかく、意識しているのは相変わらず私だけなのね。


「それじゃあ、また明日」

「ああ、気を付けて帰れよ」

「はい。ゲンもね」

 

 ……よく考えると私より一歳年下なんだよね?とても年下には見えないな。

 言葉遣いのせい?それとも雰囲気?どっちもな気がするな。

 とりあえず、これからもアタックしていかないと!

 他の人に取られないように。






 久々に外を出歩いて良い息抜きになった。リルファとヨハンさんには感謝しないとな。

 思っていた以上に根を詰めていたようだ。

 しかし、女というものはよくわからない。性能よりも見た目を取るとは。

 俺には理解……考える必要はないか。俺の仕事は武器を研いで防具を磨くだけなのだから。



「お?もう帰って来たのか。夕飯はどうした」

「済ませてきた。仕事は残ってる?」

「今日はもういい。明日からまた働け」

「そうだ。伯父さん、ヨハンさんのパーティーの武器と防具の整備を頼まれたんだけど、受けるか?」

「自分で請け負った後で俺に聞くんじゃねえよ。……ちと面倒だが、仕事が増えるのは職人としてありがたいからな。受けてやるよ」

「わかった。明日工房に来るって言ってたから、その時に言うよ」

「次からは俺に確認してからにしろよ?」

「気を付ける」

「それで、嬢ちゃんとはどうだったよ」

「どうって?」

 

 こいつは……嬢ちゃんも苦労しただろうな。

 この朴念仁が相手じゃあなぁ………もっといい男がいるだろうに。


「お前の育て方を間違えたか?」

「……何かミスをしてたか?どこだ?」

「いや、なんでもねえ。とりあえず、お前は男女の色恋をもうちょっと理解した方がいいぞ」

「なんで伯父さんにそんなことを言われないといけないんだよ」

「俺から見て全然なんだからな、他の人間が見れば一目瞭然だ」

「あなた! ゲンをいじめるのも程々にね?ゲン、今日のデートはどうだった?」


 ゲンに説教をしようかと思っていたら、妻のクレアが来てしまった。

 虐めてたわけじゃねぇんだが………


「普通ですよ。アクセサリーや服を見て食事をしただけです」

「あらあら、初めてのデートで服まで見に行ったら脈ありでしょ。向こうは意識してたと思うわよ?」

「そんなものですか?でも、早とちりは嫌なので意識はしないでおきます」

「次のデートの約束はあったの?」

「ありましたが、未定です」

「これはもう決まりでしょ!」

「そうですか?俺はそんなふうには感じませんでしたけど」

「あなたの感覚はアテにならないわ」


 ハッハ! クレアが一刀両断しちまったよ!!

 まあ、同意見だが。


「恋愛のれの字も知らん素人だからな」

「これで俺だけ意識してたら超恥ずかしいだろ?」


((あ、これはあれだ。恋愛初心者が陥る典型的な思考の罠だ))


「「とりあえず、これから頑張れ」」



 なぜだろう、伯父さんも小母さんも生暖かい目で見てくるのだが……

 はあ、明日からまた仕事をしていくとしよう……断じて現実逃避ではないぞ?

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