第四〇八節:晩秋。

そんなつもりじゃなかった。確かに最近はあまり喋れてはいなかったけれど、たまにするデートのときくらいは聞きたかったのだ。彼の――悠大の本音の「好き」が。


***

数日後、千秋の親友の望帆みほからメールが来た。何かと思い開くとそこには、

『別れたんでしょ、千秋から聞いた。千秋すごい悲しそうだったよ。散々泣いてたんだけど、やっぱり悠大のことが大好きだ、って。千秋が冗談で別れ話を切り出して、それをどういうつもりで了承したのか知らないけど、関係直すなら今のうちだよ』

というようなことが書かれていた。

死ぬほどどうでもいい、俺の感想はそれだけだ。

自分から別れを告げておいて、今になって泣くなんて面倒くさすぎて反吐へどがでる。優しく接した方が自分に都合がいいしそこまで俺も最悪な性格をしていない――と自分では思っている――ので、一応彼女にメールだけ入れておく。

『千秋へ。望帆から全部聞いたよ。本当にごめん、俺、千秋に別れよって言われて、自信なくしちゃったんだ。君が俺のこと好きじゃないなら、別れた方がお前のためじゃないか、って。また明日、ゆっくり二人で話そう。

千秋の知り合い、悠大より』

俺は、今日もまた息をするように嘘をつく。

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