第4話:拒絶


 男は、左腕を飛ばされていた。

 

 「フハハハハハハハハハハハハハ!!!俺の腕を飛ばすか!流石だ!流石だぜ剣聖!」

 

 自分の腕を飛ばしたことに関心をしていた。

 

 「だが、この勝負…俺の勝ちだ。」

 

 バタッ……

 

 と、倒れる音がした。

 その直後、階段から美江が上がってきた。

 

 「はぁはぁ…や、やっと……」

 

 息切れがきつく膝をつく、そして、前を向く。その場にあった光景は…

 

 無残にも殺された祖父が横たわっていた。

 

 「遅かったですね。。美江さん。お久しぶりです。」

 

 かぶっていたフードを取り、挨拶をする男。

 

 「あ、あなたは…なぜ…」

 

 その顔に見覚えがあった。


 「有馬…さん。」

 

 「はい。有馬です。」

 

 「有馬…さん。何をしているんですか…そこに、おじい…ちゃんが……」

 

 「えぇ、分かっております。私がやりましたから」

 

 「う、嘘…ですよね…。冗談ですよね…あはは」

 

 「いえ、私です。」

 

 そう言って、残った右腕に火を灯し、そして増幅。先程見た、不自然な炎の渦に似ていた。

 

 「本当に……あなたが…」

 

 信じてた人が、敵となる。

 親しかった人が、敵となる。

 久しい再開なのに、敵となる。

 

 一度愛した人が、敵となる。

 

 あの事故で無くした心を埋めてくれた唯一の恩人。いつも近くにいてくれて、よく名前を呼んでくれた。そんな人に恋心を持っていた。だが、忘れていた。有馬がいなくなってもう、5年が経っていたからだ。だからこそ、五年ぶりの再開に感涙の涙を流したかったはずなのに……

 

 (なんで……なんで…こんなこと……!!!)

 

 ただただ、分からなかった。理解をしたくなかった。

 

 それはまた、一つの拒絶。

 

 一度、拒絶してしまうと止まらない。その上、感情も爆発する。

 

 怒り、悲しみ、疑い、不安

 

 今の美江には、様々な感情が渦巻いていた。

 

 「ここで君を殺す。」 

 

 (もう…もう!)

 

 「君を殺せば、全てが終わる。」

 

 (お願い…だから!やめて!)

 

 「黒炎(ヘルブレイズ)」

 

 右手を覆っていた炎が黒く染まり、黒い炎が発せられる。

 

 迫り来る黒炎。動き出せない美江。

 有馬は確信をした。

 

 (やっと、やっとだ……これで、全てが…)

 

 その瞬間、爆発的に燃え上がる黒い炎。その威力は、あの炎の渦より数倍でかい。

 

 そして、火が消え、その場が姿を現す。消し炭の跡が残っているのは確認できる。だが、燃えたはずの美江が見当たらなかった。

 

 (…本来ならここにいるはずだが……ハハッ……俺の炎が強すぎたんだろう。跡すら残らんか。)

 

 そして有馬は、役目を果たしたようにその場をあとにした。

 美江は、この世界では死んだ。

 そして今は、とある場所にいた。

 

 「こ、ここは……」

 

 あたりは真っ黒。何も見えない。

 

 (でも、私は炎で………)

 

 自分が殺されたことを思い出す。

 

 (なら……ここは、地獄…。)

 

 「ちがわい!アホかワレェ!」

 

 「へ?」

 

 上の方から男の声が聞こえた。

 

 「全く……ここは、精神世界。お前は死んだんだ。」

 

 そうやって、翼の生えたショタ天使が宣告してきた。

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