危険から守るためとしてもそれはアウトです。(カンナ編)



「これは真剣な相談なんだけど」


「そもそもふざけた相談したいとか言われたら聞く気失せるっての」


「ごめん、言葉のアヤというかなんというか――とりあえず意見を聞きたいんだけど」


「なに」


「――自分の行動を逐一把握されてるっていうのは、『一般人』的にセーフ? アウト?」


「いやアウトだろそれは」


「本人は絶対気付かないって前提があるとしても?」


「あるとしても、だ。っつーかちょっと考えてみろよ万が一それが本人に知られた場合を。ドン引きだろ犯罪者だろよくてストーカーだろ?」


「そうかな」


「そうなの。っつーかそれ聞いてくるってことはやっぱおまえやってんのか」


「……やってたんだけど、やめた方が良いのかなって」


「悪いことは言わないからとっととやめとけ」


「じゃあこっそりボディガードつけるのもやめた方が良いかな」


「……あー。それは微妙。現在の状態による。今危ないわけ?」


「うん、少し。微妙なラインかな、とは思うんだけど」


「念のためってことか。だったらそんな本格的なやつじゃないだろうし、まあいいんじゃないの。プライバシーの侵害にさえならなきゃ――ってさすがにそれでボディガードは無理か」


「そうだね」


「あああもうあんたんとこメンドくさいな! なんでボディガードが必要な事態になるわけ?」


「それは、資産に目が眩む馬鹿が多いからだよ」


「冷静にコメントされるのもムカつくな。とはいえとばっちりがいくのもね……」


「そうなんだよ。僕としてもそれは不本意だし」


「手ェ出してきそうな馬鹿の目星はついてるんだよな?」


「ついてるよ。ただ……」


「ただ?」


「僕のところはともかく、他はちょっと把握できてるか自信がない。動きがあったら調べさせてはいるんだけど、学園関連も結構あるみたいで」


「――『金持ちで超エリート』な生徒さんたちも動き出したってわけか」


「そういうことかな。実際に動き出す前に退学させるとかはさすがに無理だし」


「……本当、おまえらの周りってメンドくさいなー。もういっそもっと環境いいところに転校させてやった方がその子も幸せなんじゃないの」


「それができるくらい出来た人間なら、そもそも好意を抱いた時点で自分を戒めてるんじゃないかな」


「まあそうだろうけど。……とりあえずやりすぎないように。社会的抹殺――はやりすぎか。ちょっとした転落人生くらいで勘弁してやりなよ」


「容赦する必要なんてないと思うんだけど?」


「人は一人で生きていけるイキモノじゃないからね」


「……どういう意味?」


「あんたにあいつらがいるみたいに、あんたが『彼女』を大事に思うみたいに、そいつを大切にする誰かもいるかもしれないってこと。逆恨みも復讐も、まあ可能性としてはあるわけだし」


「……なるほど」


「わかってもらえたなら何より。――っつーかなんでンなへヴィな話まで聞かなきゃならんのだ」


「だって、アドバイザーやってくれるって言ったから」


「確かにするとは言ったけどさ、……まあいいや。あんたらには今更だよね」


「言いかけて止められると気になるんだけど」


「気にするな」


「……気になるけど、うん。気にしないことにするよ。なんとなくその方が幸せな気がするし」


「おまえ妙なところ勘がいいよな」


「君はそういうところ、容赦ないっていうかオブラートに包む気ないよね……」


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