和解と参入
「悪かった!」
魔の討伐から戻って来るなり、燎太はそう剣聖へ頭を下げてきた。
その言動に、剣聖と晶は面食らう。
「いきなり、どうしたんだ?」
「いや……まずは謝っておこうと思って」
どういうことか尋ねると、相手も困った様子で言う。
「別に何か悪いことをしたわけではないけど、少しお前たちを誤解していた自分に気づいたんだ。だからひとまず謝って、自分を清算したかったんだ」
そう言われ、剣聖は口を噤む。
敏い彼は、燎太が何についていっているか悟った。
少し心配げに晶が目配りする中で、剣聖は答える。
「別にお前が謝ることではないだろう。誰だって、あれをみたらそう思う」
「あぁ、かもな。けどさ、一番大切だろうことを、誰らのためにあんなことをしているのかってことを見落としていたから、さ」
「……別に、お前のためではないぞ?」
「うん、知っている。お前がそんな友情に厚い人間だとは思ってない」
さらっと言われ、剣聖は押し黙る。
それを見て、燎太の背後で美紅が忍び笑っているが、見えないふりをする。
「お前はそんな理由で戦おうとしないだろう。もっとデカい理由をもって戦っていると思う。そう言う人間だ」
「お前は、俺の何を知っているんだ?」
「知らないさ。まだ数週間の付き合いだぞ?」
言われ、それもそうかと剣聖は納得する。
その反応に、燎太は笑う。
その顔は、まるでつきものが取れたように晴れやかだ。
「これから知っていくさ。それで、今のところは勘弁してくれ」
「……分かった」
剣聖は、頷く。その顔は、相変わらず無表情だ。
だが、無表情ながら、僅かに伝わってくる感情があったのだろう、燎太や晶は反応に嬉しさを覚える。
そんな三人の様子を、美紅もくすりと笑って見守っていた。
*
この後日、放課後に多目的教室へ集まる退魔同盟のメンバーの中に、一人の新入の生徒が加わることになった。
それが誰かであるかは、わざわざ語るまでもないだろう。
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