第3話:真実

「はぁはぁ……」

 息切れをしながらも階段を上がり続ける。頭に血が登ってなのか、酸素が足りないのか、頭がクラクラと視界を揺らす。

 (おじいちゃん……)

 階段を登りながら、あの時のことを思い出していた。

 

 10年前……

 有馬さんに連れられ、私はこの道場に来た。身なりも整っていない私は、世間から見たら、いわば汚い小娘と言えるほど汚れていた。

 そんな私をおじさんは、

 

 「君は誰だ?」

 

 「え……?」

 

 「君は誰だと聞いている。」

 

 「み、美江…です。」

 

 「違う。名前はそれだけじゃないだろ。」

 

 「あ、はい……。天塚…美江です。」

 

 「ふむ。いいか?天塚美江よ。君はわしの血が繋がっておる。確かに我が息子と義娘、君の父と母は、亡くなったが血の繋がりは途絶えとらん。その血が繋がっている間…父と母は自分の中にいると思え。そしてその血を繋げ…ホントの意味で父と母を殺したくなくばな。」

 

 「私の中に……お父さんとお母さんが…」

 

 そう聞いて私は絶望の闇に光を見つける。だが…

 

 「でも、こんな私が繋げることなんて……出来るの?」

 

 まだ不安でもあった。

 

 「まだ不安か…」

 

 「…うん」

 

 こんな私でよかったのか、自分の体はもはや限界を迎えていた。3日間食欲が失せ、何も食べず食わずが続いていた。だからこそ…もう……


 「なら、強くなれ。」

 

 「え?」

 

 下がっていた顔が不意に上がる。

 力強い声でそう言われたから、「強くなれ」と聞こえたから。

 

 「ここは、強くなりたい気持ちがあればなれる場所だ。それとも諦めるか?」

 

 「………んんん!」ブンブン

 

 少しテンポを遅らせて、力強く首を振る。

 

 「強く…なりたい!強く…して!」

 

 「うむ。さすが我が孫だ。だが、ここの道場は厳しいぞ。」

 

 「うん。頑張る」

 

 そして私は、おじいちゃんの道場に住み、剣道の道へと進んでいった。

 

 そして今、不自然な炎の渦がその道場を包んでいた。

 

 「フフハハハハ。すばらしいな!この力についてくるとは!」

 

 「ふっ……まだまだだな。貴様も」

 

 「ふっ、言うじゃねぇか。無茶をすんじゃねぇよ。剣聖。まっ…もう死ぬから、ゆっくり出来るぜ……」

 

 「若造が、そう簡単に殺されねぇよ。」

 

 「ハッ、意地を張るのはかわらんな!」

 

 祖父は剣を、男は腕を構えた。

 

 そして、男が動く。

 

 「行くぞぉぉぉぉお!けんせぇぇぇぇい!!」

 

 「ぬあああぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!」

 

 瞬間的な加速。距離が縮み、5m……4…3…2…そして、対峙しようとした。

 その時、男の腕から火が発生し、左腕を巻くように渦をまく。その炎は黒く染まり、自らの左腕を燃やすほどに威力を増す。

 

 その技の名は

 

 「黒轟炎(アルバルダ-ト)」

 

 照史も動き出す。瞬間的に抜刀される剣は、柄との摩擦で火花を散らす。火花が出るほどのその高速なまでの抜刀術は、刀を熱し、高温へと達する。

 

 その技の名は、

 

 「火剣歌-秘花」(ひけんか-ひばな)

 

 対峙したのは、ほんの一瞬。

距離を置いて、お互いに背を向けていた。

 

 そして

 

 先に動きを見せたのは男の方だった。

 

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