第5話:精神世界


 私は目の前にいる羽のついたショタを目の前に呆然としていた。

 「お、おいおい。そんな驚くことか?ま、俺みたいな美しく可憐な天使を見ればそんな反応したって仕方ないか。」

 「あの、…あなたは?」

 「ん?あぁ、俺はガエイ。天空の光の根源、アリマトラン神の天使さ。」

 「天使……?」

 見た目からして、天使であることを認めざるを負えなかった。背中には羽があり、頭上には光の輪っかが付いて、服装も真っ白な古代の服装のようだ。

 「それで…その天使様…。私はなぜここに…」

 「先程も言ったが、貴様はもう死んでいる。それは理解しているか。」

 …死んでいる。その言葉を聞き再確認された。あの人に……殺されたという光景を嘘ではなく、真実だと…

 「は、はい…」

 「まぁそこまで落ち込むほどではない。死とは一つの分岐点に過ぎないのだからな。」

 そうガエイから聞くと不思議な単語がいくつかあった。

 「え?それは一体…」

 「よし、少し説明してやろう。君が住んでいた世界では、死後に行く場所がどこなのか。何となく分かるだろ?」

 「天国と…地獄ですか?」

 「うん。その認識で間違ってはいないが、こちらの正式な認識は、五つの世界。五界に分かれている。」

 「五つも?」

 「そうだよ。神界、天界、自然界、地界、そして、生界。君が住んでいたのは生界だな。」

 この五界ができた理由は、地球という一つの生命を守るために作られたらしく、地があるから自然が生き、自然があるから天がある。神に関しては全てを統率。支持する者として存在し、生界は、地球をかてに生きていく生物達のことを言う。その中に人は属する。ガエイはその事を言っていた。

 「それが…どう分岐点となるんですか…」

 「死後は、行き先を決めれるんだ。流れとしては、生界生物の死後は魂だけになると、自然界、地界、天界と選択肢が分かれる。そこでの勤めを収めると神界へと連られてその働きを収めると生界生物へとなる事ができる。」

 各界の勤めとしては、地界は「地殻の発達」 。自然界は、「風、木、水、火の役割」。天界は、「空の保存」。となり、それぞれで役割が変わっている。

 「それを…これから私が決めていくと…」

 「それもいいんだけど、今回はちょっと違うかなぁ。」

 「違う?何がですか?」

 「行き先がひとつ増える。しかも半強制的にな。」

 「それって…どこですか。」

 五界以外に一つこの世界に実在するらしい…が、全く予想がつかない。

 私の問にニヤッと笑を浮かべるとガエイは、口を開く

 

 「君は…異世界を信じるかい?」

 

 「異世界…ですか?」

 「正規名は、異界。生界が「正常」だとすると、異界は、「異常」。神界の1人が作り出したとされるものだ。」

 「そこは、どんな所なんですか。」

 「そこがどんな所か…一言で言えば…、そうだな。生界には「無い」ものがある、かな。例えば、魔法とか…」

 「魔法…」

 「生界の言葉で表すとそう言えるかな。火を出すことも水を操ることも、空を飛ぶことも出来るぞ。そのためにはちゃんとトレーニングしないといけないけど…君は……」

 「え?」

 私の体を見て、口に手を当て考え込む。じーと見つめ「…いや、だが…ブツブツ…」となにか独り言を言ってたが

 「まぁ大丈夫だよ。きっとで」

 目をそらしながらそんな事を言い始めた。

 「えぇ…」

 「ま、まぁ、とにかくだ。その世界に君を連れていきたいんだが…どうだろうか?君には…やり残したことがありそうだが?」

 やり残したこと。あの人が何故あのような形で私を殺したのか。それを知りたかった。死んだという事実に悔しさと悲しさがこみ上げてきた。だけど、異世界には魔法がある。有馬さんが私に使ったあの技もきっとで異世界に通じるものだと。だとすれば、生界に戻って、有馬さんと話がしたい。その可能性があるのならそっちに賭けてみたい。

 「私は、異世界にいきます。」

 決意を固め、胸を張って言った。その言葉を受けガエイは、言った。

 「なら、招待しよう。異世界への道を…」

 ガエイの背後から光の扉が開かれ風が荒れる。

 するとガエイ は、目を瞑り、両手を広げ、私に語りかけた。

 

 『君はこの先、異世界での生活には初めてなことばかりが続き、大変困難なものとなるでしょう。ですが、落ち着いて、焦らず1歩ずつ行くのです。さすればその先はきっと、光の道になるでしょう』

 

 はじめて天使らしいことをした思ったが、神々しさに感心する私は、思わず拍手を落とす。

 そして、光り輝くドアに私は向かっていき、体は次第に…光へと包まれていった。

 

 

 目が覚めると、眩しい陽の光が中に入ってきていた。周りからはガタガタと走らせている音が聞こえ、自分が何かに乗っていることに気がつく。そして、時たま聞こえる馬の鳴き声で馬車に乗っていると……馬車!?

 「……っ!?」ガバッ

 飛び上がるように起き上がると、馬を引いてる馭者(ぎょしゃ)に声をかけられる。

 「お、『にいちゃん』起きたか。」

 「あぁ、起き…て…いま…すっ?」

 馭者に言われた単語に自分の声。

 何が起きてたのか全く理解が追いつかなかった。なぜなら、その声はまさに「青年」のような声だったから。

 

 「ぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 「ぎゃぁぁぁぁぁああ!?!?!?」

 

 私の…いや、「僕」と改めるべきか?

 僕の体は…一体どうなってるんだ!?

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