2ページ
「もう春喜なんて知らない!」
「ちょっ」
とうとう呆れた咲和ちゃんが歩き出す姿に、春喜君が腰を浮かす。
「待てよ」
「待たない。勝手にしたらいいでしょ」
咲和ちゃんはご立腹だ。ツン、としてさっさと歩き出す。すれ違った俺なんて視界に入っていないってくらい、怒っている、というか拗ねている様子だ。
と、春喜君に視線を戻すと、こっちも拗ねた顔をしてゲームに視線を落とす。のだが「あ~っ」と声を上げてすぐに立ち上がり、駆け出す。
と、視線がぶつかる。
「あ」
少し驚いた風に目蓋を開いて、それから照れくさそうに笑った。
あれ?
すれ違いざまに「咲和ッ」と声が聞こえたが、振り返るのがなんだか野暮で。俺もその場を後にすることにした。
「あぁ俺もあーゆー青春したかったなぁ」
なんて。小学生時代に引っ越したこともあり、咲和ちゃんと春喜君みたいな幼馴染はいないから。引っ越しするまではソレっぽい幼馴染が居ない訳でもなかったけど、それこそ愛だの恋だのになる訳もなくて。
「いいなぁ、幼馴染って」
と、おっさんは呟いてみる。
なんだかんだ言いつつ、ちゃっかり最後は結婚するんだろうなぁ、なんて。夢見がちか。いや、なくもないだろ。
家が隣同士で、いままで沢山同じ時間を共にして、口げんかして、仲直りして、誰よりも相手のことを分かっていて。そんな幼馴染同士の結婚。
なんてロマンがあるんだ、なんてな。ただの夢見がちモブとして言わせてくれ。
頑張れよ、少年。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます