第34話 悪魔狩り

外見がトカゲに変身している赤城はいつの間にか、大きな集団のリーダーになっていた下水道や地下鉄などに隠れ住んでいるのだが、その頭脳は変身後も変わりなかった。


彼はまだ人間に戻ることをあきらめてはいなかった。事ある度に「神の肉を食え、神の血をすするのだ。そうすれば人間にもどれるぞ」そう叫んでいた。人間に戻れるという噂は、世界中の悪魔に変身した者達にあっと言う間に伝わった。あちらこちらで悪魔は集団化して、神々をねらい始めたのだ。


ある時、ヨーロッパの教会に住んでいた愛くるしい子どもの天使を、厳重な警護をぬって、十人ほどのコウモリやゴキブリ、狼などに擬態した悪魔達がおそった。警備の人間が駆けつけたときには、悪魔達が天使をバラバラに食いちぎって、その肉を食べている最中だったのだ。


その時テレビ局の撮影隊がその姿を撮影した。警備員達は、教会の中で天使がおぞましい姿の悪魔達に喰われいてる姿を見てヒステリー状態になった。教会の中で散弾銃をぶっ放し全ての悪魔達を撃ち殺したのだった。


その一部始終がユーチューブでアップされた。この映像は世界中に衝撃を与えた。ハルマゲドン到来と全てのメディアが声高く報道した。今世界は、神の出現で奇跡的な平和を迎えているのだ。神のウィルスによる死亡者はまだ出ていない。もし死亡者が出始めても今の科学ではウィルスさえ発見できないだろう。


戦争も終結し、悲惨な病気が今のところはないのだ。こんな天国のような時が来ることなど人類は考えたことがなかったのに、現実にやって来たのだ。最初は半信半疑な人々も大勢いたが、今では神の時代であることを疑う者などいなかった。


しかし、はっきりと悪魔が敵であることを認知したのだった。悪魔は神を狙っている。悪魔はこの世をまた不幸な地獄へ舞い戻すために出現した。そう全ての宗教者は熱く叫びだしたのだ。遂に本格的な悪魔狩りに各国は動き出した。


神は放浪というウィルスをばらまく作業をまだ続けているが、狭い地域ではその任務が終了して、放浪せずに教会や聖地でとどまっている者達も多かった。彼たちは座禅を組み、または横になり命の終わりを静かに待つだけなのだ。


人間たちは、軍隊を総出動して悪魔狩りに行動を起こした。悪魔たちも必死だった。しかし人間たちは悪魔たちの攻撃に容赦はなかった。軍隊は、今ある最強の武器を装備して、悪魔のすみかを攻撃した。


戦車や、火炎放射器、さらにはジェット機やナパーム弾など全く容赦をしなかった。悪魔達は、一方的にやられてはいなかった。変身の時に得た特殊能力が人間の攻撃をうち破るときもあった。


武器を奪い逆に、軍隊を滅ぼす悪魔達が出始めたのだ。何せ、爬虫類や、昆虫、動物の能力は超能力に等しい。最新の科学力を誇る軍隊さえ、裏をかかれるのだ。


世界中は増え続ける悪魔達に翻弄され、少数の神をおそわれては殺されてしまった。神の能力は悪魔達をうわまわっていて、そう簡単には悪魔の餌食にはならないのだが、役目を終えた神々は何故か無抵抗なのだ。何も抵抗せずに目をつぶつているだけだった。


神は666人以上増えなかった。それどころか、悪魔の襲撃であちらこちらから、殺され食べられた者が少しづつ出てきた。悪魔は確実に増え続けているのだ。人類はこの事態に恐れおののいたのだ。

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