二十二・五「柔肌白肌少女軍温泉同好会」
「いっくぞ〜!」
私が勢いよく浴室へ飛び出ると後に2人、コソコソと続く。もう……恥ずかしいのかな?
「ナハハ〜、ウチは温泉に入りなれてるけど……さすがにちょっと恥ずかしいかな」
「ラフィーちゃん。他の人がいたらどうするの?」
2人とも口々に零す。
脱衣所に着替えがなかったからヘーキでしょ! あれ、なんで誰もいないんだろ。まだ夕方前だからかな?
「ま、いっか……って! 2人とも何巻いてんの?!」
ロヴちゃんとナビィちゃんは身体を隠すようにタオルを巻いていた。
ふっふっふっ。もしや自分の身体に自信がないんだな?
「それ! 剥いでやる!」
嬌声が浴槽を劈く。
2人とも可愛いなぁもう!
「ちょっと、やめてよラフィーちゃん」
うっわナビィちゃん肌綺麗!
つか……おっぱい……負けた……だと……
いやいや、ロヴちゃんは分からないから!
気を取り直してロヴちゃんを見る。
「ラフィーちゃん……ウチ恥ずかしいよぉ」
えぇ……なんか裸になったとたんに艶めかしいんだけど?! つか肌白いね、なんかそそられちゃうよ。
しかも……ま……負けた……うぐっ……
私、お友達に完全敗北しました……
「ラフィーちゃん、肌綺麗だね」
「ちょ、やめてよナビィちゃん!」
ナビィちゃんは私の横腹をくすぐる。
私はくすぐりが苦手なんです!
すると、ナビィちゃんは私の反応を見て、目を輝かせる。
「うひ、ふへふへ、ふひひひ」
「ひぃぃぃい! ナビィちゃんがおっさんになった!」
私はナビィちゃんに追いかけ回される。
私もさっきまでお兄ちゃんみたいな感想しか言ってなかったけどナビィちゃんはそれ以上だよぉ!
「ナハハ〜、2人とも元気だね。転ばないでよ?」
大丈夫、そんな古典的な事は、
「あっ」
「ちょっ」
ありました。背中痛い……
# # # # # #
「ナハハ〜。だから言ったじゃん、もう!」
「ごめんごめんって!」
私は軽く謝ると痛んだ背中を労わりながら鏡の前に腰掛ける。
それを見て残った2人も無言で腰掛ける。
てもて、てもて、てもてー。
う、なんか今お兄ちゃんの声がした気がする。
大丈夫、お兄ちゃんは覗くような変態じゃない! ……と、思うけど。
と言うか『てもてー』って何? 頭から離れないんだけど……
「ラフィーちゃん、見て見て。てもて、てもて、てもてー」
「それ流行り?」
「わかんないけど脳内に流れた。神のお告げだね」
ふふんと自慢気に胸を張るナビィちゃん……それ以上胸を強調されると心が痛いからやめてね……
私は一頻り髪を洗い流すと、桶でお湯を汲み温泉へ入る。
「ふひぃ……あったまるわぁ」
「ラフィーちゃんって時々おっさん臭くなるよね」
「……それはナビィちゃんに言われたくないかなぁ……」
でも温泉でもお湯でも浸かったら声出ちゃうよね。なんでだろうね……なんか、今の考えもお兄ちゃんっぽかったな。なんだろう……最近の、いや記憶を無くした後のお兄ちゃんと考えが一緒になる事が多くなったな……なんの繋がりだろ?
「ナハハ〜、どうしたのラフィーちゃん。ブクブクして」
「……いや、なんでも?」
ロヴちゃんが片足づつ、ゆっくりと温泉に入る。
……なんかエロいね。なんでだろ……もしかしてエルフ? だったら可愛いのも頷けるな。
あれ、というかロヴちゃんってここ出身ならエルフじゃん。考えてなかったな……
ふと、お兄ちゃんなら察していたのだろうと考えて、再びお湯を肺の空気で泡立てる。
汚いけどやっちゃうよね。私の癖。
「そーいやナビィちゃんって付いてきてくれたけど、好きな人とかいなかったの?」
私がふとした疑問を零すとナビィちゃんはオーバーにリアクションした。むむむ?
「ゴフッ! な、何言い出すの、ラフィーちゃん。す、好きな人なんていないよ!」
そのわりにはかなり焦ってるけど?
あ、ロヴちゃん目線ずらした!
「ロ〜〜ヴちゃん?」
「ヒィィイ! ウチもいないよ、大丈夫だよ!」
やっぱりみんな恋する乙女なんだなぁ……
というかロヴちゃんってこの国に入ってから性格変わったの? なんか最初のカッコいいイメージとはかけ離れてるけど?
「はぁ、私も好きな人な〜」
私は今までを振り返ってみる。
ミカさんと一緒に暮らしていた時……友達はいたけど、特に心惹かれる男の子はいなかったなぁ。
私が好きな人……う〜ん。いないけどなぁ。
「お兄ちゃんでしょ?」
「う〜ん、カッコいいけど……って、ゴフッ!」
「その反応アタシがしたって」
き、急に何言い出すのナビィちゃん! ビックリしてむせちゃったじゃん!
わ、私がお兄ちゃんの事?! ……好きだけどお兄ちゃんとしてだよ? 別に恋愛感情なんて……
ふと、今までと今を思い出す。
両者共、兄である。しかし、性格、性質はまるで異なる。本質は変わらないが。
なんだか私を駄目にしそうな甘やかしをしてくれるところとかは変わらないけど。
うーん、お兄ちゃんなぁ。どっちも兄として好きだけど……好きだけど。好き……だけど……好き。ハッ!
「なーんかいい顔してたよ? ラフィーちゃ〜ん?」
「ちょっと、やめてよナビィちゃん! あと、おっさん臭い」
ナビィちゃんがへいへいと言うと私は静かに湯船に肩まで浸かる。
男湯の方に見える岩の頂上からお湯が流れていた。
お兄ちゃん……元気かなぁ。
「ヤメロォォ!!」
あ、なんか聞こえた
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