第31話 大団円

 そして…。

 ヨウイチのラーメン屋には、ドイツから帰郷してきた2人のシェフが入り3人に。

 マサの警備警護会社には、ドイツから帰郷してきた3人のガードマンが入り18人に。

 ユタカのコンピュータ会社には、フィルを含め4人が入り7人に。

 ユウマの病院は、2年半後には完成する。

 タカは、エドからオファーを掛けて貰い、新しくできるユウマの病院のオペリーダーとしての実績を作ろうとしている。

 ジュンヤは、モデルの経験を活かして、パースで服飾ブランドを興す。

 カズキは、「ユウマの病院が出来ると、ヘルプ先が増える」と、楽しみにしている。

 ワンは、クリニックとGPの両方で勤務しながら、エドから経営者としてのノウハウを教えて貰う。

 博人さんは、自分には何も言ってこないので、自由に動き回ってる。

 もっぱらオペだけど…。


 でも、エドは言ったみたいだ。

 「私はバトラーだが、ヒロにもちゃんとあるぞ」

 何も聞いてないヒロトは、素直に聞いていた。

 「それは何だ?私は、何も聞いてないぞ」


 ニヤつきながら、エドはヒロに言ってる。

 「ヴァレットだよ。お前には、うってつけの役だろ」

 ヒロトは絶句した。

 「なっ」

 「俺様なドンに仕える、ヴァレット。

 いいじゃないか、この言葉。

 …あ、いいこと考え付いたぞ、この場所の名称だ。

 『~男の花園~』

 どうだ、良いネーミングだろう」


 その後、エドはヒロトに追いかけられていた。

 エドの言い分は、こうだった。

 「お前もそうだが、私も結婚しないんだ。男だらけにして何が悪いっ」

 「女性ナースだって、女医だって居るのに。エドのバカッ!」

と、ヒロトから言われながら追いかけられて、中庭からヘリポートのある裏庭までを含め敷地内を追いかけっこしてる。

 しかし、そう言われるとエドも黙ってない。

 「彼女らの居る所はGPでありクリニックだ。私が言ってるのは、本宅の方だ」 その追いかけっこを横目で見ながら、番犬である5匹のドーベルマンは寝ていた。


 しまいには、こうも言ってくれる。

 「ああ、そうだ。バトラーは本宅では私室が貰える位置の人間なんだ。私も、本宅でっ」

 そこまで言ってると、ヒロトが本気でダッシュを掛けてきた。

 「それだけは許さんっ!」


 ダッシュを掛けて追いついたヒロトは、エドにタックルを掛け、得意の内払いで勝ち取った。

 倒れて寝転んだエドは、笑いながら言っていた。

 「痛いなぁ…。参った、参った、降参。ほんとにヒロはトモが好きなんだねぇ」


 ヒロは、ポカポカの陽気に包まれたエドの腹上に寝っころがると、昔の事を思い出していた。

 「エドー。一緒に演奏しようよ」

 「おお♪それじゃ、私のバスとデュエットしようか」

 「うん」

 ~~~♪♪♪

 「エドのバスって、凄く安心できるね。まるで、大地みたいだ」

 「そうか…」

 「うん。大地が無いと人間って歩けないでしょ」

 「ありがとう。それじゃ、ヒロのバイオリンは人間ではなくて、空だな」

 その言葉に対して嬉しくなり、こう返していた。

 「それなら、他の楽器が人間であり、動物だね」

 「そうだな」

 「エド…」

 「なに?」

 「いつになるか分からないけど、その時は一緒に演ろうよ。他の楽器と一緒に」

 「そうだな。その日が楽しみだな」


 ヒロトは、エドに言っていた。

 「エド…」

 「ん?」

 「昔、エドに言った事があったよね」

 「色々とあるけど…、どんな事だ?」

 「『いつになるか分からないけど、その時は、他の楽器と一緒に演ろうよ』って、私が言ったのを覚えてる?」

思い出そうとしているのか、少し間が空きエドの声が聞こえてきた。

 「ああ、あの時ね。うん、覚えてるよ」

 「形になったね」

 「そうだな」


 ああ、こんな言葉も思い出したぞ。

 そう言って、エドは言ってきた。

 「マルクが言ってきた言葉だ。覚えてるか?『音楽だけで生きてけるものか。お前等は、お気楽でいいよな。能天気野郎』って」


 その言葉に対して、ヒロトはこう返していた。

 「マルクは楽器が下手だからな」

 エドは、こう返してきた。

 「まだ仲良しで、くっ付いていた時期だったんだけどな…」

 ふふっ、と含み笑いをしながらエドは呟いた。

 「これからが楽しみだ。しかし、ヒロ…。お前、重いな…」


 それを聞いたヒロトは寝っころがっていた態勢から下腹部に移り、全体重を掛ける様に座り直した。

 その重みで、エドは思わず声を出していた。

 「ぐぇ……」


 その時、エドは気が付いた。

 トモの両親の墓の前に、新しい墓があるのを。

 ここから文字が見える。

 その墓には『アラン・デイモス』と、名が刻まれていた。

 (ごめん、忘れてたよ。トモが建ててくれたんだな。良かったな、アラン)



 5月のオーストラリアは、今日もポカポカで良い天気だ。

 絶好の昼寝日和だ。

 














              (完)







 ー 完 ー


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俺様ボスと私の恋物語 第二部 福山ともゑ @asami_f

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