第8話 実感

落ち着きを取り戻したあとも、耳から離れない彼の声と後悔で


胸が張り裂けそうで、泣く日々が続いた。


そんなある日、一本の電話がきた。


携帯を見ると、画面に映っていたのは彼の名前。


動悸がした。死んだはずの彼から電話?ありえない、生きてたの?


いろいろ考え、電話にでた。


彼の声ではない、男性の声がした。彼の父親だった。


私は、冷静に話をしながらも腹ただしかった。


あのとき、あなたが電話に出てくれていたら。彼を止めてくれていたら。


そんな気持ちでいっぱいだったが、そんなことは言えなかった。


私と話したいのは、父親ではなく母親で、電話を変わった。


彼は、父親と2人暮らしだった。母親は別居していてほどんど会っていなかった。


そんな母親は、息子の死をどう思ったのか。


彼の母親に、彼が死んだ日のことを聞かれた。


全て話そうとしたが、途中で遮られた。


「もうそんな話しないで!」と怒鳴られた記憶はあるが、他に言われた内容は覚えて


いない。


父親に電話が変わった。


離れていてもやっぱり息子は息子。私は、その息子を殺した。


父親は、また何かあったら電話するといい電話をきった。


私はまた自分を責めた。


やっぱり私は彼を殺したんだ。そう実感した。

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