第十三話【総理大臣にものを言われる男・加堂官房長官】

「加堂さん、『核保有国を刺激するな』と政治家が言うのは間違いだ。私は『非核保有国は核保有国からどう身を護るか』と問うたが、まさかあなたの解は『核保有国に貢ぎ物を差し出し服従する』じゃないでしょうな」


「だっ、断じて違う」


「『貢ぎ物』の部分を『経済支援』や『経済協力』に言い換えるのは無しだぞ」


「そうではないっ、ただ刺激するなと——」


「同じだ。刺激すらいけないのなら非核保有国は核保有国のご意向を聞くことしか許されない奴隷国家となる。これでは核保有国に核放棄させるどころか益々増長させてしまう」


「刺激しても良いと開き直る気ですか⁉」


「それがダメだと言うのだ。今我々が考えるべきは核保有国に非核保有国がどう立ち向かうか、私はそういう方向の答えを求めている」


「立ち向かうだって? 国民の生命と財産はどうなる?」


「そういう理屈を言うと『じゃあ生命と財産を護るため我が国も核武装しようじゃないか』という意見に追い風を吹かせる結果となる。結果的に核拡散だ」


「……」

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