第3話 魔術行使

漫画や小説において【魔法】や【魔術】というのは、大雑把に説明すると、自分の中にある【魔力】という物を媒体とし、超常の現象を起こす事、としていた。

 だが、現実の魔術師が使う【魔術】は少し複雑である。

 現実の魔術行使は数学の数式に近い。


 例えば、魔術で火を起こしたい。

 ここで、火が起こるという現象は、数式でいうと【解】いわば答えにあたる。

 だが、【解】は分かるが、どうやって火を起こすかという【式】が分からない。

 この【式】が【術式】にあたる。

 術式の行使が【式】の作成になる。


 つまりこのことを数式で表すと、火を起こすという【解】が【2】にあたり、

 火を起こす方法、【式】が【1+1】にあたることになる。

 つまり魔術師は【式】を解いて【解】を出すことにより超常の現象を起こせるようになる。

 だが、【2】という答えを出す式が【1+1】だけじゃないようにその【解】は多数存在する。

 魔術師の本質とはその【式】の作成にあるという事になる。

 【術式】さえ作成出来れば理論上、どんな魔術でも行使することが出来る。


 まあ、その【魔術】にも多少の例外(・・)が存在するが、

 しかし、ここで【魔力】の存在がでてくる。


 現代の魔術の【魔力】は術式を行使する為のエネルギーではない

 【魔力】はいわば術式の構成力、【計算力】にあたる。


 先程の数式で例えると、小学1年生に因数分解を教えても、その土台である足し算、引き算、掛け算に割り算が分からないので因数分解が出来ないのと同じ理屈だ。


 なので強力な術式が作成できても、【魔力】が低ければ、宝の持ち腐れだ。

 【魔力】が高ければ高度な術式を行使でき、

 術式の構成速度が上がるため魔術を素早く行使する事が出来る様になる。

 【魔力】は術式を行使する程高くなって行く。


 じゃあ術式を行使するエネルギーは何なのか?

 それは【精神力】だ。

 【精神力】が高い程何回も魔術行使ができる。

 これも【魔力】と同じで魔術を行使する程高くなる。

 自分の実力に合った術式を行使する事が大事なことだ。

 

 ◇ ◇ ◇


 俺は飛んでくるドローンもどきに向かって術式を行使する。

 術式を行使するにはイメージも大事だ。イメージが強ければ術式の規模も大きくなる。


 イメージはドローンもどきが凍りついて動けない所をイメージする。

 そのイメージに合った術式を行使する。


  「【雪化粧(ユキゲショウ)】」


 術式が発動し、飛んできたドローン全てが凍りつき時面に落下する。

 この術式はアニメみたいに手から氷を出して相手を凍りつかせる訳ではなく、対象を指定してその対象の温度を急激に下げて凍りつかせる術式だ。


 (可もなく不可もなくいつも通りの出来だな)


 術式は問題無く発動した。だが、何故このドローンもどきに【霧隠(キリガクレ)】の術式が効かなかったのかが分からない。


 あの術式は視覚、聴覚などの五感のどれにも悟らせず、しかも猫や犬などの持つ【第六感】ですら気付く事のできない程強力な術式だ。

 映像に映る程ヤワな術式ではないはずだが・・・

 

 「何だ、何だ?」

 「うわっ!【ABU(アブ)】が凍ってるぞ!」

 「嘘!?」

 「おい、誰か【警備隊】に連絡を!」


 と、考えている内に野次馬がぞろぞろと集まってきた。


 「・・・見つかる前に逃げないとヤバいな」


と俺は人のいない方へと走り出す。


 ーーー後で俺は何故、跡形も無くなるほどにドローンもどきを破壊しておかなかったのかと後悔するハメになるとはこの時微塵も思わなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る