第二〇六節:晩冬。
「――やっぱり、なんでもない。じゃあな」
「待って! 私は、
鈍い音が響き、俺が地面に倒れたのはその
***
冬の終わりはいつもはっきりしないものだな、と思う。
頭に巻かれた包帯がきつく、少々頭痛も感じる。頭の芯が重く、だるい。――なにか、楽しいことないかな。なんて楽観的なことを考える自分は、きっと心が酷く
「こんにちは」
やわらかい声が聞こえて、自然と心が安らぐ。その声の主は、
「何しに、きたんだよ」
「え、お見舞いしかなくない?」
明るい口調で答える彼女の無神経さに、腹が立つ。
「誰がやったと思ってんだよ」
「え、だって……悠翔君が、いきなり倒れて……」
「そんなこと――!」
ある、かもしれない。彼女の一言で、歪んでいく。
そもそも、何故紅音のことなんて疑ったのだろう。
彼女が、そんなことするはずがない。自分に言い聞かせるように――そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます