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それは
「ただいまー」
「あー、お姉ちゃんおかえりなさい」
店に入るなり華士が帰宅の挨拶を口にすると、簡素な勘定台から誰かが外出から戻った者に対する挨拶を返してきた。
店内には本棚が四つあり、並べてある本はあまり多くない印象を受けた。
本を広げてそこで店番をしていたのは、華士と同じく白髪だが少しだけ黄みがかった肩まで長い髪の毛をした女の子だった。
顔の幼さからして、俺より年下に見えた。その子は華士の後ろについてきた男二人を見て、少しだけ目を丸くしたようだったが、すぐに表情を引き締めた。
「月見。今日からもう、店番しなくていいわ」
「え?」
華士の言葉に女の子、月見は驚いた顔をみせる。
「あなたは勉強に集中しなさい」
「どうして?」
「新しい人が増えたから。しかも二人」
そう言って、華士が笑顔を作った。
月見は雲雀と竜人を一瞥する。
「この人たち?」
「そうよ」
月見は雲雀たちのことを警戒しているようだった。
突然二人も連れて来て、あなたは首よと言われたら彼女だって精神に衝撃を受けるだろう。華士は何を考えているのか。
「お姉ちゃん、いきなりそんなこと言われても困るよ。どこの誰だかわらない人を。しかも二人もうちで雇うなんて。あたしは嫌だ」
「我がまま言わないの。月見、今年は受験もあるから店を手伝わなくていいようにって。二人は私のお願いを快く引き受けてくれた優しい、良い人たちなの」
華士の言い分には少しだけ嘘が混じっているように思える。
「あ、あたしは認めないから」
そう捨て台詞を吐いて、月見は店の奥へと消えていった。怒っている様子だった。
華士が仕方なさそうに嘆息を漏らした。
「今の子は?」
雲雀は落胆している華士に質問を投げかけてみる。
「私の妹の月見です。何だか難しい子に育ってしまって。しっかりしてて頼りがいがあるんですけど」
店の奥を見つめながら、華士が答えた。
華士と月見の会話を聞くに、彼女は月見に店の手伝いをしてほしくないようだった。月見には勉学に集中してほしい、その思いもあって華士は雲雀たちのような働き手を探していたのかもしれない。
竜人が突然、先ほどまで月見が座っていた場所に座った。
「俺はここで、こうしていればいいんだな」
「あ、はい。一応事務所のようなものは二階にあって、私は基本そこに居ます」
「そうか。ところで、まだ名乗っていなかったな」
「あ、そうでした」
思い出したように華士が言う。雲雀も忘れていた。
「俺はチトセ・ヒ・リイヤ」
「私は
二人が名乗る。雲雀も一呼吸おいて、名乗った。
「俺は
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