◆3.「見つめるだけで胸が痛い」か、相手は頭が痛いだろうよ


 ぶちっと色ボケからの通話を切った瞬間に鳴る着信音。表示されているのは幼馴染その3の名前だった。なんだこれ。どうなってんだこれ。

 ものすごく出たくなかったけど相手に非はない。今のところ。まぁ比較的常識ある方だしまともな用事であればいいなぁ、あってくださいと祈りながら受話口に耳を当てた。



「あーハイもしもしなんのご用件でしょうかー?」


「いやあんたに非はないんだけど、精神的に疲れてんの今」


「ちょっとねー。ていうかなんかやな予感がするんだけどあんたも恋愛相談とか言わないよね言わないでくれ」


「……マジでか。なんなのもう呪われてんじゃね、っつか嫌がらせかと思うわ」


「……もしかして、いやまさか。ああでもありうるよなぁ……。あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」


「もしかしてその好きな人って他の奴らと一緒だったりしない?」


「ああやっぱりー……。なんつーかその子に同情するよホント。あんたら濃いィし」


「それであんたは何を聞きたいわけさ。っつかあんたもあいつらも人選間違ってると思うんだけど」


「へー……まああんたって押せ押せなタイプじゃないもんね。納得っちゃあ納得」


「……聞いてるこっちが恥ずかしいんだけど。まああいつらの話に付き合った後だと癒しだな」


「しっかしねー……。『見つめるだけで胸が痛い』か、相手は頭が痛いだろうよ」


「相手の立場に立って考えてみな――ってああ、あんたらの基準じゃどうも思わないか。……ま、フツーの人はそんな複数人にあからさまなアプローチされたら困ったりすんだよ。その子がどう考えてるんだか知らないけどさ。話聞いてる限りだと少なくとも喜んじゃいないようだし」


「とりあえず、あんまり相手にストレス与えないようにね。別に止めたりはしないから。応援もしないけど」


「いや立場的に。贔屓するとうるさいんだもんあんたら」


「ま、ほどほどにねー」



 うん、内容はともかく前二人に比べて穏やかなやりとりで終われた。でもそれに癒された気持ちになるのはどう考えても基準が間違ってるな……。

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