第19話 帝釈天
立木はにやりとした。ゾクゾクするのだ。
「やりやがったな・・・」
部下の銃を取り上げると、いちばん奥にある専用エレベーターに乗り込んだ。ここだけは、プッシュホンのようなボタンが付いている。所長室への暗証番号を打ち込む。
「まってろよ」
立木は所長室へエレベーターに乗り込んだ。ドアが開く。通路の突き当たりが会長室だった。
「ほほう、役者は全部そろっているな」
臭いでわかったらしい。つぶやきながら、無造作にドアを開けた。広い客室には、会長の乱造と、生意気な赤城がソファのすみに座らせられている。
そして、会長の椅子には、真が悠然と座っている。まわりに、筋骨たくましい男達が10名。子供が3名。女が2名いた。ドンと来る威圧感がある。
「遅かったな、阿修羅」
真は立ち上がる。
「私達が誕生するからには、必ずお前も蘇ってくると思ったぞ」
阿修羅と呼ばれた立木は、ニヤリとした。
「おうさ、帝釈天。5千年前の恨み、必ずはらしてくれようぞ。他の神々も勢揃いだな。不動明王、金剛夜叉妙王、孔雀明王、愛染明王、おう、弁財天に吉祥天。
うっわっはっはっ、懐かしいぞ」
乱造と赤城は唖然とした。立木がまるで別人のようだからだ。阿修羅と呼ばれた立木も進化種だった。ただ、純血種ではなく、人間との混血である。
ふつう進化種は人間と交尾しても、その遺伝子は不活性のまま終わるので発覚ほとんどない。もちろん、進化種達は厳しい戒律の中で暮らしており、寿命が短いので人間と接することは非常に少ないが、恋に落ちた男女は駆け落ちして種から離れることもある。
立木はそんな祖先を持つ一人だったのだ。ただ、人間との交配種は、まれに突然変異を起こすのだが、劣性の面が強く出てしまう。鬼だとか、夜叉、妖怪のたぐいは彼ら達なのだ。
だが、この阿修羅と呼ばれた立木は違っていた。性格以外は進化種と同じ能力を持っているのだ。全世界に、何人か存在していた。
サタンもそうである。まさに堕天使なのだ。遥か何千年か前、この阿修羅達は神、仏と呼ばれている進化種と戦った。そして滅んだはずであった。
しかし、進化種が復活すると、必ず阿修羅、堕天使達も復活するのだ。プラスとマイナス、陰と陽、光と影、遺伝子の2重螺旋。これこそ地球生命が持つ、大きな謎の一つである。
阿修羅と帝釈天はにらみ合っている。不思議な圧力に空気は熱く火花を散らしている。なんとプラズマが発生しているのだ。
これから、何が起こるのか。誰も想像は出来ない。地球はこれから新しい局面を迎えているようだ。
進化種の本当の意味と、阿修羅の存在。
神と悪魔の戦いが再び始まってしまった。
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