第6話:性転換
「と、突然声を出すんでない!びっくりしてもーたがな!」
「す、すみません…」
もじもじとする、わた…いや、僕は落ち込んでいた。その理由は、馬車を走らせてる中で目覚め、自分の状況に驚く。まぁ、もちろん叫ぶわけで……その声に驚き、馭者が綱を離し、馬が暴走。その際に馬と馬車を保護的なものが突っかかり、馬車が転倒。馭者は、腰を強打し、僕は後頭部を強打。馬は足を滑らせ、転倒。装備が邪魔をして起き上がれなかった。
全員が痛打をうち、悶えた。
その数分後が今の状況に。
そして、その後数分叱りつけられ、馭者は「馬と馬車を繋いで立て直すから待っとけ」と言ってその場をあとにした。
怒られたのもそうだけどそれ以前に信じられないことが多すぎた。
「……お、おお男?な、なんで…えぇ…えぇぇぇ……」
同様は隠せなかった。そもそも何故馬車に乗っていたのか。だが、記憶を辿ると今までにない記憶がそこにはあった。
覚醒する前のこの人の記憶だ。
この人の名前は、ジエンド・ガエリオ。私が覚醒するまでこの人は旅人として動いていたらしい。年齢は丁度16歳。腰には刀があり、服装は少し汚れた半袖に切り傷の目立つ長ズボン。頭部を確認すると、テールの長髪。また驚くことに耳がなく、その代わりに猫のような肌触りの大きな耳が付いていた。馬車にあった手鏡で自分の顔を確かめると、顔は丸いがスッとした可愛い顔。眉毛も細く鼻の形もいい。目は凛とした青年と言えるものだ。こんな美青年になれたことに不満はないが、誰かの手立てなのは確かなはず。
その怒りはもちろん、
「ガエイ…許すまじ」
送ってくれたクソショタ天使に向け、上を向いて思念を送った。
「はぁ…もうそんなことを気にしてられないな。とにかくなっちゃったもんはなっちゃったんだ。これで動くしか…」
これまでの記憶にどう接していけばいいのかはまだ分からないが。とにかくここから動かねばならない。そこで一つ馭者に聞くことにした。
「あの、おじさん。どこに向かうところだったんですかね?」
「はぁ?アンタ頭打っておかしくなったんか?兄ちゃんが言い出したんやで?」
「へ?」
「王都へ用事があるから連れてけってあんたが言うたんよ?」
(おっと…これは予想外…)
考え込むように記憶を遡り、的を絞る。すると、ここまでの経緯がなんとなく掴めてくる。
「それにしてもさっきからおかしいで?あんた。口下手なのかここ2、3日の路中じゃ全く無口だったのに…別人のように話しかけてきて…。ほんとに頭打ったんじゃ…」
はっ、と我に戻り(しまった…)と不手際に負い目を見る。
「い、いやぁ…ただの人見知りで…」
なんとも窮屈な言い訳だ。絶対にばれているに
「あぁ、極度の人見知りかい。まぁ、口を開いてくれて助かるよ。話し相手が見つからないってんで暇をしてたんだ。あっはっはっはっ」
通るのかよ。なんつー器のでかさ。男として見習わなきゃ…って、僕は男じゃ…!違う。男だ。複雑な心境に、肩を落とす。
「それより、王都に用事って何なんだ?」
「あぁ、これの事だ。」
「この手紙かい?」
ボロい革の袋に入れてあった紙の封筒。これが手紙で、受け取った記憶もあった。
「ただ、分からないのが宛名なんだ。この人がどういう人なのか…定かではないのだ。」
宛名は、エンゼル・デルベザード。記憶を辿っても何一つヒットしない。
「どれどれ見せてご覧よ…ふむ。エン…ゼル、デル…ベザ…ーど…」
ふむ。読み方は間違っていなかったらしい。
「そう、その人がどういう人なのかわからな…って、おじさん?どうしたのだ?」
「エンゼル…デルベザード…エンゼル…デルベザード…エンゼル…デルベザード…!?」
何度も何度も読み返しては、身体を震わせ、顔面蒼白になっていた。
「どうしたんだ、おじさん。」
「あ、あんた……なんちゅう手紙を預かっておるんだ…エンゼル・デルベザードと言えばこれから向かう先の…」
震えながらこちらを向き説明をする。そこまでに有名な方なのか?それならそれで用事がすぐ済みそうで何よりなんだが…
「……王都、エンベル王国の国王。鬼神と呼ばれた十二神王が1人。エンゼル・デルベザード様宛だ。」
うん。すぐ終わりそうな用事ではなかったな。引き返そう。そしてできるだけ遠くへ行きたい。
そんな決意とは裏腹に、混乱状態のおじさんは、わた…僕を馬車に乗せ大急ぎで王都へと向かってくれた。
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