第2話
もうすっかり夜である。
高校生活が終わり瞬く間に大学生となった私は上京して、1人暮らしをしている。
一人暮らしももうお手の物である。
先輩の話したいな。急かな?いやでも先輩に対する気持ちを書くっていう物語か。間違ってないな。
まぁ、そんなのはなんとなくでいいのだ。
とはいっても何も思い浮かばない。
高校を卒業してもう先輩とは3、4年以上会っていないのだから。
私は会わないと結構気持ちが薄れて行くタイプだ。でもまだ好きなのだ。忘れてはいないから。
先輩はどこでなにをしているのか。全く知らないのだ。そこまでの関係になれなかった自分に少し腹が立つ。
まぁこんな事考えても仕方が無い。
何か違う話でもして気を紛らわせようか。
そんな時にネタになる話を1個思い出した。
これは面白いのかよくわからないが、今でも何故こんなことをしたのか未だにわからない。
それはたしか小学4年のころだった。
体育の授業が終わりに近づいている頃に私は急に思ったのだ。ピコーンと電波を受け取ったように。
終わりの挨拶終わった瞬間側転しよ。
意味不明だ。
でも私はしてしまったのである。失敗したが。その後担任の先生や生徒に質問攻めにされ、なんと言ってかわしたんだろうか。
我ながら思うが自分結構やばいなと思う。
そんなことを思い出していたらもう家に着いていたではないか。
早く寝よう。先輩のことなど忘れてしまえればいいのに。
ん? おや? おや?
今日、鍵、閉め忘れて朝出たっけ....。
ゾッとした。背中を青い炎で焼かれた様な気になった。
ドアか少し空いていた。
空き巣にはいられたのだろうか!?!?
焦りより恐怖が勝る。しかし、ここで止まっていても何の解決にもならない。
動かなければ。
冷静に。 などなれるはずもないが。
私はドアを開け、部屋に入る。
薄暗い室内。ドアを開ける音がよく響く。
見てしまった。人影を!
人は本当にパニックに陥ると声も出ないのだと初めて身をもって実感した。
怖い、怖い、怖い怖い!
腰が抜けて動けなかった。
人影はすぐに私をあたふたと横切り玄関から出ていった。何も出来なかった。
なんだか実家にいる母を思い出していた。
あんなに大見得切って上京してきたのに、こんなことが起こるとは。
即実家に帰りたい。今帰っても何やかんや言って母はこんな私でも迎え入れてくれるのだろう。世の母は偉大である。
私は泣きながら、今度母になんか送ってあげようと思いながら警察に連絡した。
「もう大丈夫なので、落ち着いてくださいね。」
優しく響く低い声。
なんとか一件落着となりそうだ。
ここは警察署である。色々と捜査をしてもらっている。
さっき電話で聞いたのだが、母も空き巣に入られたことがあるらしい。そしてそこの警察の方からヤクルトをもらったらしい。
空き巣DNAでも遺伝されているのかうちの家系は。
私にもここでヤクルトがすっとでてきてくれないだろうか。まぁそうマンガみたいにうまくはいかな.....
出てきた。
上手くいった。 おお。
ならそこで渡してくれた人がほんとに警察官になった先輩だったらな〜なんて。まぁそうう...
「あれ、もしかして、大工原さん?」
ワーーーーオ。どうしたどうした実は期待してなかったと言ったら嘘になるけども。
まさかのご本人とは....。
「ほ、ほんとに先輩.....。なんですか....?」
あ、私の名字は大工原ですよ。先輩は橋本です。
「久しぶりだね!でも、こんな形で再会する、なんてね。ちょっと複雑。」
ちょ、ちょっと待って。まずね、まずね。
ひとつ言わせてください。
警官コス最高ォォォ!!!
まぁでも待って、落ち着こう?今は先輩とどんな形であれ会えたのだ。
もう逃がしたくはない。
「私も、こんなところで会うなんて...。想像もしてませんでした。
本当に警察官。なってるんですね。」
相変わらずの可愛い笑顔で先輩は返す。
「うん、長年の夢だったから。
結構大変だったんだよ?大工原さんは?今何してるの??」
その後もたわいのない会話が続いた。
幸せだった。空き巣に感謝しなければならない。センキュー!空き巣!
本当に嬉しい。蘇ってきた。
先輩が好きという気持ち。
前よりもっとかっこよくなった。
「はぁもうホントに好き。」
「うん僕もずぅっと好きだったよ。」
「え」
「あ」
ちょっと待ってー。今待って何が起こったの??あぁ、自分の心の声が漏れたのか!
ぁぁーもうやっちゃったよぉ~。
じゃ、な、く、て!!!
「せ、先輩?今なんて....。」
「ご、ごめん何か心の声漏れちゃったみたいで、何言ってるんだろ....。ご、ごめん急に....。」
これはお互いの天然がかけ合わさってとんだ化学反応に....。
でもすごい。すごい。すごい。
「あのさ大工原さん。改めて言うけどずっと好きだったんだ。こんな形の再会だけど、よかったらこんな僕と付き合って、くれませんか?」
そんなの、そんなのそんなのそんなの!!
「勿論です!! 」
食い気味で答えてしまった。
その後連絡先を交換して、初デートの約束をした。今日1日でものすごい進展してしまった。人生でこんなに円滑にいいことばかり過ごせた日は断言出来る。ない。今までで1度も。
なんだかすごくうまく行き過ぎて怖いし、不安だ。だが正直な所思考が全く追い付いていない。だが、嬉しい。
最っっっ高に嬉しい!!
生きてきてよかった。この日のために生きてきたんだなぁ。
私は、絶対離さない。
今度の初デートも!絶対成功させるぞ!
オオーーッ!
まるで空き巣が入ったあととは思えないハイテンションで朝方を過ごしたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます