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シーン1

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___歌を聴かせましょう。ある普通の家庭に産まれて、普通に壊れた少女の歌___

 

 光が囁きかける。

 ぱたぱた羽ばたく羽音と光。

 

 a___私たちは妖精___

 

 b___少女が産み出した妖精___

 

 c___妖精ですから___

 

 d___歌しか唱えない___

 

 e___少女の歌___

 

 姿なき妖精の音と光が暗闇を導く。

 

 f___祝福___

 

 g___無垢___

 

 j___Happy Birthday___


 k___羊水___

 

 l___胎児___

 

 m___Since Born___

 

 脳内だけに響きわたるシンフォニア。

 祝福するかのように瞬く光。

 

 n___お母さんは泣いた___

 

 o___お父さんは嗤った___

 

 p___女の子___

 

 q___体液を拭われて少女は哭いた___

 

 r___オギャー___

 

 s___オギャー___

 

 t___オギャー___

 

 1匹の妖精が紫に染まった。

 言葉が彼女を妖美に染めた。

  

 u___歩く頃には向日葵に___

 

 v___素敵な声は瑠璃小石___

 

 o___もっと聞かせろ___

 

 w___哭け___

 

 x___喚け___

 

 y___赤を見れば思い出す、俺のことを思い出す___

 

 z___土を呪え、水を呪え___

 

 終わるはずの歌が書き変えられる。

 塗り替えられる憎しみと絶望の色に。

 

 w___知ってるか? メスの2割は身内に穢される___

 

 x___覚えてろ、忘れるな。お前は穢れた___

 

 y___俺が穢した、さあ笑え___

 

 z___悔しい?___

 

 a___死にたい?___

 

 m___屈め___i___愛してる。___p___開け___w___眠れ___t___喰え___g___飲め___d___笑え___逝けない___晴れない___月は肌色___神様__救えない__掬えない__巣食う__怖気__少年____怒り___刃物___糸___棘___死ね___PIERROT___煙突____なみだ___振り子___金___死のう____忍び____死のう__死のう__

 

 狂い跳ぶ妖精たちは互いに互いを傷つけ、流す。

 

 すべての妖精が紫に染まる。

 紫に染まりきった妖精たちは、"色"に敗れて身を焦がす。

 歌うように悲鳴をあげて、死んでいく。

 死んでいく。

 死んでいく。

 

 死んでいった妖精の白い血が雨になる。

 白い血が満たし、やがて零れる______

 

 

 

 

 

 

 

 暖かい雨。

 浴びれば気持ちのいい雨。

 流せすときは辛い。

 雨は雲の涙だって教えてもらった。誰かに・・・

 

 熱い・・・

 熱い・・・!

 

 「熱い! 英枝!」

 

 「大丈夫、沸騰してないから! 日本茶を淹れる温度ですから!」

 

 初瀬川家の朝の風物詩。

 何時までも夢の中にいる姉・壬空に。

 夢中で熱湯を浴びせる妹・英枝。

 

 「良い夢見れた? お姉ちゃん。」

 

 「夢見ヶ崎パンチ!」

 

 「ギャァァァァァ。」

 

 二人の家。

 初瀬川姉妹は有名人。

 仲の良い姉妹として、皆に愛されている。

 

 何時でも一緒、一緒に学校へ通い、待ち合わせて一緒に帰る。

 大学生の壬空と、高校生の英枝。

 休日の今日も一緒。どこでもいっしょな姉妹なのである。

 

 「ごめん、英枝。今日は。」

 

 「・・・・・・男か。」

 

 壬空は有名人。

 キャンパスのマドンナとして、皆に愛される。

 英枝もそんな姉を誇らしく思うが、

 寂しくも思う。

 

 「マカロン買って帰るから!」

 

 「八幡(はちま)さん?」

 

 「・・・とは別れた。」

 

 「ビッグバン!」 

 

 恋多き女の子・壬空。また別れ多き姉・初瀬川壬空。

 最短記録は15分。

 告られ、オッケー。顔を見返すと鼻毛が1本出ていたのに気づき、大爆笑。破局!

 妹・英枝の放った宇宙大爆発的ローキックを防ぎながら、壬空は今の彼氏に連絡。

 

 『今日は妹と戯れます』と。

  

 「これで私の元義兄は8人か。いいよ、私も義弟を10人作るから。」

 

 「舎弟の間違いでしょう。ジァイアニズムな妹、ジャイ子。」

 

 「プルルル・・・もしもし隣のクラスの門川君、パン買ってこい。ってやるかぁ!」

 

 「ノリツッコミ?」

 

 「ブイブイ、ノリツッコミ。」

 

 ピースをするピースフルな笑顔の妹に、この子に彼氏が出来ない訳を悟りだす。

 そうか、馬鹿だからか。

 

 「お姉ちゃん、ランチに行こう乱痴気騒ぎに行こう。」

 

 「朝食を食べたらね。」

 

 今日も快晴、お天道様は3日連続顔を出す。

 記録的な猛暑日になるとお天気お姉さんが言ってたかな?

 壬空は情報収集のためにテレビをつける。

 ご飯当番の英枝は、キッチンへ。

 

 こうして、初瀬川姉妹の休日は始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の日記・壬空

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ! 男よ滅びろ!!

 

 消しゴムを咽に詰まらせて死ね!

 

 手首を切るために剃刀を買ったよ、奴の手首を切るなぁ!

 

 私は今日、八幡君に振られました。

 

 いや、振りました。

 雨が。私が浴びせた言葉に八幡君は号泣。

 私、ドン引き! お前は役者かよ! 映画でも泣く男は嫌い。

 

 キッカケは、一緒に観に行った「なんたらかんたら」覚えてないけど、下らない恋人が余命少しの恋愛映画。

 お前、アホ?

 私は心の中でそう呟いて、裏アカで呟いて。

 『ずっと観たかったんだよねー。』

 恋人が死ぬ映画をデートで選ぶ愚物に私は絶望戦線まっしぐら!

 案の定、爆睡する私と号泣する八幡君。

 感想を聞かれて、

 『どうせ死ぬなら、溺れ死ねば面白かったのにー。死体が鮫に喰われて、叫びながら鮫を抱き締める男も死ぬ。ハッピーエンドだねー。』

 と、素を出してしまい昨夜、英枝モンが借りてきた『ジョーズ』の話を振ると・・・・・・

 

 はい、振られた。

 

 

 

 

 さよなら、バタフライ。

 バタフライ、今日は今までの、どんな君より素晴らしい。

 

 ロマンチストは私に合わねえ。

 ほら、アヒルの子はアヒルって言うじゃん?

 産まれて初めて観た映画が「シャイニング」だから、

 私はミソラ・ニコルソン。

 その妹は、ハナエ・ホプキンス。 ジンギスカンの沈黙に育てられた。

 今日の晩御飯、焼肉にしよう。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 P.S.

 ミサイル撃ってみろよ、北○鮮!

 こっちにはアメ○カ様がついてるんだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『外出は控えてください!

 ミサイルです! ミサイルが日本領土に撃ち込まれました!

 昨晩未明、日本国領空に突如侵入した未確認飛行物体により、東京都八王子市が爆撃された模様です!

 良かった! 私は杉並区在住で! 大学生くらいしか死んでないですよね! 良かった!

 皆さん、焦らず近隣住民の方と協力して、出来るだけ地下に逃げてください!

 私は、彼がメジャーリーグに行くのが決まったので国外に逃げます!

 さようなら! 以上、成田空港からでした! ニュース終了!』

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・。」

 

 「・・・・・・わあ、やっぱりこのアナ、大滝くんと付き合ってたんだぁ。」

 

 ニュースを見ながら朝食を取っていた初瀬川家、いや全日本国民の朝食の席に、とんでもない情報が落とされた。

 ミサイル?

 ついに国内に?

 八王子市って都内じゃん!

 

 おそらく、近所の住民も同じニュースを見ていたのであろう。

 「逃げろ!」

 「地下鉄だ!」

 「海外よ!」

 

 と、叫びが聞こえた。

 

 「お姉ちゃん・・・どうしようか・・・」

 

 静かに状況を整理しようと壬空はチャンネルを変えるも、何処のニュースも同じ内容・・・

 

 『わかっている被害者は、次の方です!

 大町崇

 内田篤子

 俵曜子

 ______

 ______

 相上太一』

 

 「え?」 

 

 読み上げられる被害者、被災者。

 そのなかに知り合いの名前が呼ばれた。

 相上太一。

 

 壬空が初めて付き合った相手であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の日記・英枝

 

 

 

 

 また振られたんだってお姉ちゃん。

 ねえ、お月様。

 星を降らせて。

 振った男は、ミサイルで吹き飛ばされちゃえばいいのにね。

 

 お姉ちゃんを傷つける奴はみーんな。

 星屑になっちゃえ。

 

 私は成虫になったパンデモニウムちゃんに乗って後を追うよ

 追撃の手を弛めるなー!______

 

 

 

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