『いつもと様子の違う弱った彼にドキッ!』なイベントが起こったようです。(カンナ編)



「なにあれ純粋培養にもほどがあるっていうかどういう育ち方したらあんな子に育つのかな」


「いきなりどうした」


「さっき、植物庭園で――」


「……予想はしてたけどやっぱりおまえもか」


「やっぱり?」


「気にするな。続けて」


「『彼女』に会ったんだ。奥にある、ガラス張りの温室でなんだけど」


「ホントこの学園何でもあるな。……で、あんなに動揺するとか何があったわけ」


「…………」


「………………」


「……ええと、その、」


「…………」


「……あの、ええと……」


「……ああうん、とりあえずその顔で何となくわかった」


「……っ、僕どんな顔してた!?」


「言葉で形容できないような顔。とりあえず悪いことがあったんじゃないのは確実にわかる顔」


「…………」


「まあ、あれだ。ひとまずよかったねと言っておいてやる。今朝会ったときよりマシな顔してるし」


「そうかな」


「最近おまえ雰囲気とか顔つきから荒んでたし。どうせ家の方がごたごたしてたんだろうけど」


「……荒んでた?」


「まあそれなりに。幼馴染たちがこぞっておまえの近況報告をしに来るくらいには」


「……自覚なかったよ」


「だろうね。余裕ないなーってのは傍から見てわかってたし、悪化する前に息抜きでもさせてやるかってことになってたんだけど。もう必要なさそうだな」


「――久しぶりに、よく眠れたからかな」


「顔色がマシになったのはその辺が理由だろうけど。――それだけじゃないよな?」


「……わかる?」


「たかだか添い寝だか膝枕だかであんたがあそこまで動揺するとは思えないし」


「いやそこまでしてもらってはないよ」


「んじゃ、手を握ってもらったとかその辺か」


「……なんでわかるのかな」


「そりゃ、付き合い長いし。っつーかそもそもこの流れで選択肢ってそう無いし」


「君に隠し事はできないな」


「あんた他の奴らにだってできないだろうが」


「そうは思わないけど……君だからこそ、僕は動揺を外に出したようなものだし」


「とか言いつつあんた結構色々バレバレだから。親しい人間にはわかる程度には自分をコントロールできてないってこと自覚したら?」


「…………」


「不本意そうな顔してるけど事実だし。情緒面に関してはあんたが多分一番未発達だよね」


「……そう言われると色々複雑なんだけど」


「事実だから仕方ない。まあ発達したらしたで、あんたは生きにくそうだけど。そもそもあんた変なとこ繊細だし」


「――似たようなことを、言われたよ」


「『彼女』に?」


「うん。……どうしてだろうね。君みたいに、僕と長い付き合いってわけでもないのに」


「そういう子なんだろ。当たり前に他人の心を思えるってだけの」


「そっか。……うん、そうかも」


「だからあんたもあいつらも、あの子が気になるんだろうし。まあそれがいいか悪いかは別として」


「……確かに『彼女』にとっては良いことって言いきれないかもしれないけど、そうやって言われるとさすがに僕も傷つくよ?」


「そりゃ、多少傷つくように言わないと釘にならないし。言われたくなきゃもうちょっと色々自分でセーブできるようになりなよ」


「反論できないのが痛いな……。善処するよ」


「是非そうして。んでこっちの手間減らしてくれれば尚良い」


「……本当、君って容赦ないよね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る