第12話 戦闘
黒づくめの衣装は、全て防弾加工がしている。暗視眼鏡、サイレンサー付きの銃、サバイバルナイフ、帽子に仕込んだ通信機器。完全武装である。
立木と超能力者は、後発部隊として残ることになった。超能力者と言っても、軍人ではない。まして今回は精鋭部隊を作っている。沢田と紀子は足手まといになる可能性がある。状況次第では出て行くが、それまではここで待機しとく事にした。
荒木と攻撃隊員3名は、素早く寺の門まで駆け込んだ。門から本堂まで20メートルほどある。2手に分かれ左右から進んでいく。
右手の隊員がガラス窓を発見し、ガラス切りで小さな穴をあける。小型ガス弾のスイッチを入れて投げ込んだ。昏睡ガスである。同じように荒木も小型ガス弾を本堂に投げ込んだ。
隊員は防御マスクをいっせいに付ける。この本堂の大きさなら30秒あればガスは充満する。タイミングを見計らい、左右から同時にガラス窓を割って侵入した。中に転がり込んだ4名は、柱の陰に身を潜めしばらく様子を見る。
荒木の合図とともに、奥へ進んでいく。
その時各隊員に、同時に独鈷杵が降ってきた。
ヒュー
独鈷杵には法具としての飾りが付いている。 それが風を切る音を出す。後続の武田隊員が狙われた。武田は間一髪で転がり避ける。
避けたところへ無音の独鈷杵が時間差で飛んできた。最初の攻撃はおとりであった。天地一族独特の攻撃法だ。
前回の報告で、2段構え攻撃の報告は聞いていたが、聞いただけでは反応できない熟練度だ。武田隊員の肩と太股に錐状の独鈷杵が突き刺さっている。荒木達は攻撃を避け左右に散らばる。
転がりながら距離をとり、中腰になり体勢を立て直すと同時にめくらめっぽうサイレンサーをぶっ放した。
プスッ プスッ プスッ
「表へ出ろ」
荒木は、叫びながら侵入した窓から外へ飛び出した。地面を転がりながら木陰へ飛び込んだ。インカムのヘッドセットのスイッチを入れる。
「1名負傷」 素早く立木に連絡をする。
逃げ遅れた有田隊員は、じっとしている。 いつ襲われたかわからなかったが島田隊員はとどめを刺されているようだ。有田はサイレンサーを右手に構えガラス窓へにじり寄った。
ヒュー
先ほどと同じ独鈷杵が飛んできた。飛んできた方向へサイレンサーを撃つ。撃ちながらさらに前へ飛び込んでいった。転がりながら暗視眼鏡で人影を一瞬確認する。その方向へサイレンサーを再び撃ち込む。有田の見事な反撃だった。人影は音を立てて倒れ込んだ。
銃を構えた腕へ鋭い回し蹴りが飛んでくる。有田隊員は銃をはじき飛ばされた。連続技で肘が顔をねらってくる。のけぞりながら金的を蹴り上げる。決まったと思った瞬間、背後から首筋に独鈷杵がズンと差し込まれた。二人がかりの攻撃だったのだ。
有田隊員はがっくりと沈む。沈むと同時に大爆音とともに自爆した。有田隊員が自爆用のスイッチを押したのだ。予想もつかない一瞬の出来事だった。
白煙が消え去ると、3名の肉片がまわりの柱にこびりついていた。
外に逃れていた荒木は、爆発音を聞くとすぐ連絡をいれる。
「立木隊長、不明1名が自爆しました」
「よし、その場で待て」立木達は行動を開始した。
荒木は3名に囲まれているのを感じている。いきなりの反撃と被害の大きさに、荒木は動揺している。相手は修行しているといっても民間人である。作戦はたやすいと踏んでいたのである。
それがこのざまである。脂汗が額から噴出している。周りの気配はじわりとその輪を縮めている。荒木は銃を構える。左手には手榴弾を握っている。
ピンを抜いてその場に置き、右へ飛び出した。ヒューという音が追いかけてくる。その先へ無音剣がセットで飛んでくる。単純な攻撃だが、その効果は大きい。無音剣がどこをねらっているのかは賭である。
おもいっきり右の木陰へ飛び込む。さっきおいた手榴弾が爆発をした。
「ぐっ」という声がする。
只の手榴弾ではない。中に何万本かの針が仕込まれている。汚い恐怖の仕掛けだ。
これで一人やっつけた。息つくまもなく、木陰から飛び出して荒木は走り出す。二つの影が両側についてきた。いきなり立ち止まり、サイレンサーを右手の影へ打ち込む。
プスプスという連続音が響く。
左の影が飛び込んできた。月の光で刃物が光る。日本刀だ。むき身の日本刀を腰だめにして突っ込んで来る。こいつらは恐ろしい。いつも捨て身である。捨て身でかかってくる奴ほど怖いものはない。さらに狼のような素早さで加速がついている。
まるで死に神が、飛びかかってくる恐怖を覚えた。その死に神の影を、銃で撃っても俺は串刺しになるだろう。さらに右の影もすぐそこだ。
死を予感した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます