とどのつまりわりと普通の接触なのでセーフです。(レンリ編)



「……ちょっと、聞きたいんだけど、いい?」


「いいけどその仕草狙ってやってるんじゃ――ないんだよなその歳でしかも男で小首傾げるってどうよ。女でも天然でやるのって少ないと思うんだけど」


「……?」


「あー、いい。気にしないで。で、なに?」


「――話聞くのって、セーフ?」


「……。ごめんもうちょっと詳しく言ってもらわないとさすがに何とも」


「最近……寝てると、たまに近くに居て。中庭、人来ないからかなって思うんだけど」


「それはあの子がってことだよな?」


「うん。……で、たまに、暗い顔、……悩んでる? 顔してて。たまたま、猫に話してるの、聞いて」


「……。うん」


「つい、思ったこと、言った……んだけど。よかったのかなって」


「――とりあえず」


「?」


「それが駄目だとかアウトだとか言ったら人でなしだよね間違いなく」


「? ……そう?」


「なんでそこで首傾げる。普通そうだろ――ってああそうだったあんたらに普通が通用しないからアドバイザーなんてやることになってたんだったね。うっかりしてた」


「……」


「まあ会話の内容とかはつっこんで聞かないけど、あんたのことだから意見の押しつけも何もなく、単純に思ったこと言っただけなんだろうし、いいんじゃない」


「……でも、盗み聞き、だし」


「いやまあそれはそうだけど。その子がそれについて怒ったわけじゃないよね、その様子だと」


「驚いては、いたみたい……だったけど」


「まあぽろっと猫に漏らした本音だか悩みだかに返答があったら驚くわな。っていうかあんたどんだけ存在感ないの」


「……」


「いやそこは真剣に考えなくてもいいから。別に答えは期待してないって。――話聞いて、あんたが思ったこと言って、その子はどんな顔した?」


「……」


「…………」


「……ちょっと、泣きそうだったけど。笑ってた」


「――なら、それでよかったんだと思っときなよ。何かがちょっと楽になったのかも、くらいにさ」


「……それでいいのかな」


「いいんじゃない? 干渉しすぎるのも気遣いすぎるのもアレだし。いやあんたはそれくらいの心持ちで他人と接した方が良いかもしれないけど」


「……干渉……気遣い……?」


「いや真剣に考え込むな。多分あんたはそのままの方が良いって絶対。他との差別化的な意味でも」


「? ……??」


「うんごめん混乱させて。つまりあんたはそのまま癒し系やってた方がいいよってこと」


「癒し系……?」


「そこから説明するのは面倒だしなんかアレだしごめんこうむる」


「……? よくわからない、けど。わかった」


「わかんないまま返事するなよって言いたいけどいいやもう。でもレンリはもうちょっと察しが良くなった方がいいと思う。っていうかアレだ、自分が他人から見てどういう風に見えるかとか多少はわかるようになった方がいいって。カンナとミスミ――ユズもその辺わりとわかってるか。他の奴ら参考にするなり聞いてみるなりして」


「……。頑張る」


「……。あー……うん。頑張れ」


「……?」

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